先だって配信された記事「便秘予防、アンチエイジングに…青森の内科医が教えるリンゴの力」では、リンゴに含まれる成分「アップルペクチン」が腸内環境を整えて、全身の細胞によい影響を与えることについて詳しくお伝えしました。
実はリンゴには、アップルペクチン以外にも健康にとってありがたい成分が多く含まれています。
そのひとつ、「ポリフェノール」が近年、肥満やメタボリック・シンドローム(以下、メタボ)、血管の病気や糖尿病などの生活習慣病予防に有用として注目を集めています。
今回はリンゴの力の第2弾として、リンゴポリフェノールの作用と、それを効率的にとる食べ方について、前回に続き、リンゴの特産地・青森県弘前(ひろさき)市在住の内科医・成田亜希子が解説します。
抗酸化、肥満予防、血糖値を下げる「プロシアニジン」
リンゴに含まれるポリフェノールを一般に、「リンゴポリフェノール」と呼びます。まず、ポリフェノールとは、よく知られているように、植物のほとんどに存在する色素や苦みの成分の総称です。自然界には5,000種類以上が存在すると言われ、カテキンやイソフラボン、アントシアニンなどは有名でしょう。
次に、ひとつ知ってほしい成分があります。それは、リンゴに含まれるポリフェノールの約50~60%を占める「プロシアニジン」
です。
プロシアニジンには複数の健康パワーがあり、とくに注目したいのが、「抗酸化作用」「肥満やメタボの予防作用」「血糖値を下げる作用」です。ひとつずつ見ていきましょう。
・抗酸化作用
前回の記事で説明した「ペクチン」と同様に、プロシアニジンには、活性酸素の発生を抑える働きがあります。活性酸素は、細胞のDNAを傷つける、炎症を引き起こすなどしてガンや動脈硬化の発症を促します。プロシアニジンはその活性酸素を抑制するため、細胞のダメージを防いでアンチエイジングに作用し、複数の生活習慣病の予防に有用と考えられています。
・肥満やメタボを予防する
食べ物によって取り入れられた脂肪は、腸管で「リパーゼ」という消化酵素によって分解されて体内に吸収されます。吸収された脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪として体に蓄積されるため、脂肪を過剰に摂取すると肥満やメタボの原因になります。
プロシアニジンはそのリパーゼの働きを抑制し、腸管での脂肪の吸収を低下させます。また、体内に吸収された脂肪を燃焼する酵素の分泌を促すため、溜まっている脂肪を減らす作用もあり、肥満やメタボの予防につながるという報告があります。
・血糖値を下げる
プロシアニジンは、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を下げるインスリンというホルモンの分泌と働きを促す作用があります。また、糖分を筋肉に取り込むように働き、血糖値を下げるのに有用ということがわかっています。
プロシアニジンはこれらの作用によって、肥満やメタボ、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の直接的な原因となる動脈硬化リスクを軽減すると考えられます。加齢や生活習慣によって血液がドロドロになっていくのを予防すると言えるでしょう。
皮膚の美白作用があり、シミ・シワを予防する
プロシアニジンのありがたい働きはまだあります。それは、皮膚の美白作用です。皮膚のシミや黒ずみの原因は「メラニン色素」ですが、これは、紫外線やストレス、タバコなどの刺激によって産生され、皮膚に沈着します。
プロシアニジンは、メラニン色素の産生に関わるチロシンキナーゼという酵素の働きを大きく抑制して、シミやシワなどの皮膚トラブルを軽減することがわかっています。最近では、プロシアニジンなどリンゴの成分が含まれる化粧品やサプリメントも市販されています。
紫外線が強くて日焼けによる色素沈着が起こりやすい時期はとくに、毎日半分~1個のリンゴを食べると、皮膚のトラブルの予防や軽減が期待できるでしょう。
効率的な食べ方は、皮ごと・お酢・3食に分けて
ではここで、リンゴのプロシアニジンを効率的にとる食べ方を紹介しましょう。ポイントは次の3つです。弘前市では、これらの食べ方はよく知られています。
・皮ごと食べる
プロシアニジンは、リンゴの皮に、果実に比べておよそ4倍もの量が含まれることがわかっています。水で洗ってから、皮ごと食べましょう。輪切りにすると、皮も蜜の部分も食べやすくなります。
・お酢に浸してから食べる
お酢には血管を広げる作用があります。またプロシアニジンは、先に述べたように動脈硬化を予防して血液サラサラに有用と考えられるため、相乗の作用で血管に良い働きがもたらされるでしょう。
・1日3食に分けてこまめに食べる
プロシアニジンは数時間で体外へ排出されます。体内でその栄養を長く持続させるには、1日のうちに1回で1個を食べるのではなく、半分~1個を朝、昼、晩の3食に分けてこまめに食べるとよいでしょう。
また、プロシアニジンの含有量は、リンゴの品種によって大きな差はありませんが、「ふじ」にやや多く含まれています。
さらに、赤く熟れたリンゴより、青く未熟なリンゴに多く含まれることもわかっています。未熟なリンゴを使用するジュースには、リンゴ2~3個分のプロシアニジンが含まれるため、青リンゴジュースを飲むのもよいでしょう。
プロシアニジンをとるために食べたいリンゴの量は、1日1個で十分ということがわかっています。それに、果糖が含まれるので、1日1個までが適量でもあります。
つがる弘前農業協同組合(青森県弘前市)は2018 年3月、生鮮食品としては初めて、リンゴを機能性表示食品として届け出て受理されました。「プライムアップル!(ふじ)」という名称で、パッケージには「内臓脂肪を減らす機能があることが報告されている」と表示されています。
リンゴの旬は秋から冬ですが、全国どこででも1年を通して手に入りやすく、保存期間も方法によっては1~3カ月と長持ちだというメリットもあります。
私は現在、30代半ばですが、常々、肥満やメタボ、生活習慣病の予防は、加齢によって症状が見え始める30代前半から対策を始める必要があると考えています。まずは食事内容を見直して、リンゴを取り入れてみてはいかがでしょうか。
(構成:藤井空/ユンブル)
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