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妊婦同士で争うのは不毛…妊娠・出産の「あるある」ではなく地味な気づきをマンガに

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初めての出産の戸惑いや気づき、理解されにくいしんどさを30代の働く女性・キリちゃんの目線で描いたねむようこさんの新刊『君に会えたら何て言おう』(祥伝社)が4月に発売されました。マンガ誌『FEEL YOUNG』で2019年7月号から2020年4月号まで連載された作品で、2018年に出産したねむさんの体験が色濃く反映されています。

ねむさんに作品を描く上で意識したこと、妊娠・出産を取り巻く女性の状況について思うことなどを伺いました。前後編。

【第1話を読む!】子供ができたら、夜中にテキトーなごはん食べられなくなるんだよ?

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十月十日(とつきとおか)に合わせた10話で完結

——『君に会えたら何て言おう』を描こうと思ったきっかけを教えてください。

ねむようこさん(以下、ねむ):妊娠中はほかの作品を描いていたのですが、同時期に担当さんも妊娠していて互いに初めての妊娠での驚きや発見について話していたんです。妊娠中はとにかくずっと食べ物のことを考えていて人生で一番グルメマンガを読んだ時期だったと思います(笑)。担当さんと「妊婦グルメマンガなんて新しいんじゃない?」なんて話をしていましたね。結局、いざ出産してみたら食べ物もそうだけれど、もっと描きたいことがたくさんあったので妊婦グルメマンガは断念しました。それでも1話には必ず食べ物のエピソードを入れています。

——1話ごとに1ヶ月ずつ進む展開にしたねらいは?

ねむ:赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる期間とされる十月十日(とつきとおか)を体感してもらうようにと10話で終わるようにしました。本当はマンガの中の季節もリアル(連載時の季節)に合わせたかったのですが、難しかったので季節はズレています。

同じ立場だからと言って分かり合えるとは限らない

——執筆にあたり意識したことは?

ねむ:私の場合なのですが、つわりもひどくなかったし幸い大きなトラブルに見舞われることもなかったのですが、だからこそ、地味で細かい問題に気づけたのでそういう部分を作品ですくい取っていければと思いました。妊娠ならではの「あるある」ではなくて、「そういう人もいるんだね」というマイナートラブルに目を向けようと思いました。

『君に会えたら何て言おう』より=祥伝社提供

『君に会えたら何て言おう』より=祥伝社提供(以下、同)

——病院で妊婦同士が話しているシーンで、ほとんどつわりがないキリちゃん(主人公)が「そういう人(つわりが軽い人)とは話ができない」と言われるシーンがありました。私たちはつい「女性」とか「妊婦」とかで一括りにして「同じ立場なら分かり合えるだろう」と考えてしまっていることがありますが、そうとも限らないんだなとハッとしました。

ねむ:あのエピソードは、ネットを見てたらつわりがひどい人同士が盛り上がっていて、つわりのひどさでマウントを取り合っていた現場に遭遇したことが元になっています。新鮮な出来事だったのでマンガにしました。と同時に、私はつわりが軽かったのですが「ラッキー」と思って気軽に人に話していたのですが、「もしかしてマウントと思われちゃったかな?」といろいろ考えてしまいました。でも、同じ妊婦同士が苦しさを細分化して争うのって本当に不毛だなと思いましたね。

——最後は、キリちゃんと件の妊婦がアイスを分け合うという終わり方でしたね。

ねむ:担当さんからはキリちゃんに冷たい態度を取った妊婦がキリちゃんに謝る結末にしてみては? と提案されたのですが、多分こういう人は無自覚に人を傷つける発言をしているだろうから謝らないだろうなと思って謝らせませんでした(笑)。この人はつわりがひどかった自分が是で正しいと思い込んでいるから、他人のことを思いやるまではいかないだろうなと。なので、お互い大変だよねとキリちゃんが歩み寄るところで終わりにしました。

●君に会えたら何て言おう_138-169.indd

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——キリちゃんの夫の男としての生きづらさも垣間見えるシーンがあって印象的でした。

ねむ:キリちゃんの夫は私の夫をモデルにしている部分があります。夫は家事もするし、何かあったら話し合いもする。でも、男として生きていたが故に見えていないものもあって衝突することがあるんですよね。彼も見えていないからこそ、自分が何を求められているか分からないからこそ苦しいだろうなと。妊娠・出産にまつわることってどうしても女性が主体だから男性が叩かれる場面も多いですが、それも理不尽じゃないの? と思うこともあります。女性が男性に寄っていくのも大事なんじゃないかなと思いました。

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読者と一緒に成長していきたい

——先月発売の『FEEL YOUNG』7月号からは35歳の男性が主人公のラブストーリー『こっち向いてよ向井くん』がスタートしました。

自分はもう20代ではないし、恋愛を描いてもいいのか悩んだこともありました。昔は若い読者に受け入れられないといけないと思っていたけれど、『君に会えたら何て言おう』を連載していたときに『午前3時の無法地帯』*を読んでいた読者が共感してくれているのが分かったので、この世代を大事にしていければいいなと思いました。読者さんと一緒に成長していきたいというか……。無理をして若い世代に寄せていくのではなく、自分がピンとくる世代に向かって描いていければと。一方で、恋愛はピンとこないのですが、ピンとこないからこそ思い切って描けることもあると思うので、新しい気持ちで描いていければと思います。

*『FEEL YOUNG』2008年5月号〜2009年7月号で連載。パチンコ専門のデザイン会社に就職してしまった主人公・ももこの奮闘を描く。2013年には本田翼さん主演でドラマ化された。『午前3時の無法地帯』は全3巻で完結したが、人気を博し『午前3時の危険地帯』(全4巻)、『午前3時の不協和音』(全1巻)とシリーズ化された。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

情報元リンク: ウートピ
妊婦同士で争うのは不毛…妊娠・出産の「あるある」ではなく地味な気づきをマンガに

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