「世界幸福度報告」の幸福度ランキングで2018、19年と2年連続で1位を獲得したフィンランド。“世界一幸せな国”の秘密を仕事や日常という視点から探った『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ社)が1月10日に発売されました。
フィンランドと言えば、昨年12月に34歳の世界最年少の女性首相が誕生したことも話題に。フィンランドに学ぶ女性活躍について聞いた前編に引き続き、後編ではフィンランドに学ぶ働き方について、著者の堀内都喜子(ほりうち・ときこ)さんに伺いました。
日本人と似ている? フィンランドの国民性
——本を読んで、すぐに制度など大きな部分を変えるのは時間もかかるし個人の力では難しいかもしれないけれど、日常や職場での小さなこと、例えば「やたらにメールにCCを入れない」などはすぐに取り入れられていいなあと思いました。
堀内都喜子さん(以下、堀内)ありがとうございます。この本を執筆する際に、国の制度とかスケールが大きくなってしまうと「国が違うし」「人口も違うし」「環境も違うし」とか思っちゃうけれど、実はちょっとした考え方ややり方で「私もできるかも」という発見があるといいですね、と担当さんと話していたんです。
私も普段はフィンランド大使館勤務でフィンランドにどっぷり浸かっているとフィンランド流が当たり前すぎて何も思わないのですが、改めて考えてピックアップしていくといろいろあるのかなと思いました。
——「フィンランドでは〜」「外国では〜」と言うと“出羽守(でわのかみ)”と揶揄(やゆ)されることもありますが、せっかくほかでうまくいっている事例があればどんどん自分や自分の生活に取り入れればいいのにと思います。取り入れてダメだったらやめればいいだけなので。
堀内:ムーミンやマリメッコ、映画『かもめ食堂』などのおかげでフィンランドも日本人にとってだいぶ身近になったと思うのですが、国民性が意外に日本人のメンタリティと似ているんです。自然に対する気持ちやシンプルな生活を望むところとか。あとちょっとシャイでコミュニケーション下手なところも似ていて心地がいいんですよね。
CCはなるべく使わない
——この記事を読んでいる読者には働いている人も多いと思います。すぐに真似できるフィンランドの働き方について3つ、教えてください。
堀内:すぐに実践できるかどうかは微妙なところなのですが、まず働き方で「いいなあ」と思うのは、できるだけフラットな組織をつくっているところですね。
——本でも触れられていましたね。フラットな組織とは?
堀内:まず大前提として、変にヒエラルキーをつくらない。上司であっても部下であっても取りあえず何でも聞ける間柄というか、何でも話しやすい関係性を築いているので風通しが良くてリラックスして仕事ができます。
本に書いたように「ファーストネームで呼び合う」というのは日本では難しいかもしれませんが、例えば先ほどの「メールのCCに入れない」というのは、上司は部下を信じて仕事を任せているからなんです。もちろん何かあったり、悩みや迷うことがあったりした場合は直接相談に来てくれていいけれど、すべてに伺いを立てる必要はないよ、と。部下を管理するという発想がないんです。
もし後輩や部下がいる人は「CCに入れなくてもいいよ」と言ってみてもよいかもしれません。前編でもお話しましたが、任されたほうは期待に応えようと気合も入りますし、そんな風潮が政治にも感じられます。
——そういえば「おつなぎ」文化もあまりないそうですね。
堀内:そうですね、日本ではある人と知り合いたい、連絡を取りたいという場合、人に仲介を頼んで近づくことが多いですが、フィンランドでは「連絡先が分かっているのならどうぞ直接連絡を取ってください」というスタンスです。直接連絡が取ったほうが時間の無駄にならないのでいいと思います。
2週間の休みを取ってみる
堀内:二つ目も簡単にできるかどうかが分からないのですが、ぜひおすすめしたいのが「思い切って2週間の休みを取ってみる」でしょうか。フィンランド人は1カ月の休みを取るのですが、休み明けの生産性がまるで違います。それに2週間は意外にあっという間です。一回取ってみると意外に「取りづらい」ということはないかもしれません。
——祝日と有給を組み合わせれば日本でも何とかなりそうですね。
必ずしも「会うこと」を重視しない
堀内:三つ目は「会うことを重視しない」でしょうか。仕事で相手と会うとどうしても30分や1時間は取られるので、電話で済むことは電話で、メールで済むことはメールで済ませる。就業時間内で仕事を終わらせようとすると平日の30分や1時間は結構大きいですよね。もちろん顔を合わせて良いことはたくさんあるとは思いますが、1回会えばいいかなという感じですね。
仕事だけではなくプライベートのお付き合いでも、家に招いたり招かれたりということがあるのですが、歓迎の料理でおもてなしということはあまりないですね。意外にあっさりしていて、コーヒーや紅茶にちょっとしたお菓子だけ出して終わりです。
もちろん、料理や歓待するのが好きな人はいいと思うのですが、気を使って使われてという関係や人間関係に疲れやすいという人はシンプルさを見習ってみてもいいのかもしれません。豪勢なおもてなしよりも、気軽な雰囲気で会話を楽しむことのほうがお互い心地いいと思います。
【前編】34歳の女性首相誕生のフィンランドに学ぶ「女性活躍」
(取材・文:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:矢野智美)
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情報元リンク: ウートピ
「CCは入れない」「無理に会おうとしない」…フィンランドから学ぶ働き方のヒント