日々の体調や仕事のパフォーマンスに大きく影響する「睡眠」ですが、睡眠に対する誤解や思い込みは意外に多いものです。そこで、よい睡眠を体感するためのヒントを睡眠行動科学研究の第一人者で、『1時間多く眠る! 睡眠負債解消法 日中の眠気は身体のSOS、能力を半減させている!』(さくら舎)の著者の岡島義(おかじま・いさ)さんに伺いました。第3回は、日々の生活の中ですぐに見直せる生活習慣について質問します。
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【質問1】照明を消して真っ暗にしたほうが熟睡できますか?
A:なるべく暗い部屋で寝ることをおすすめしますが、熟睡には寝る際の灯りの有無だけでなく、照明の種類や太陽の光も重要です。
灯りや光は、睡眠の質をあげるために欠かせない要素です。次のポイントを踏まえて生活習慣を見直しましょう。
1)朝起きたら30分以上、太陽の光を目に取り込む。
2)夜の照明は、蛍光灯(白色)ではなく白熱灯(オレンジ色)にする。
睡眠にもっとも重要なのは、起床後、なるべく早めに朝日を浴びることです。単に太陽の光に当たればいいわけではありません。太陽の光を視野に入れて30分以上、「目に光を取り込む」ことが大切。
朝の散歩はおすすめですが、その際にサングラスをかけたり、午前中に太陽の光が目に入る場所で仕事をしても、PCメガネ(ブルーライトカット)をかけてしまっては意味がありません。
また朝の光を浴びても、日中に15分以上の昼寝をしたり、夜に蛍光灯が光る場所で活動しては台無しです。居眠りは夜の眠気を奪い、白っぽい蛍光灯の光は脳がまだ夜ではないと錯覚して眠気がやってきません。居眠りの習慣を改め、日が沈んでからはオレンジ色の白熱灯の下で過ごすようにしましょう。
【質問2】入浴は寝る直前がいいと聞きますが、本当ですか?
A:入浴後、すぐには眠くなりません。個人差はありますが、就寝の1時間くらい前が理想です。
眠気は深部体温が下がることでやってきます。体は深部体温を下げようとしはじめると、手足の末端から熱を放出するので手足が温かくなります。体全体を温める入浴は、深部体温も上げてしまうため、入浴後、すぐに眠気は起こることはほとんどないでしょう。
一般的には、入浴後1時間くらいすると深部体温が下がるといわれますが、個人差があります。ポイントはお風呂から出た後、どのくらいで頭がぼーっとしてウトウトし出すか。30分程度の人もいれば、2時間近くかかる人もいます。自身のデータをとってみましょう。
気をつけたいのは、冷え性の人です。手足が冷たいと深部体温が十分に下がらず、眠気を逃してしまう可能性があります。布団に入るまで靴下や手袋を身につけたり、布団乾燥機などで布団を温めたり、手足の熱が下がらない工夫が必要です。
【質問3】食事のタイミングや内容は睡眠に影響しますか?
A:睡眠と食事は直結します。朝食をきちんと食べることが大切です。
朝日を目に取り込むのと同じくらい重要なのが食事です。ポイントは次の2つ。
1)朝ごはんをしっかり食べる。
2)夜ごはんと翌日の朝ごはんの時間を10〜12時間あけて、絶食時間をつくる。
朝ごはんをしっかり食べ、お昼にはお腹にたまるもの、夜は炭水化物を減らし軽めにするのが睡眠の質をあげる食事のポイントです。動物を対象にした実験では,朝食と夕食は3:1のバランスが朝型生活に良いことが分かっています。
また、人間の体は絶食後に食べる食事を朝ごはんと認識し、内臓時計のリセットを行います。そのため、朝ごはんを食べない、もしくは軽めだと内臓時計のリセットが十分になされずに、中枢時計(脳)と抹消時計(内臓)にずれが生じ、睡眠の質の低下につながります。
【質問4】睡眠トラッキングの注意点を教えてください。
A:情報収集ツールの1つと捉え、結果に一喜一憂しないようにしましょう。
最近、スマートウォッチやスマホのアプリなどで睡眠を記録する、「睡眠トラッキング」を利用する人が増えています。睡眠に対する意識が高まっている証拠なので、とてもいい傾向だと思います。
ただ、使い方を間違えるとストレスにつながってしまうのが文明の利器を用いる注意点。睡眠トラッキングは、あくまで情報収集ツールの1つであることを認識してください。自動的な記録だけに頼らず、睡眠ダイアリーなど主観的な感覚と突き合わせるとより有効に活用できるでしょう。
また、睡眠は1日1日独立しているわけではありません。心身の体調によって、睡眠の質にもばらつきが生じます。日々の結果に一喜一憂せず、1週間くらいの単位で判断するようにしましょう。
そして、情報を得た上で、どういった改善方法があるのか、その中でも自分にフィットし、継続できる方法はどれなのかを考え、実践することで、はじめて睡眠は改善されます。
現在、コロナの影響で在宅勤務が増え、通勤時間がなくなったり短縮になったり、時間に余裕ができた人は多いと思います。そんな時期だからこそ、睡眠不足の解消、食事の充実など、睡眠の質を整えるための良い習慣を身につけるチャンスです。
(構成:塚本佳子、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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