現在放送中のドラマ『恋はDeepに』(日本テレビ系)に出演している大谷亮平さん。
『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の風見涼太や、連続テレビ小説『まんぷく』の小野塚真一など、優しい人の役が印象的な大谷さんが今回演じているのは、綾野剛さん演じる蓮田倫太郎と対立する実兄の蓮田光太郎です。
今回の役への向き合い方や、現在の心境について話を伺いました。
「悪役に挑戦」という意識はない
——ドラマ『恋はDeepに』への出演は新鮮に感じられたそうですね。
大谷亮平さん(以下、大谷):はい。ラブコメのようなジャンルに出演する機会が少なく、わりとシリアスな作品が多かったので、新鮮でした。
——大谷さんが演じる光太郎は、倫太郎にとって敵対関係にあります。これまで “いい人”の役の印象が強かったので、“ヒール”な役も新鮮でした。
大谷:ありがとうございます。ただ、自分では光太郎のことを“悪いやつ”だと思っていなくて、特別に悪く見せようともしていないんです。これまでの放送分(編集部註:インタビュー時は5話まで放送)では弟の行動を邪魔するようなポジションなので、そう見えるかもしれないのですが、光太郎は光太郎の人生を生きているだけなんですよね。
——光太郎の人生を生きているだけ。
大谷:そうです。自分が信じる道、自分のやり方を貫き通した結果、見る人にとっては悪く見えるかもしれない。そんな感じです。僕は彼の行動には人間味があるなと感じていて。光太郎はずっと会社や仕事のことを第一に考えてきました。むしろそれしか選択肢がないと思っていた。そこに自分にとって脅威となるかもしれない存在が現れたら、正しいかどうかは別として、相手より先に成功を手にしようと焦ったり、邪魔をしてしまったりするのは人間ならば考えられる行動だと思います。仕事で切羽詰まったときや、とあるシチュエーションではそうなっていくこともあるよね、と。だから僕は光太郎を単純な“悪い人”にはしたくなくて、彼なりの生き方、考え方に思いを馳せながら演じました。
細部にまで情熱を持つふたりとの共演
——綾野さん、石原さんとの共演はいかがでしたか?
大谷:おふたりに共通していると感じたのは、作品にかける熱量です。言葉にすると、一見当たり前なのですが……。近くで見ていて、細部に込める思い、魂のようなものをとても感じました。主演なので、僕らよりもずっと出番があって、何シーンも撮るのですが、このシーンはパッと終わるだろうという場面にもこだわる。なんとなくでは済ませない人たちなんです。ふたりの熱量を受けて、僕自身も引き出されていく感覚がありました。
特に綾野さんとは、バチバチするようなシーンが多かったので、気持ちを受け取って、返して……というやりとりが面白かったです。綾野さんが演じると倫太郎はこんなふうに怒って、こんなふうにぶつかってくるんだって。芝居では怒るとか叫ぶという表現がよくあるのですが、人によってアプローチが全然違うんですよ。誰がキャッチするかによっても、全く違うものになります。そこがこの仕事の楽しいところで、やりがいだと僕は思っているんです。
失敗が糧になるとはわかっているけれど…
——著書の『日本人俳優』や過去のインタビューなどを拝見するとたびたび「自信がない」とおっしゃっていて、意外な感じがしました。今年は大河ドラマ『青天を衝け』にも出演されましたよね。何か「自信」に関して変化はありましたか?
大谷:意外ですか?(笑)
——韓国でのキャリアもありますし、日本に拠点を移してからも多くの話題作に出演されているので、外側から見ると順調なステップアップなのかな、と。
大谷:自信は今もないですよ。周りに「こうだよ」「ああだよ」と言われると、そうなのかな? と流されてしまうことも多いですし。その結果、自分の直感を信じるべきだったなと思うことも多いです。失敗することだって怖いし……。だけど、今になって思うのは「若いときにもっと恥をかいておけばよかった」ということ。失敗してこなかったことを後悔しているんです。
——たとえば、どのような失敗が必要だったと思いますか?
大谷:仕事に関しては、演技で複数のプランが浮かんでも、安全なほうを選択してきたことがすごく歯がゆいです。ちょっとリスクを負ってでも挑戦を選んでいれば、その経験が自分のものになって、引き出しがもっと増えたのではないかと。恥をかくことを恐れて“セオリーどおり”にしてきたので、そこから外れたときどうなるのかイメージできないんですよ。蓄えがある感じがしない……というのが厄介だなと今はとても感じています。
——それは、今からでも遅くないのでは?
大谷:そうですね。でもやっぱり、年齢を重ねるほど失敗ってしづらいし、周りのことも意識してしまうし。いざその状況におかれるとなかなか……。自分のそういうところがイヤなんですけどね(苦笑)。
——たしかに、失敗はしなくて済むならしたくないです。人に励まされても勇気が出ないというか。
大谷:「大丈夫だよ」「自信持って」と言われても、結局は本人の問題なので。勇気を出すには「今それを引き受けないと、また10年後に後悔するぞ」と自分で自分に打ち勝っていくしかないのかな、と思います。
■作品情報
日本テレビ系 水曜ドラマ『恋はDeepに』 毎週水曜よる10時放送中
(スタイリスト:伊藤 省吾(sitor)、ヘアメイク:堤 紗也香)
(取材・文:安次富陽子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
『恋はDeepに』大谷亮平 「今でも自信はないけれど…」