恋バナをしていただけなのに、なんだか人間関係のつまずきにも効き目がありそうだと評判の「NEO恋バナ」。
その奥深さについて、新刊『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(イースト・プレス)を上梓したばかりの、恋バナ収集ユニット「桃山商事」のみなさんに話を聞きました。
後編も、NEO恋バナの楽しさについて聞きました。「大草原弁当」や「フルチン土下座」などパワーワードが飛び出します。
【前編は…】恋バナは、掘れば掘るほどおもしろい
そうだ。ワッコさん初めまして
——そういえば、ワッコさんが書籍に登場するのは今回が初めて?
ワッコさん(以下、ワッコ):そうですね。私は「中途入社」で活動は2年目になります。
——『モテすべ』の中で、桃山商事との最初の出会いの場面で、緊張しすぎて5秒で吐いたと書いてあって衝撃を受けました。
ワッコ:はは。何がどうなるかわからないものですね。それから数年経って代表と専務に「You来ちゃいなよ」と誘っていただきました。
清田:初対面のインパクトは確かにすごかったけど、その日はあまりしゃべれなかったんだよね。でも、共通の知人もいたりでその後も付き合いが続き、ずっと面白い人だなという印象は持っていた。それで『二軍ラジオ』に一度ゲストで出てもらったら、パンチラインが次々飛び出てきて。「こいつはヤバい……」とその才能に一同惚れ込みました。
——ワッコさんから飛び出す言葉が持つ、爽快感と破壊力は確かにトリコになりそうです。
ワッコ:ありがとうございます。はじめのうちは「何を話せばいいんだろう」「ちゃんと話せるのかな」と思いながら収録に臨んだのですが、3人でいろんなエピソードを紹介しているうちに「あ、そういえば」と思う瞬間が結構あって。「友達があんなことを言っていたな」とか「そういえば元カレが……」とか、脳内が活発に動く瞬間がきて、それが起爆剤になって言葉が出てくる、って感じです。
電車の中で生理用ナプキンを取り替える母
——特にワッコさんご家族の話がすごかったです。お母さんが生理用ナプキンを電車の中で取り替えたとか、お弁当のふたを開けたら生のピーマンにカレー粉をかけただけの大草原弁当だったとか……。
ワッコ:ヤバい母ですよね(苦笑)。あの話をウェブで公開したら結構読まれたと聞いて、当時のツラい気持ちがちょっと浮かばれたなと思いましたね。
——みなさん、自分の恥部をかなり自己開示されていますよね。それは、怖くないんですか?
清田:前回の安次富さんの「義父モノのAVが好き」発言もなかなかの自己開示だったと思うけど(笑)。ああやって自分の体験を紹介することで議論が深まることって結構あると思うんですよ。
森田:例えば友達から話を聞くときは「こういう経験があってさ」と、まず自分のことから話すんです。すると相手は「あ、そういうことなら、あるある」と、記憶の引き出しからエピソードを出してくれる。そういう「つながり」があるから、あまり怖くないんだと思います。
他者の話を聞いて自分の中の記憶を思い出すということは、どこかに共通点があるからですよね。そうやって考えると、自分が特殊なわけじゃないと思える。
だから怖いという気持ちはあまりなくて、「きっと同じような体験をして、同じように感じている人がいるんじゃないかな」という心持ちで話しています。あと、そこで「同じような体験をしたけど、自分とは違う感じ方をする人もいる」と気づくこともあって、それはそれでまた自分が広がる感じもしますし。
清田:文脈ありきで話をするのも大きいですよね。例えば僕は昔、旅行先の温泉で恋人の入浴姿をのぞき、異様に興奮した経験があるんですが……。
——『モテすべ』にも書かれているエピソードですね。
清田:そう。何の脈絡もなくそんなことを言い出したらおかしいし、ヤバいやつじゃないですか。でもそうじゃなくて、その回には「自分史上最高のエロ」というテーマがあり、それぞれの体験を紹介し合う中で突如そのことが思い出され、記憶の引き出しを開ける必然性が出て来た。そこで、エピソードをおずおずと紹介してみると誰かの話と意外なつながりが見えてきたりする。そういう瞬間が楽しいですね。
「まんこ」って言えるようになりました
——確かに。あの……愚問かもしれませんが、ユニットに女性が加入したことで何か変化はありましたか?
