「リンゴが赤くなると医者が青くなる」といわれるように、リンゴには多くの健康パワーがあります。リンゴに含まれる成分のひとつの「ペクチン」は「アップルペクチン」と呼ばれ、「腸内環境を整えて便秘を改善する」、「糖質の吸収を抑える」、「活性酸素の毒性を抑えるアンチエイジング作用がある」などの研究報告があります。
そこで、リンゴの名産地である青森県弘前市在住の内科医・成田亜希子が、アップルペクチンに焦点を当て、リンゴに秘められた健康にとって有用と考えられる情報と、食べ方のコツについて解説します。
アップルペクチンはほかの食材より整腸作用が強い
アップルペクチンとは、リンゴに含まれる水溶性の食物繊維です。食物繊維は野菜や果物などに多く含まれ、肥満予防やダイエットに有用なことで知られる栄養素です。先ほど伝えたとおり、整腸作用があって便秘の予防や改善に働くため、近ごろでは5大栄養素と並んで「第六の栄養素」とも呼ばれています。水に溶ける「水溶性」と溶けない「不溶性」の2つのタイプがあり、アップルペクチンは水溶性食物繊維に分類されます。
水溶性食物繊維は消化管の中でゲル化するため、「コレステロールを吸着する」、「食べ物を包み込んで消化・吸収を穏やかにする」、「血糖値の急激な上昇を抑える」、また、腸内では善玉菌の餌となり、善玉菌を増やして腸内環境を整えることもわかっています。
ペクチンは植物の葉やくき、果実に広く分布される成分ですが、とくにアップルペクチンはほかの食材に含まれるペクチンよりも腸の動きを活発にして、大腸内の悪玉菌を素早く排出するのに有用との報告もあり、腸内環境を整える作用が強いことが特徴と言えるでしょう。
腸内環境が整うと、便秘の予防や改善だけではなく、腸内で産生される発ガン性物質を排出させて大腸ガンの予防につながるという知見もあります。
活性酸素を抑えてアンチエイジングに役立つ
次に、アップルペクチンのもうひとつの力、アンチエイジングについて紹介しましょう。
「活性酸素」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、活性酸素とは、ほかの物質を酸化させる力が強い酸素であり、脳と体の細胞を傷つけ、皮膚や骨、内臓、血管、脳と全身の老化を引き起こし、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病やガン、認知症などの発症に関わることがわかっています。アップルペクチンは、その活性酸素の悪い働きを抑制する「抗酸化作用」が認められています。
さらに、アップルペクチンをはじめとした食物繊維を豊富に含むリンゴは硬く歯ごたえがあり、よく噛(か)む必要があます。すると、唾(だ)液の分泌が促されて活性酸素の発生を抑える作用が高まるとも考えられています。
というのも、ヒトの体では活性酸素の働きを防ぐための酵素が分泌されていますが、それは唾液にも含まれています。そのため、リンゴを食べて唾液が多量に分泌されると、活性酸素の悪影響を軽減できると言えるのです。
このように、リンゴには活性酸素による老化を防ぐ仕組みがあることを覚えておきいものです。
栄養素を効率良くとるには、皮ごと・加熱。種類は「王林」
ここで、1個のリンゴからアップルペクチンを効率的に摂取する方法をお伝えしましょう。より多くのアップルペクチンをとるには、「皮ごと・加熱」して食べるのがポイントです。
(1)皮ごと食べる
アップルペクチンは皮に多く含まれています。また、リンゴの皮には、ビタミンCやカリウム、鉄分、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれており、捨てるととてももったいないことになります。
リンゴを食べるときは、ぜひ皮ごと食べてください。噛む回数も増えて、紹介したとおり、健康に良い影響を発揮します。細く輪切りにすると、皮も、蜜の部分も食べやすくなります。
(2)加熱して食べる
アップルペクチンは、100度以上の加熱で6~9倍に増え、120度以上の加熱で活性酸素の働きを抑える力が上昇します。
リンゴの健康パワーを最大限に利用できる調理法は、中まで十分に加熱される「焼きリンゴ」です。自分で作ることができますので、休日に挑戦してみてはどうでしょうか。
手っ取り早く加熱したい場合は、皮ごと輪切りしたリンゴを耐熱皿に並べて、電子レンジで1分~1分30秒(500W)ほど加熱しましょう。100度には及びませんが、ホットリンゴができあがります。
また、リンゴには多くの品種がありますが、アップルペクチンを豊富に含むのは、「王林」や「レッドゴールド」です。品種によって含まれる栄養素やその量は異なりますので、選ぶときの参考にしてください。ただし、リンゴには果糖が多く含まれるので、1日に食べる量は1個までを目安にしましょう。
リンゴにはペクチンのほかに、ポリフェノール、カリウム、リンゴ酸といった栄養素も含まれ、それらもそれぞれに健康に良い影響をもたらすことがわかっています。詳細は次回、リンゴの健康パワー第2弾の記事でご紹介しましょう。
(構成:藤井空/ユンブル)
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