肌に直接身に着ける衣類であり、からだを守る生活必需品でもある下着。20世紀初頭にポール・ポワレやシャネルがコルセットから女性を“解放“してより活動的にするなど、下着と女性の生き方は密接な関係があります。
最近、下着の記事などで目にすることの多い「ボディポジティブ」のムーブメントは、女性が自らのからだはもちろん、その存在を肯定し、前向きに生きようとのメッセージでもあります。
そんな女性の人生にとって大切な役割を果たす下着を通し、これから大人になっていく女の子たちを応援する活動をしている、2つのランジェリーブランドを紹介したいと思います。
「自分のからだを大切にして」ファーストブラを通じて伝えたい思い
まずは「女性の誇りや尊厳を考える」をブランドコンセプトとする「ナオランジェリー」。2019年に都内の児童養護施設にノンワイヤーブラとショーツを25セット、今年2月に同じくノンワイヤーのブラジャー14枚とショーツ28枚を寄贈しています。
この活動のきっかけは10年前。1984年生まれのオーナーデザイナーである栗原菜緒さんが「養育の会」に参加したことがきっかけです。そこは、児童養護施設に携わる人々が集い、そこで生活する子供たちとどう接するかを語ったり学んだりする場。当時、勤めていた会社の社長にすすめられて通い始めたそうです。
「女性より家長(男性)を大切に扱う旧家に生まれた私は、女性である自分は軽んじられていると思いながら育ち、常に心のどこかで愛情を欲していました。大人になってからも、自分の居場所がない、安心する場が欲しいと心の中で思っていた私に社長は気づき、その気持ちを癒やすきっかけになるのではないかと薦めてくれたんです」と栗原さんは当時を振り返ります。
「養育の会」はその後2年ほどでなくなったものの、子供の気持ちと自分の気持ちが重なり、ずっと力になれることはないかと考えていた栗原さんは、養護施設をサポートする女性と出会ったことを機に下着の寄贈を決意します。
「助成金や寄付で運営されている施設に入所している子供たちは、下着に使えるお金は年間5千円と定められており、ボロボロの下着をずっと着続けている子供も少なくないそうです。また、希望する進路に進めず夢を持てないことなどがきっかけで、自分を大切に扱えない女の子がいると聞き、危うさを感じました」
少女たちに出会った経験から「自分のことを大切にしてほしい。人の思いや手の温もりから生まれた下着を着けることが女の子たちには必要で、前向きに生きる一つのきっかけになる」との思いを強くしたそうです。
寄贈したのは、ファーストブラとしても使えるコットン素材のノンワイヤーブラとショーツ。日本の工場で丁寧に作られたこの下着を手にとった女の子が、自分の存在を気にかける大人の存在を感じ、大人の女性として健やかに成長することを栗原さんは願っています。
「生理を快適に過ごす選択肢を」経血吸収型ショーツを寄贈
次は、2015年の創業時より「下着を通して人々や社会へ幸せな選択肢を提供する 」「下着で性教育」というミッションを掲げ、さまざまな哲学・価値観を発信してきた「アルバージェ」。商品の売り上げの一部から、「ピリオド」の経血吸収型ショーツを購入し、今年3月に東京善意銀行を通じて都内の児童養護施設などに50枚を寄贈しました。
ディレクター兼デザイナーを務める高崎聖渚さんと、広報兼プロデューサーを務める織田愛美さんという、ともに1989年生まれの2人が2016年に立ち上げた「アルバージェ」。ランジェリーと性教育をつなげていくための「Lingerie for Education」プロジェクトをスタートさせ、今回はその第1弾となるアクション。今後も、物品寄贈だけでなく価値観発信による啓蒙(けいもう)活動や性教育を行う団体への寄付など、形や形式にこだわらず継続していく予定です。
あえて自社製品ではなく経血吸収型ショーツを寄贈したのは、「初潮期の段階で、生理を快適に過ごすための選択肢を増やしてほしい」との思いから。
寄贈に至った経緯を織田さんに聞くと、子供の頃のご自身の経験を話してくださいました。
「慕っていた“近所のすてきなお姉さん”が生理用品を入れたかわいいポーチを持ってトイレにいくのを見かけ、まだ生理を知らない私は不思議に思い尋ねたところ、笑顔で生理の話をしてくれ、タンポンやナプキンの存在もこのとき知りました。彼女のおかげで、私は生理への恐怖心を持たずに初潮を迎え、主体的に生理用品を選べることで比較的スムーズに性教育や生理そのものを受け入れることができました」。
「“フェムテック” “フェムケア”というワードが広まる一方で、実は経済格差によってそれらの製品や性教育にアクセスできない女の子たちがいるとの声を聞き、その格差是正の一助になるような企画を実行するに至りました」と織田さん。
そこには「アルバージェ」と「アルバージェ」を購入してくださったお客さまが、織田さんに生理のことを優しく教えてくれたお姉さんのような存在になれたら、という思いも。
活動にあたり行政へのヒアリングを行った結果、児童養護施設などでは性教育やフェムテック・フェムケア製品に関する情報を得るのが困難な環境であるとわかったことも背中を押したそうです。
東京善意銀行には今回の寄贈枚数をはるかに超える要望があり、この企画の必要性を改めて確信した同ブランドは、すでに次回の寄贈計画に向けて調整を始めています。
ともに30代の女性たちが手掛けるランジェリーブランドの活動。決して“多額”とはいえない利益の中でも社会に貢献する姿はとても頼もしく、私は自らの行動を省みるきっかけになりました。小さくても自分にできることは何か? 改めて考えたいと思います。
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