「幸せってなんだろう?」「どうすれば幸せになれるんだろう?」——そんな問いの答えを探すため、30代後半で地元の広告会社を辞めて、3か月後には世界一周旅行に出発。幸福度が高いといわれる国々を周遊した堂原有美(どうはら・ゆみ)さんは、帰国したいま「幸せは、自分で考えて、自分で決めるものでしかない」と言い切ります。
16年間打ち込んだ仕事を手放し、新しい人生を歩き始めて見えたもの。27もの“幸福度の高い国”をめぐり、その地に暮らす人々とふれあって感じたこと。
堂原さんのお話から、“自分なりの幸せ”を見つけるヒントを探っていきます。
最終回となる今回は、日本を幸せな国にするためにはどうすればいいのか? 私たちが今日からでもはじめられる「幸せになるためのアクション」について、伺いました。
日本は世界一孤立している国かもしれない
——前回までは旅に出る前や、訪問国でのことを伺いました。今回は帰国後のこと、これからのことを聞かせてください。まず、幸福度の高い国をめぐる旅を終えて、日本に対する印象は変わりましたか?
堂原有美(以下、堂原):そうですね……。海外のさまざまな国を見て、やっぱり日本はとても便利な国なのだと実感しました。もしかしたら、世界一便利なんじゃないかな。でもそのぶん、世界一孤立している国かもしれない、と感じるようになりました。
——世界の人々に比べて、日本人は孤独だ、という意味でしょうか。
堂原:はい。日本はあまりにも便利なので、家にこもって、たった一人でも生活が成り立ってしまうんです。途上国や紛争などで危険な地域の人たちは、身を寄せ合って協力しなければ、生きていけません。でも彼らは「家族が支え合っているから幸せだ」と言います。
とある精神科病院に「死んだほうがマシ」と言っている患者さんがいらっしゃいました。でも、病院スタッフとの心のつながりができたとき、その方は「俺、生きてていいんだ」と、みるみる様子が変わっていったそうです。その病院の調査では「独居患者」と「家族と暮らす患者」を比べたとき、通院継続率は「家族と暮らす患者」のほうが高かったとのこと。
また、日本国内の幸福度ランキングでは、福井県がよく上位に入っています。福井県は持ち家率が高く、3世代同居率が全国トップクラス。こうした結果からも、周囲と関わり、いい意味で依存することは、幸福率を上げるように感じられます。日本人は、そうやって「関係」「依存」することが苦手だから、幸福度が低いのかもしれませんね。
——でも、日本では少しずつ、多様性が尊重されるようになってきましたよね。そのなかでようやく「結婚しない」「一人で生きる」といった選択も、アリだという空気ができてきました。
堂原:「関係」「依存」するのは、家族じゃなくたっていいと思いますよ。パートナーや仲間、友達など、要は「自分と関係する人」を増やすのが大切なんだと思います。人付き合いをしないほうが気楽だという気持ちも、便利だから困らないという理由もよくわかる。でも、人口がこのまま減っていけば、いままでと同じ暮らしは維持できないかもしれません。いまこそ、周囲と関わり合って、幸福度を上げるためにアクションを起こすときなんじゃないでしょうか。
自分のささいな「好き」に耳を傾けて、人生を寄せていく
——幸福度を上げていくために、今日から、個人レベルでできることはあると思いますか?
堂原:まずは「自分の好きなことがなんなのか」を考えることだと思います。ささいなことでいいから、自分の「好き」を自覚して、人生を寄せていくこと。好きな公園があるなら、その道を通って毎日仕事に行くだけでもいいし、好きな小物をすこしずつ集めるようなことも素敵です。そういう小さなことが、幸せを呼んでくれると思います。“幸せ感度”は、低いに越したことはありません。
でも、自分のために何かをするにも、誰かのために動くにも、まずは自分が幸せじゃないとなにも始まらない。私が会社を辞めて海外に行ったのだって、もとは自分の「心から好きだと思える、面白い仕事がしたい」「海外が好きだから、たくさん行って、できればその経験を強みにしたい」という気持ちからでした。
——自分の小さな「好き」を自覚して、積み重ねていくことから、人生が幸せな方向に変わっていったわけですね。でも、自分の「好き」を見つけるのが、また難しい……。メディアなどで大きく取り上げられるような人たちの「好き」が、まぶしすぎます。
堂原:「好き」に、大小や強弱はないと思いますよ。だけどしいて言うなら、自分の「好き」は、ちゃんと探さないと見つからないとは思いますね。なにも動かないで「自分の『好き』がわからない」と言ってしまうのは、怠惰かなぁ。なんでもやってみないとわかりません。面白そうだと思ったことに首を突っ込んで、片っ端から味見をして、本当の「好き」を見つけていけばいいんだと思います。そのくらいの気持ちで、私は世界に飛び出しました。
あともうひとつおすすめなのは、ちょっとでも幸せを感じたときに「幸せ~!」って口に出すこと。めちゃくちゃ簡単だけど、口に出して耳から入ってくることで、その幸せが増幅する気がします(笑)。
どこに行っても「完全な幸せ」なんてない
——忙しく働いていた20代のころは、自分にとっての「幸福」がなんなのか、考えたこともなかったという堂原さん。幸福度の高い国をめぐり終えたいまは、いかがでしょうか。
堂原:あたたかい日にぽかぽか日光浴をしたり、おいしいものを食べたり、友達にやさしくしてもらったり……そういう小さな瞬間が、まずは私にとって「幸福」だなと思えるようになりました。たぶん、そういう瞬間に気づけることそのものが、大切なのかもしれません。
だって、どれだけ幸福度が高いといわれている国に行っても、みんながみんな「めちゃくちゃ幸せ」なんて言わないんですよね。幸福度を高くする社会制度や仕組みは、たしかに存在していたし、国の背景によって細かい内容は異なるようでした。でも、それだけじゃ人は完全な幸福にはなれないみたいで……与えられた環境のなかで、みずから「自分の幸福とはなにか」を考え、決めて、それに向かって動くことが大切なんだと感じています。
(取材・文:菅原さくら、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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