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摂食障害に母娘の関係は影響する? 発症しやすい人のタイプは…

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女性誌を開くと毎号のようにダイエット特集が掲載され、スマホを開くと「〇〇が激やせor激太り」といったネットニュースの見出しがおどっています。

“女性の体型”は女性自身だけではなく、どうやら他人や世間にとっても「放っておけない」案件のようです。

一方、自らを振り返って見ても体重を気にして無茶なダイエットをしてみたり、ストレスがたまって暴飲暴食してしまったりした経験はあること。しかし、「さすがに異常かも……」と自分の食行動に疑問を持ったことはありませんか?

普通に食事をとることができない「摂食障害」という病気があります。大きく「拒食症」と「過食症」に分けられ、行きすぎたダイエットや、意志が弱い食いしん坊の症状だと誤解されがちですが、厚生労働省が難病指定する精神疾患です。実は女性の約1割が何らかの食の悩みを抱えているといいます。

その背景にあるのは、上手くストレスに対処できない性格や、こだわりの強さ、まわりに気をつかう敏感さなど、誰にでも心当たりのあるちょっとした無理の蓄積。「なんだか変な食べ方しちゃうんです」——決して他人事ではない食の悩みについて、一般社団法人「日本摂食障害協会」の理事を務める政策研究大学院大学保健管理センター教授の鈴木眞理先生にお話を聞きました。

【第1回】摂食障害ってどんな病気?

鈴木眞理先生

鈴木眞理先生

人生の転機で発症しやすい

——前回は、発症時期として最も多いのは思春期後半だけど、28歳以上の高齢発症もあるとのお話でした。ウートピ読者には30代が多いのですが、確かに悩み多き年代です。

鈴木:そのあたりの年齢の発症原因として多い悩みは、「結婚か、仕事か」ね。21歳ぐらいなら、「就職どうしよう……」とか、17歳ぐらいなら進路とか。

——私は大学に入ってすぐでしたね。

鈴木:予想される原因としては、大学が期待外れとか?

——そうですね。大学に入ったはいいけど、これから何をしたいのかが見えず……。けれど親に学費は払ってもらっているわけで。それですごい自己嫌悪に陥ったのが原因だった気がします。

鈴木:そこで普通は適応するんだけど、できない人もいるのよね。真面目だったり、すごく期待度が高かったり。はたから見れば何も悪くないんだけど。 しかも、環境に変化があってすぐというより、症状が出るのは少したってから。 直後はまだショックのただ中にいるけど、バケツの水のように、もう一つストレスが重なったらあふれてしまう。

——ある日、モヤモヤして食べ過ぎて、吐くとスッキリしたのを引き金に、ストレス解消の手段として習慣化していきました。やはり、人生の節目、節目で発症する人が多いんですね。

鈴木:そうね。みんな同じよ。でも、よく考えてみたら、そりゃ鬱になったり、胃腸の病気になったり、拒食症や過食症になったり、何か症状が出て当然よね。ストレスに耐える一つの“アイテム”としてありだと思います。

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発症しやすい人のタイプは…

——ストレスがかかっても、発症する人としない人がいますよね。しやすい人というのは、タイプが決まっているのでしょうか?

鈴木:決まっています。遺伝的に、「なりやすい」素因はあります。だから、一つの家系で、おばあさんも、いとこも摂食障害だという人もいれば、お母さんが拒食症で、子供が過食症というケースも。ストレスがかかったときに、気分に変調を来したり、食行動に異常が出る遺伝子のタイプというのはあるんですよ。

あと、環境も影響しますね。大らかな南の島で育てば発症しないけど、東京の受験校にいると発症する……とかね。そしてもちろん、性格も影響します。なりやすい遺伝子を持っていても、大らかな姉は摂食障害にならないけど、真面目で几帳面な次女がなったとか。あと、文化的背景もありますね。肥満が美人と言われてる国では少ないけど、やせが美人という文化圏に入れば発症するとか。遺伝子も少しは関係しますけど、原因は複合的です。

「認知」というんだけど、人それぞれ、受けとめ方も違うんです。ある姉妹は、ずぼらで親に怒られてばかりの姉がいて、それを聞いてた妹のほうが発症したの。「私はもっときちんとしなくちゃ」ってびくびくしていたのね。怒られていた本人のほうはへっちゃら。これも、よくあるパターンですね。

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母娘関係は影響する?

——自身の摂食障害の経験を語っている女性著名人の印象で、この病気は「母娘関係」が原因だというイメージもあります。

鈴木:それは違うんですよ。母娘関係も、一つの要因にすぎない。母娘関係が悪くても、摂食障害にならない人がいるでしょう? たまたま母娘関係の問題を語る有名人が表に出ているだけ。10 年くらい前までは、摂食障害の原因は母原病とか、愛情不足などと言われていたけど、今は誰も言いません。

あと、人生が上手くいかないとき、「私の適応能力が低かったから」と思う人は少なくて、「親が悪い」とか、「親から受けた性格のせい」とか言いたくなるじゃない? つい、親のせいにしてしまう。

ただ、家族が摂食障害の第一の原因というエビデンスはないけれども、症状の改善には、家族関係が大きく影響します。「なんでこんな子が生まれたんだろう?」「どうしてこんなことするの?」って、家族が情緒的な対応をすると、お母さんたちの精神状態も悪いし、患者本人にも良くないんですね。でも、家族が問題解決的なアプローチをすると、お母さんたちの精神状態も良くて、子供にもいい影響も与えることが分かっています。だから、「摂食障害は病気の症状だから、こう対応したらいい」という、家族の心理教育が大事なんです。

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——数ある原因の一つである母娘関係が、たまたま注目されただけだったんですね。

鈴木:摂食障害になっていない100人を連れてきても、同じ比率で家族への不満は出てくるじゃない? 私にだってあるわよ。親には確かに不満もあると思うけど、それにこだわるより、自分の目の前のことを片付けることに意識を変えたほうがいいと思います。

お母さんとの関係と言えば、一発で治った子がいました。外来に初めて来たとき、私が「いろいろつらいことがあったから、体が悲鳴をあげてこうなっちゃったのね」と声をかけると、横で聞いていたお母さんが、「ごめんね。お母さんが早く気付いてあげられなくて。代わってあげたい」って泣いたのよ。その様子を見たとたん、すごく症状が悪かったのに、その子は良くなったの。子どもが摂食障害でも、親が何かできるわけではありません。こういう気持ちで接してさえいればいいと思っています。

——家族も病気について正しく知ろうとすることが大事なのですね。

※次回は10月30日(火)公開です。

(取材・文:新田理恵、写真:矢野智美)

情報元リンク: ウートピ
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