コロナ禍や外出自粛とリモートワークでのストレスで下痢が続き、つらいことに痔も発症した……と嘆く読者がたくさんいらっしゃいます。そこで、大腸肛門病専門医・指導医で大阪肛門科診療所(大阪市中央区)の佐々木みのり副院長に連載にてお話を伺っています。これまで、ストレスで下痢をする理由や、下痢ではどの種類の痔になりやすいのか、気を付けたいトイレの習慣や姿勢などについて紹介しました。それらについて詳しくは次の記事を参考にしてください。
【第1回】ストレスで下痢と痔のダブルパンチ…どうすればいい?
【第2回】在宅座業、下痢、便秘で切れ痔…温水洗浄法と姿勢に注意! 【大腸肛門病専門医が教える】
今回は、痔はどれぐらいで治るのか、市販薬を使えばいいのか、受診のタイミング、また食事や運動など、セルフケアと予防法について伝授してもらいましょう。
下痢や便秘による切れ痔は自然に治りやすい
——痔になった場合、どうセルフケアすればいいのでしょうか。
佐々木医師: 下痢や便秘が原因と思われる場合は、3日~2週間で自然に痛みも出血もおさまります。当初の強い痛みや多い出血は1・2日で軽快するでしょう。市販の薬がたくさんありますが、軽快に向かった場合はとくに慌てて使用することもありません。
「市販薬が効いた」と言う人は多いのですが、それは痔が数日で治るものだからそう感じただけというケースが多いのです。使用して痛みや出血などの症状が良くなるのであれば、使用されたらよいでしょう。また、すぐに「手術しなくてはいけないの!?」などと焦る必要もありません。前回(第2回)でお話ししたトイレでの行動や、このあと紹介する生活習慣に気を付けて過ごしてください。
ただし、2・3日で軽快せずにだんだんと痛みが激しくなる、出血の量が増える場合は、違う病気が隠れているかもしれません。その場合は早めに肛門科を受診してください。
肛門のうっ血を改善するために立ち上がって運動を
——リモートワークで座る時間が増えています。日常生活で下痢や痔を予防する方法はありますか。
佐々木医師: デスクワーク中におしりがムズムズする、違和感があるなどのときにはすぐに立ち上がり、足や肩のストレッチやその場で足ふみ、かかとの上げ下げなど、軽い運動をしてください。また、痛みがつらい場合は、前回(第2回)でお伝えしたように、横向きに寝転んで少し休むとよいでしょう。痛みが軽快してくるはずです。
再発を予防するためにも、日ごろから痛みが出る前に、デスクワーク時は30~40分に1回はイスから立ち上がりましょう。すると肛門のうっ血を改善することができます。痔の改善や予防には、全身の血流を促して肛門部をうっ血させないことが重要です。
――デスクワークの際に、ドーナツ型のクッションを使って痛みを軽減している人が多いそうですが、適切でしょうか。
佐々木医師: NGです。患者さんの中にも真ん中がくりぬかれた形の座布団を使うという人は多いのですが、あれは洋式トイレと同じで肛門部が下がるのでうっ血しやすくなります。わざわざ使う必要はありません。座布団には、フラットな形状の低反発素材のタイプかいいでしょう。
下痢と痔の大敵は、お酒、香辛料、冷え
——そうでしたか。下痢や痔を改善、予防する方法を教えてください。
佐々木医師: 痔の予防にはなにより、日ごろから便通を整えることが最大のポイントになります。下痢や便秘気味のときは、自律神経のバランスが乱れていると考えられます。
これを機に、食物繊維が豊富な野菜や海藻類、豆類などに注目して栄養のバランスが整った食生活を送りましょう。朝食を抜くことは腸が活動しないため、最悪です。忙しくて食べる時間がないのであればスムージーや野菜ジュースなどでもいいので、何か摂取するようにして腸の蠕動(ぜんどう)運動を促しましょう。
それに、お酒の飲みすぎや香辛料の取りすぎは下痢と痔を起こしやすい要因になります。とくに症状があるときはとらないようにしましょう。
また、睡眠不足や運動不足を改善し、ストレスの原因を見つめて取り除くようにアクションを起こしましょう。普段から、ウォーキングや、室内でできるストレッチや筋トレ、ヨガなどを習慣にして血流や体温、代謝アップを意識してください。
さらに、冷えは下痢にも便秘にも痔にも大敵です。冷暖房を調節し、バスタイムにはシャワーだけですませずにお湯につかる、冷えているなと思うときは足湯をする、また、いぼ痔(第1回参照)の場合は、座浴と呼ぶ「おしりだけ洗面器に溜めた湯につける」という方法や、カイロ、腹まきで温めるなど工夫しましょう。
——下痢のときは内科に行けばいいですが、痔で受診するのは恥ずかしいと悩む人が多いようです。
佐々木医師: 診察は横向きで患部以外に布をかけて行う病院がほとんどです。また、当院もそうですが、女性専用の受付時間や待合室を設けている、女性医師が診察をする医院もあります。日本大腸肛門病学会のホームページで近隣の専門医を探し、その医院のホームページで詳細を確認する、また電話で気になることを遠慮なく問い合わせてください。
ライターによるまとめ
下痢や便秘による切れ痔なら自然に治りやすいこと、また座りっぱなしや運動不足、朝食抜き、お酒、香辛料、ドーナツ型クッション、冷えはNG、そして食事をはじめとする日常の生活習慣を改善しようということです。ぜひ実践して再発を予防したいものです。
(取材・文 品川緑/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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