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70歳の店長が教える、イヤなことがあっても「いい顔」で家に帰るコツ

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ベルギーで創業100年の歴史を誇る、老舗のショコラティエ「Mary(マリー)」が今年2月、「Madame Delluc(マダム ドリュック)」として京都祇園に日本第1号店をオープンしました。その店長を務めるのは、70歳の岡本和子(おかもと・かずこ)さんです。

“家事手伝い”を経て専業主婦になった岡本さんは、外で働いた経験はなかったものの、PTAの担当になった時に「もしかしたら、私、外で働くこともできるかも?」と思ったそうです。

後編は、マダム ドリュックの店長として働く現在のことについて聞きました。

店長の岡本和子さん

店長の岡本和子さん

夫がアイロンがけしてくれるようになった

——店長の仕事について教えてください。まず、現在の勤務時間は?

岡本和子さん(以下、岡本):お店がオープンして間もないので、朝9時前にはお店に来て、19時の閉店後にレジ締めをして、20時ごろお店を出ます。最初は慣れないので21時ごろまでかかることもありましたが、だいぶ慣れてきました。

——朝から晩までですね。もしかして、それから家事を……?

岡本:いえいえ。もう夫婦ふたり暮らしですし、家事のことは大目に見てもらっています(笑)。手抜きをすることにはじめは罪悪感もありましたが、やっぱりフルタイムで仕事をしながら完璧に家事をこなすのは無理だとわかりました。開店時間があと1時間遅ければ、ちゃんとご飯の準備をして出かけられるとは思うのですけれど……。

——勤務開始時間がもう少し遅かったら、あれもこれもできるなと私もよく考えます(笑)。旦那さんが手伝ってくれることはありますか?

岡本:夫は家事をしない人でしたが、アイロンがけをしてくれるようになりました。いつも取り込んだ洗濯物が山のようになっていたのですが、ある日帰宅したらキレイに片付いていて。夫が「自分でアイロンをかけたよ」と言うんです。びっくりしたけど嬉しかったですね。

彼もまだ働いているのですが休みの日には車で送迎してくれたりもします。その様子を見た息子は「父親も丸くなったな」と言っていました。

——普段から岡本さんの頑張りを見ているから、応援したくなったのかもしれませんね。

岡本:どうでしょうね。あまりそういう話はしないのですが、朝からずっと働いているので体調のことを心配してくれているのだと思います。元気とはいえ70歳ですものね。

——そんなに忙しくされていて、体調の変化はありませんか?

岡本:健康ですよ。何キロかは痩せて、スリムになりましたけれど……。お医者さんには「ちょうどいい」と言われました。

仕事のグチは女子会で

——私はいま34歳なのですが、この先も健康に働けるかなと思うとちょっと不安になります。

岡本:私の場合ですけれど、気の持ちようなのか運なのかわかりませんが、更年期も暑くてたまらないといった症状が出ることもなくて。季節の変わり目に少し体調を崩したりはしていましたけれど、その時以外はずっと元気でしたね。私のように全く平気だったという人も少なくないと思いますよ。

——「平気だったよ」という声が知りたい人は多いはず。岡本さんはなぜ平気だったと思いますか?

岡本:ずっと「なるようになるさ」と思って過ごしていたからでしょうか。怖いとか、不安だと思い込んでしまうと、気持ちがそこにとらわれてしまうような気がして。だからあまり深刻に考えないようにしていました。それから周りにお友達がいてくれたことも大きいかもしれません。

——どんなお友達なのでしょうか?

岡本:同い年くらいの女性たちですね。昔から、子育て問題とか嫁姑問題とか、似たような悩みを一緒に乗り切ってきました。

——へぇ。でも、お仕事の悩みは共有しにくいのでは?

岡本:それが意外と、事業を立ち上げている人やお仕事をしている人がいるんです。「この歳になっても、イヤになることあるよね。いったい、いつ仕事を辞めたらいいのかしら」なんて話をすることもありますよ(笑)。美味しいお菓子やお茶をいただきながら「もー!」とか「つらいよね!」って言い合ってその場で発散しているんです。

——いい女子会ですね。

岡本:そのような場があるから、お家に帰っても職場でも「いい顔」ができるんです。お互いわーっと言い合って、その場だけで終わって、いい顔して帰ろうというのがお約束。年寄りになったせいか最近は前よりもずっと一方通行になりましたけど(笑)。それでも、彼女たちが何を言いたかったもわかるし、自分もすごくすっきりするんです。

「店長70なんですか? ですって(笑)」

——そういう友人が周りにいるのは心強いですね。店長という立場で働くといろいろあると思うのですが、働くうえでのルールはありますか?

岡本:高価なチョコレートを扱うお店なので、身なりを清潔に保ったり、言葉づかいに気を配ったり、それなりの品格を保つように心がけていますし、常にスタッフにも伝えています。自分の振る舞いが全て、お店のブランドのイメージになりますので。

——スタッフのみなさんと年齢の壁を感じることはありますか?

岡本:あまりないですね。70歳の店長としてメディアなどでは取り上げていただくこともありますが、正直なところ私自身が自分の年齢をあまり感じていないのです。働いたり生活をしたりする中で、自分の年齢のせいで何か不自由なことがあると感じたことがありません。

そういえば取材前に「今日は何の取材ですか」とスタッフに聞かれたのですが、「70歳で店長になった女性がテーマよ」と答えたら、彼女とても驚いていました。「えぇ、店長、70なんですか!? 60歳ぐらいだと思っていました」ですって。

——正直ですね(笑)。自分が店長であるという気負いはありますか?

岡本:いいえ。苦手なことは苦手だし、パソコンだってわからないことがあればスタッフに教えてもらいます。そうやって協力し合いながら、もっとたくさんのお客さまに知ってもらって地元の方にもゆっくりしていただけるような、ほっとするお店にしていきたいと思っているんです。

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【店舗情報】
Madame Delluc 京都祇園店
場所:京都府京都市東山区上弁天町435-1
電話番号:075-531-2755
営業時間:10:00~19:00
定休日:不定休
公式サイト:http://madamedelluc.jp/

(取材・写真:安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
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