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残したくないものは「余計な人間関係」【幡野広志】

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2017年12月、自身が難治性のがんであることをブログで公表した、写真家の幡野広志さん。公表後、彼の元には、同じくがんを患った人々、そしていじめやDV、こころの病など、さまざまな生きづらさを抱えている多くの人々から、数千にも及ぶメッセージが寄せられたそうです。

幡野さんは、一人ひとりとメッセージをやりとりするうちに、彼らへの取材を思い立ちます。取材を通して、「生きづらさの根底にあるもの」を見極めようと決意します。

この取材をもとに誕生した著書、『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)について、「家族」「人間関係」「選びなおす」をテーマに、3回にわたってお話を伺いました。第2回目のテーマは「人間関係」です。

【第1回】生きづらさも生きやすさも根底には家族がある

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「あのときの後悔」をリベンジしようとする人たち

——前回のお話で「人間関係をリセットした」とおっしゃっていました。リセットしたのは病気がきっかけなんですか?

幡野:病気がきっかけですね。ぼくは「やさしい虐待」と呼んでいるのですが、病気になると、よかれと思って好き勝手な話を押し付けてくる人がたくさんいるんです。代替療法とか健康食品とか、パワースポットとか「奇跡の水」みたいなやつとか……。

——もしかして、壺を売られそうになるとかもあるんですか?

幡野:あります、あります。最大3つありましたよ。もう、メルカリで売っちゃおうかな(笑)。

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——えー! 本当にあるんですね。幡野さんが「ぼくにはいらないので」って出品したら、おもしろそうですね。サインなんかつけちゃって。

幡野:でも、まじめな話、宗教の勧誘も多いし、ハマっちゃう人もいっぱいいるんですよ。しかもぼくの場合、息子をダシに勧誘してくるんですよね。「残される息子さんのことを考えて」とか「息子さんを不幸にしないために」とか。

勧誘の言葉も、非難の言葉も、すべて巧妙に「息子」を使ってくる。途中でそのカラクリに気づいたからよかったけど、こころが揺らぐ人はたくさんいると思います。

——たしかに、自分ががんになったら壺でもパワースポットでも健康食品でも、すがっちゃうかもしれない……。

幡野:そういうときは、「なぜ、みんなこんなにいろいろ言ってくるのかな?」って考えることが大事なんだと思います。詳しく話を聞いていくと、「数年前、仲の良い友達ががんで亡くなったんです。あのときに、もっとこうしてあげれば良かった」って後悔してる人が結構いるんですよ。「あのときの後悔」を、ぼくを使ってリベンジしようとしている。

——へええ。

幡野:だから向こうも一生懸命なんです。「あのときの後悔」が先にあるから。なかには、1日に何度も連絡してくる人もいましたしね。要は、ぼくに連絡を取って、「奇跡」を実現させることでリベンジを果たそうとするんですよね。

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——本にもありましたが、こころを崩すのは患者本人だけじゃないんですね。幡野さんにリベンジしようとしてきている人たちは、まさかそれが幡野さんの迷惑になっているとは思ってない。むしろ「良いことをやっている」と思ってるかもしれない。

幡野:もちろん本人たちは「幡野さんのため」っていうけど、完全に自分のためですよね。「あのときの後悔」で、少なからずこころのバランスを崩しているんだと思います。健康なときだったら相手することもできたかもしれないけど、今のぼくには無理です。

人間関係のリセットと、声を上げる勇気

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——そういえば本の中で、家族に残したくないものとして「余計な人間関係」って書かれてましたね。

幡野:ぼくのような立場に置かれたら、人間関係の整理っていちばん最初に必要なんじゃないかな。医療保険の申請と同じくらいのレベルで必要だと思います。健康な人たちに向けてこういう話をするとみんな驚くけど、同じがん患者さんたちと話してると「あるある」「わかるわかる」な話なので。がん患者あるある、なんでしょうね。

——そういうこと「患者目線の本音」を言葉にしてくれる人って、いなかったですよね。

幡野:なかなか言えないですよ。自分ががんになったというだけで、家族に迷惑をかけているとか、社会のお荷物のように感じて、孤独感を味わっちゃうわけですから。そこで「人間関係までウザいです」なんて、とても言えない。それよりも「この『奇跡の水』、飲んでみなよ」って言われたら「ありがとう」って受け取っちゃいますよね。

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——まわりや世間も“理想のがん患者”を求めちゃっている部分はあると思います。

幡野:とくに若い人ががんみたいな病気になると、急に聖人扱いされたりしますからね。「あの人は、清く正しく頑張っている」みたいな。まあ、まわりがそんな状態だったら、本音は口にできないですよね。言うと楽ですよ。ぼくは言っちゃったからすごく楽ですよ。言う前は、ちょっと勇気がいるけど。

——幡野さんも勇気を出したんですね。

幡野:壺が2つ、お守りが8個目になったくらいのときに、さすがに我慢できなくなって「迷惑」って言っちゃいましたね。ほかにもキノコとかサプリメントとか、お茶とかオイルとか、とにかくいっぱい送られてくるんですけど、耐えられなくなったんです。

——相手は善意のつもりでも。

幡野:だって、どう考えたってへんなキノコよりもAmazonギフト券のほうがうれしいじゃないですか(笑)。入院中に必要なものって、意外とたくさんあるので。キノコを何十個もらっても誰も幸せにならないし、売っている会社が儲かるだけなので。これはちゃんと言ったほうがいいな、って思いましたね。

——それで救われた人は多いんじゃないかな。患者さんもそうだけど、今までそういうものを贈ってた側の人たちも。

幡野:そうですね。当事者からの発信が足りなかったんですよね。

たとえば今、LGBTまわりのことって、すごく理解が進んでるじゃないですか。それは周囲の人たちが声を上げてくれたからではなくて、当事者たちが勇気を持って発信したからだと思うんですよね。

だから、がんでも、ほかの病気でも、いろんな社会問題も、まずは当事者たちが勇気を持って発信していくこと。そうすれば世の中って、少しずつ改善していくと思うんですよね。

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※第3回は7月4日(木)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)

情報元リンク: ウートピ
残したくないものは「余計な人間関係」【幡野広志】

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