コラムニストの桐谷ヨウさんによる新連載「なーに考えてるの?」がスタートしました。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第16回目のテーマは「Q=query(クエリ)」です。
「ググる」はもう古い?
今回のキーワード、「クエリ」はなじみのない言葉かもしれない。
クエリとは照会という意味を持つ英単語で、IT業界ではデータベースへの命令文、処理リクエストという文脈で使われることが多い。このデータをこの条件で、取ってきてください。そういうニュアンスですね。
いまの世の中、老若男女がスマホで検索をかけている。ググるのは当たり前どころか古くて、インスタでタグるのは当たり前だし、YouTubeで検索している人も多いだろう。どんどんと得られる情報量と解像度は上がり、費やしている時間が爆発的に増えていると感じる。
これってすごいことですよね。10年前を思い出すと、何かを調べるときはパソコンじゃないとできなかったんですよ。ガラケーのインターネットってめっちゃ貧弱でしたよね? で、情報収集が趣味だったり、インターネットが好きな人は、夜の自宅でパソコンを開いてましたけど、だいたいの人は家に帰ってまでパソコンを使いたくないって感じだったんですよ。必然的にちょっと気になったことを検索にかけるなんてことはしない人が多かった。
それがスマホが手元にある今では24時間インターネットに接続されてますからね。少し気になったときにノータイムでスマホで検索かけるじゃないですか。もはやノータイム・グーグル。ノー・グーグル、ノー・ライフ! 人々の習慣の違いに隔世の感があります。
どんなふうに検索をかけるか=どんな問いを立てるか?
さて、これだけ人々が検索をかけることが当たり前になった中で、大事になってくるのは「どんなふうに検索をかけるか?」である。
おそらく無自覚に使っていると、何かをきっかけに条件反射的に検索をかけてしまうと思う。
テレビで放送されたはやりものを検索かけてみたり、あるいは視聴者のリアクションが見たくて番組が用意したタグで検索をかけたり。気になった出演者の名前を調べてしまうことでしょう。いや、俺も頻繁にあるのですが……。「イケメンタル」と「女子メンタル」を見ていたら、出演者を好きになってしまって、延々と調べてしまいました……。
人々の消費欲求は広告(不足をあおられること)で作られてる、的な話がよくありますけど、「どんなふうに検索をかけるか?」というのも相当気をつけないとコントロールされてしまうと感じる。受動的に受け取った情報が検索のきっかけになっていた場合、それは本当に自分の好奇心や知的好奇心によるものと言えるのか? って話なわけです。テレビで見かけた内容、ニュースアプリからプッシュ通知で来た内容。本来ならどうでもいいことを検索してしまってる時間は多大にあると感じています。
そう、「どんなふうに検索をかけるか?」とは、「どんな問いを立てるか?」ということに同義なんでしょう。
昔インターネットに「服を買いに行く服がない」というギャグがあったけど、良質な情報を得るためには、良質な検索キーワードが必要なわけです。その良質な検索キーワードとは、本当に自分にとって必要だと主体的に感じているものを見つけるためのもので、かつ、知りたい世界が曖昧ながらも明確にあるということなんでしょう。ちょっとごちゃごちゃしますけど。
いずれにせよ、そうそう良質な問いなんて見つからないわけです。
じゃあ、どうするか? 俺の個人的な体験では、やはり生身の人との出会いしかないと思うんですよね。よくわからない面白い人、それは生き方がぶっ飛んでるというよりは、マニアックに何かを好きだったりする人です。そういう話を聞く中で、例えばですが、「発酵は面白い」と思わされるじゃないですか。その人が「この世の中には発酵か、腐敗しかない」みたいな名言っぽいことを言ってくるわけです。そうなると気になってくるわけです。
ちゃんと発酵するときの違いと、ただ腐るときの違いはなんだ? あれ、納豆もお酒も発酵だけど、なにが違うんだっけ? てか、なんで日本はこんなに発酵が発展したんだっけ?
こういう問いを見つけたあとの検索は、いまはやってる発酵食品を調べたり、漠然とWikipedia巡りをしているときとは違う世界に浸れるはずなんですよね。
検索エンジンを変えると見える世界が変わる
もうひとつ、まったく違う目線でいうと検索エンジンを変えちゃうってのもアリだよね。つまりGoogle検索をやめてみる。
これは現状のインターネットで仕方がないことなんだけど、大半の人がGoogle検索を使っているからSEOが過剰に意味を持つようになっちゃって、サイト自体もそれに最適化されて、いろいろと工夫はされてるんだけど、代わり映えのない情報が検索上位にきちゃうんですよね。
例えばEcosiaとかDuckDuckGoみたいな検索エンジンを使ってみてほしい。利用者のプライバシーを担保したり(ひらたくいうと検索したものが広告で表示されない!)、検索をかけるたびに寄付がされたり、いろいろと面白い趣旨で運営がされている。これらはスマホ(iPhone)の検索エンジンとしてプリセットされているので、設定を変えるだけで使えるようになる。
検索エンジンを変えてみると、見える世界観がまるで変わります。同じキーワードを調べたとき、これだけ情報が作為的に優先順位づけされていたのか! とびっくりするはずです。いや、繰り返し言いますが、それ自体は悪いことじゃないですけどね。ただ多様性がなくてつまらなく感じるだけで。
俺らは好奇心に突き動かされて、人生を充実させていく動物です。だから、検索という行為をもう少し大事にして、より面白い人生を過ごしていく一助にしてほしいと思うのであります。
- 「ググる」はもう古い? 検索エンジンを変えると見える世界が変わる
- 「ググる」はもう古い? 検索エンジンを変えると見える世界が変わる
- 「ググる」はもう古い? 検索エンジンを変えると見える世界が変わる
- だし、頭皮マッサージ、ニトリのマットレス…2020年に買ってQOLが爆上がりしたもの
- 「評価よりも満足」矢部太郎がちょっと“変わった”お父さんから教えられたこと
- 吉本ばななさんに聞いた、傷との向き合い方「傷があるなと認識するだけ」
情報元リンク: ウートピ
「ググる」はもう古い? 検索エンジンを変えると見える世界が変わる