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“真実”も人間も多面的なものだから…話題の映画『由宇子の天秤』が突きつけるもの

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“正しさ”をめぐって葛藤するドキュメンタリーディレクターの姿を描いた映画『由宇子の天秤』(春本雄二郎監督、9月17日公開)の公開を記念したシンポジウムが9月初旬に開催されました。

シンポジウムには春本監督やNPO法人「Dialogue for People」副代表でフォトジャーナリストの安田菜津紀さん、元文部科学省事務次官の前川喜平さんらが出席。司会をドキュメンタリーを制作する有志プロジェクト「choose life project」代表の佐治洋さんが務め、同作で描かれる「不寛容な社会をなくすため、私たちができること」をテーマに議論を展開しました。

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子

「100%白黒ハッキリしない、揺れ動きがリアル」

今作は映画『火口のふたり』などで知られる女優の瀧内公美さんが主演し、春本監督が脚本も担当。劇場版アニメ『この世界の(さらに いくつもの)片隅に』の片渕須直さんがプロデューサーとして参加しています。

映画は、瀧内さん演じるドキュメンタリーディレクターの由宇子が主人公。由宇子は3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の真相に迫る中、学習塾を経営する父から思いもよらぬ“衝撃の事実”を聞かされることに。常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる……というストーリー。第71回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門など数々の映画祭に正式出品されています。

シンポジウムでは、まず主人公をドキュメンタリーのディレクターに設定した理由について春本監督が説明。「主軸となっているのは超情報化社会、つまり、誰もが発信者になれる時代」と前置きし、「この時代に、社会の闇に光を当てることができると思っている主人公が自分自身の闇に光を当てることになったとき、個人なのか? 報道なのか? どちらを尊重するのか? そこではじめて真実を語ることの難しさを知る。情報の代表者である主人公が当事者になる。観客に当事者になることを体感してほしかった」と真意を語りました。

(C)2020 映画工房春組 合同会社

(C)2020 映画工房春組 合同会社

次に、安田さんが主人公の由宇子の印象をコメント。「主人公を含めて、100%白黒ハッキリしない、揺れ動きがリアル。由宇子は、撮影しないでと言われているのにカメラを向けてしまったりする。だけど、バッシングを受けている加害者家族に対して『私は誰の味方にもなれません。でも、光を当てることはできます』と言う彼女の言葉は嘘ではないと思う」と自身の考えを話すと、春本監督も「完全な人間はいないと考えている」と同意。続けて「真実も人も多面体で、つかみどころがない。映画を通して、人間の多面性を見せたかった」と今作で表現したかった思いを明かしました。

さらに、安田さんは今作を観て感じたこととして、「メディアの自浄作用のなさに既視感がある」とコメント。「7年前科学技術の疑惑の渦中にいた女性の一連の報道について、朝の番組でメディアの報じ方に問題があるとコメントしたら、他局の方から『メディアの中にいてメディア批判するってどうなの? と周りが言ってるよ』と遠回しに牽制され、この業界で生きていきたいなら忖度しなさいという警告に感じた。メディアの中からメディアを批判しなければ誰が批判するのか? 自浄作用をもたせるにはどうしたらいいのか? 映画を観て改めて考えた」と自身の経験と重ね合わせて語りました。

光石

情報の“受け手側”には「立ち止まる勇気も必要」

シンポジウムでは、“超情報化社会”の問題や矛盾を描く映画の内容にちなみ、情報発信についての発信側と受け手側の問題についてもトークを展開しました。司会の佐治さんが、旭川いじめ事件のネットリンチを例に挙げ、“個人の正義の暴走”について触れると、春本監督は「何のために誰かを叩くのか? 人や行為を責めて、なぜ起こったのかを掘り下げようとしない。メディアも掘り下げる方に目を向けるような情報発信をせず、叩くように仕向けている」とメディアの抱える問題を指摘しました。

また、安田さんは「わかりやすくするには、何かを悪魔化するのが簡単な方法」と見解を示し、過激派組織「イスラム国」の事例を用いて説明。「例えば、イスラム国は残酷な集団として知れ渡っている。シリアでの取材で、イスラム国の兵士にインドネシアから嫁いだ大学生に、なぜ宗教に傾倒したのか? と聞いたら、そのきっかけは失恋だった。心の穴をふさいでくれたのは宗教だったと。後悔しているか? と聞いたら『YESでありNO』。社会が『前に進め、進め』と鼓舞する先に、宗教があったら……。なぜイスラム国は生まれたのか? どのように求心力を持ってしまったのか? そこに切り込まない限り、同じような構図が再生産されていくかもしれない」と考えを語りました。

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シンポジウムの最後には、佐治さんが、受け手側が“メディアリテラシー”を高めるために必要なことについて、3人に質問。安田さんは「初心に立ち返らないといけない。人にカメラを向けるからには常に自分にも矛先を向けられるのかを考えろ、と先輩に言われた。それは受け手にとっても同じ。声を出す勇気は大切だが、発信する手段が身近になっているからこそ、立ち止まる勇気も必要。ここでほんとにボタンを押す? とワンクッションが必要だと感じる」と、情報発信が容易な現代だからこそ必要な意識の持ちようを語りました。

一方、前川さんは「健全な懐疑心が大事」と指摘。「政治家の言うことはまずは疑ってかかる。白黒判断つかない部分を抱えつつ生きていく。自分自身に対する懐疑心。他人との葛藤だけでなく、自分を疑うことによって真実に迫る。そうすることで少しずつ真実に近づける」と語りました。

最後に、春本監督は「真実は多面的であるということが一番言いたい」と改めて強調。「人と社会は合わせ鏡のようなもの。自分が外にいるかのように社会を批判するのは違う。自分もその中にいると考えることが大事。つまずいたとき、どういう社会だったら立ち上がれるのか? 立ち上がるためにどういう社会にするべきか? 映画もメディアも教育も、思考停止しないということ。大人たちがそう言っているからと子どもはテレビや先生の言っていることは正しいと思考停止してしまうが、本当なの? と疑うことが大事。だから、この映画の題材に教育とメディアを選んだ。由宇子がどういう社会だったら立ち上がれるのか、みなさん自身の言葉で考えてほしい」と呼びかけ、締めくくりました。

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情報元リンク: ウートピ
“真実”も人間も多面的なものだから…話題の映画『由宇子の天秤』が突きつけるもの

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