2年連続で待機児童ゼロを達成し、共働き子育てしやすい街1位となった豊島区*。23区で唯一の消滅可能性都市**になったことをきっかけに、子育て環境整備に、区が一丸となって推進しています。
豊島区「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長・宮田麻子(みやた・あさこ)さんと、豊島区長公認の池袋愛好家・小沢あや(おざわ・あや)さんによる対談連載。3回目は、豊島区の子育て政策について伺いました。
【第1回】「女性が輝く」ってしんどくない?
【第2回】ちょうどいいダサさが気楽 池袋の魅力って?
*2017年日経DUAL調査より
**少子化や人口の減少で、将来に消滅する可能性がある自治体のこと。2014年に民間有識者組織の「日本創成会議」が発表した全国自治体の将来推計人口で、豊島区は23区で唯一、2040年に20〜39歳の若年女性が半減し、人口を維持することができない「消滅可能性都市」とされた。
2年連続で待機児童ゼロを達成
小沢:先日、豊島区を歩いていたらNPOの方が常駐している公園があったんです。職員の方にお話を伺ったら「豪雨でない限り、行き場のない子どもがいるかもしれないから、毎日あけるようにしています」とおっしゃっていました。
宮田:池袋本町プレーパークですね。
小沢:地域の大人が、子どもの顔を覚えていれば、虐待を疑うようなケースがあったときに通報しやすいのではないかと。相談窓口なんて仰々しいものでなくても、地域の関わり合いによって居場所ができる。心強いです。
宮田:公園というオープンな場所のほうが、いいですよね。今は全国的に広がっている「子ども食堂***」も、豊島区要町の「要町あさやけ子ども食堂」が草分け的存在です。
***安価な料金または無料で、子どもや親子に食事を提供する場。
小沢:区長も「豊島区の子どもたちは、私たちが育てる」とおっしゃっていました。豊島区は2年連続全学年で待機児童ゼロを達成しました。これは、保活(保育園に入るための活動のこと)当事者としても強烈なインパクトでした。
宮田:統計に出るにはタイムラグがあるので、まだ今年の具体的実数は見られていないのですが、平成28年度に落ち込んだ子育て世代数も、29年度は上がりました。保育政策の影響は大きいですね。
小沢:保育園に入ることができるかどうか、住んでいる自治体で命運が分かれるなんて、思ってもいませんでした。保活中も友人と、どこに引っ越すのが正解かな? とよく話していました。話題にあがるのは、子育て世帯への補助が手厚い港区。でも、やっぱり家賃が高くって住むのには躊躇(ちゅうちょ)してしまう……。
宮田:豊島区はエリアにもよりますが、交通アクセスの良さと家賃を見たときに、比較的コスパがよいのではと。
小沢:急ピッチで保育園が増えていますよね。でも、豊島区は日本一の人口過密都市。新設園をつくるのも、かなり大変だったのでは?
宮田:そうなんです。土地が狭いから、園庭が作れない。でも、働きたいと思う方々のために、保育園は増やさなければいけない。
小沢:預ける親としても、できれば園庭が欲しいです。でも、保育園に入れなくて待機児童になってしまったら、結局家で育てるわけで。都心のマンションに庭、ないですからね。そこはトレードオフなのかなと思います。
宮田:園庭がない保育園から、公園にも次々と園児がお散歩に来るんですよ。だからこそ、今は公園の環境も整備しています。禁煙化や花壇に季節のお花を植えるとか、砂場もキレイにするとか。豊島区は全域で公園が約160か所もあり、その多くが小さな公園なんです。
小沢:そんなにあるんですね。
宮田:どうしても土地が密集しているので、大きな公園は少ないんですけどね。数は十分にあります。
豊島区が公園のトイレを整備している理由
小沢:そういえば、最近は公園にベビーカーで入れるキレイなトイレを設置していますよね。
宮田:「としまパブリックトイレプロジェクト」と称して、区内の公園のトイレを改修しています。その一部には、地域の園児や住民、アーティストと一緒に内壁や外壁にアートを施したアートトイレを作っています。
小沢:母親の立場でいうと、キッズチェアがあるトイレは多いけど、ベビーカーでそのまま入れるトイレって、商業施設の中でもまだまだ少ないんです。
オムツ替えできる場所もアプリで探したりして、子連れのおでかけにはかなり苦労しています。これだけ公園があるなら、そっちに駆け込めばなんとかなる。心強いですよ。
宮田:やっぱり、公園のトイレが暗くて汚いと、入りたくないですよね。
小沢:しかも、オストメイト(※がんや事故で人工肛門・人工膀胱になった人)にも対応になっています。身体に何らかの制約があって、お出掛けに不安を抱える人はたくさんいます。車椅子でも、子連れでも安心して使えるトイレが街にたくさんあるのは、うれしいことです。
宮田:いわゆる誰でもトイレですね。トイレ改修についてはキレイにする様子を住民の方にも見てもらいたかったのが、アートトイレのきっかけです。
散歩にきている保育園児たちに、「どんな絵がいい?」と聞いて、お絵かきをしてもらったんです。それをスキャン・レタッチしてデザイナーさんに渡して作ってもらいました。
小沢:街づくりの「結果」だけではなく、「プロセス」も住民に共有しているんですね。
宮田:本当は、バババッと進めて作ったほうが楽ではあるんです。でも愛着をもって使ってもらいたかったのでお絵かきをしてもらいました。この間、新しくなった公園トイレから女子高生が出てきたときは「若い女の子でも抵抗なく使えるようになったんだ」とうれしく思いました。
小沢:着々と「わたしらしく、暮らせるまち。」への取り組みが進んでいるんですね。
次回は、外資系企業から自治体職員へというキャリアチェンジを経験した、宮田さんの仕事観について伺います。
※第4回は9月7日(金)公開です。
(取材:小沢あや)
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情報元リンク: ウートピ
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