森田:「女性だから」メンバーに誘ったというよりも、僕らにとってはワッコ自身がすごく面白いから入ってもらったという感覚が大きいですね。でも、いろいろ変化はありました。たとえば僕は、「まんこ」って言うのに抵抗がなくなりました(笑)。
清田:それはあるかも。「ちんこ」は言えても「まんこ」にはどこか遠慮があったよね。
ワッコ:私が入ったことでシモ方面の話が増えたなっていう感覚はあります(笑)。でも、「まんこ」は部位ですからね。足とかお腹とかと一緒ですよ。恥ずかしがる必要なんて1ミリもないです。
森田:幸い、『モテすべ』の元となった連載をしているcakesさんも、版元であるイースト・プレスさんも、「まんこ」と書くのがOKだったからよかったです。それからワッコは、やっぱりボキャブラリーが飛び抜けて面白いんです。
清田:そこがワッコが加入した一番の影響かもしれない。パンチフレーズメーカーというか(笑)。それから、ワッコのいつメン(いつものメンバー)が提供してくれるアラサー世代のリアルな声もすごくありがたいし、ワッコは仕事で若い人と話す機会も多く、収集できる恋バナの幅がものすごく広がったというのも大きいですね。僕と森田はアラフォー世代ですが、普段あまり接することのない世代の文化や価値観や生活習慣が、ワッコが収集してくる恋バナを通じて輸入されてくる感覚があります。
森田:『モテすべ』の中でも紹介している女性誌の「湯上がりすっぴんメイク」みたいな情報って、アラフォー男性である僕らではがなかなか知り得ない情報ですからね。あと、これも『モテすべ』の中にたくさん出てくるんですけど、ワッコの友人たちの話が、いつも最高に面白いんですよ。みんな本当に魅力的なんです。そのコミュニティーも含めて、ワッコを通じて自分たちの知らない世界に接続できた感じがあります。
清田:森田はよく「民俗学のような気持ちで恋バナ収集をしている」と言っているけど、耳を傾けなきゃ消えていってしまうような、市井の人々の恋バナを保存しておきたいっていう気持ちが強いよね。
森田:うん。もっと言うと、僕は清田とワッコのことが単純にすごく好きで、「この人たち、一体どうなってるんだろう」みたいな興味がずっと継続しているんですよね。「清田研究家」であり、「ワッコ研究家」なんです。
だから今回、この2人との話を書籍という形で出せたのは、自分としてはすごく意味のあることでした。それは自分の妻や、『モテすべ』に何度も出てくる“いつもの先輩”や“漁師の娘”さんをはじめとした友人たちについても同じことが言えるんですけど。
恋バナは女子のマウンティングの場だと思っていた
——なるほど。ワッコさんは昔から恋バナが好きだったんですか?
ワッコ:いえ。実は元々、恋バナは苦手だったんです。なんとなく、女子がマウンティングし合う会話というイメージがあって。でも、桃山商事に入って、「恋バナってこんなにおもしろくて豊かな活動だったのか!」と日々実感しています。
——恋バナって、ノロケか悩みかどちらかというイメージがありましたけど、案外多岐に渡るんだなと私も驚いています。
ワッコ:ですよね。例えば、浮気をした元カレの「フルチン土下座」の話を友達と普通にしても「そんな男、秒で別れろ」って言われるんですよ。でも、2人との会話ではそこから「謝罪は済んだのになぜモヤモヤが残ったんだろう」とか、「そもそも謝罪の効果って……?」と議論が展開していくんです。そういう展開が「NEO恋バナ」の楽しさです。
清田:たしかにあの議論は、フルチンで土下座をしたというインパクトもあるけれど、結局その後に高いバッグを買わせてしまって、それが謝罪として失敗だったんじゃないかって話になったんだよね。
森田:そこで謝罪完了っぽくなっちゃったという。
ワッコ:はい。納得できる謝罪を引き出すまで粘り強く詰めればよかったな……と、改めて振り返るうちに後悔してきたり……。こうやって2人と話しているうちに議論が進んでいって、新しい気付きがあるのが面白いです。
清田:我々の元にいろんな人のエピソードが集まるということは、それだけみんな、自分について語り、自分自身のことを知りたいという欲求があるんじゃないかと思うんですよ。「NEO恋バナ」はそういう意味で、自分を知るきっかけになるんじゃないかと思ってます。みなさんも誰かに自分の恋バナを思いっ切りしたくなったときは、ぜひ桃山商事に連絡ください!
(取材・文:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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