付き合いだからと自分を無理やり納得させてしぶしぶ行く飲み会、流行っているからなんとなく買ってしまった洋服——。
「なんか違うな」と思っても、義理やしがらみ、習慣に縛られて我慢したり、違和感をなかったことにしたりしているうちに、自分が本当に好きなことややりたいことがわからなくなってしまうことは誰にも思い当たることなのではないでしょうか。
「自分に正直に」ってどういうこと? 本来の自分を取り戻すには? このほど『「違うこと」をしないこと』(KADOKAWA)を上梓した、吉本さんに3回にわたってお話を伺いました。
自分の中の“違和感”を大事にしよう
——「本来の自分を生きるには、違うことをしないことが大切」という部分にすごく共感しました。「『違うこと』をしないこと」を書いたきっかけを教えてください。
吉本ばななさん(以下、吉本):子どものときから、人間は自分の中にあるセンサーで生きているわけですよね。例えば、ここでは働かないとか、ここに行きたいとか。
では、なぜ自分の中でセンサーが働いていることを何で判断できるかというと、違和感なんです。違和感だけしかないんです。
だから、仕事でも寒い中、薄着でも楽しい撮影もあるし、暖かくても居心地の悪い現場がある。人間って、自分の中でしかセンサーがないので、それを大事にしたほうがいいよって。
——「お付き合い」もあるから行ったほうがいいと頭ではわかっていても、気が進まないお誘いや仕事もあります。そういうときは断ったほうがいいのでしょうか?
吉本:やっぱり行くか行かないかの二択になっちゃっている時点で、頭で考えているような気がするんですよ。
——うう……確かに。
吉本:「行く」「行かない」ではなくて、行くけどこうするとか、行かないけどこういうふうにするとか、そのあたりにその人の大切な部分が出るような気がします。
——どういう意味ですか?
吉本:例えば、すごく柔らかい雰囲気で誰にでも優しそうな女性にビシッと断られたらガーンとショックを受けるでしょ?
逆に、例えば滝沢カレンさんみたいな人にキッパリ断られても「まあ、しょうがないな」とショックを受けないですよね。
そんな感じで、その人のキャラを活かして対応できれば、物事って意外に波立たないと思うんですよね。
自分のことがわからないのはセンサーを無視してきたから
——吉本さんも今まで「違うこと」をしちゃって失敗したり、後悔したりしたことはたくさんあるのでしょうか?
吉本:仕事ではやっぱりありますよ。私、わりとイタリアで仕事することが多いのですが、イタリア人ってものすごくめちゃくちゃなんですよね。
めちゃくちゃ時間に遅れて来たり、めちゃくちゃ急にテレビカメラ回したりとか、めちゃくちゃ密かに録音していたり。いろいろ“めちゃくちゃなこと”をするんです。
だからそのたびにこっちも面と向かって「何言ってるんだこの野郎!」とやりあっているうちに、「あ、いいんだ」って思うようになりました。日本だととてもできないですけれどね。
——自分にとって嫌なことを「嫌!」というのは当たり前のことだと頭ではわかっているつもりなのですが、難しいなって思います。日本だとどうしてもまわりや世間の目が気になってしまう人は多い気がします。
吉本:世間っていうものを私も感じますから、イタリアでやるほどにはバッチリはやらないけど、やっぱりその対応術というのは学んだ気がします。
——ウートピの読者は20〜40代の働く女性が中心なのですが「『自分に正直に』って言われても、よくわからない」「自分が何が好きなのかわからない」という声も多いです。
吉本:それはやっぱりセンサーを無視してきた結果なんだと思います。だから、ひとつずつセンサーを取り戻していけば、すぐには無理だけど、徐々に戻ってくるんじゃないかと思いますけどね。
——「センサーが鈍っているな」「流れが悪いなあ」と思ったときはどうしていますか?
吉本:何もしないというのが一番大切でしょうね。
——仕事をセーブしたりですか?
吉本:それもあるけど、衣替えはしない、とかね。そういうときって衣替えは失敗しますよね。理由は分からないけど、そんな気がします。間違ったものを捨てたり、間違ったものを残したりしちゃう。
——買い物もそうでしょうか。決断力というか、センサーが鈍っているということなんでしょうね。
吉本:そういうことでしょうね。本来の自分じゃない感覚がするというか。
(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
「違うこと」とは、“その人の生き方の中で、今ここでするべきではない”こと——。
吉本ばななさんが、かけがえのない自分の人生を生きるために大切なことをつづっています。白井剛史(プリミ恥部)さんやCHIEさんとの対談、吉本さんへのお悩み相談も収録。定価:1,512円(税込)。
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情報元リンク: ウートピ
吉本ばななさんから自分のことがわからない貴女へ「自分の中の“違和感”を大事にして」