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「澄んだ空を見上げて終わる」それだけを決めていた。映画『真実』について【是枝裕和】

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映画『万引き家族』で昨年、カンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)に輝いた是枝裕和監督による最新作『真実』が10月11日(金)に公開されました。是枝監督初の国際共同製作で、世界的な仏女優のカトリーヌ・ドヌーヴさんが主演を務め、娘役をジュリエット・ビノシュさん、その夫役をイーサン・ホークさんが演じています。

映画は、国民的大女優のファビエンヌ(ドヌーヴさん)と、その娘で“女優になれなかった”リュミール(ビノシュさん)の母と娘のストーリーで、ファビエンヌがそれまでの女優人生の集大成として自伝本『真実』を出版したことから物語は始まります。

日本国内のみならず、世界からも注目を浴びている是枝監督に話を聞きました。

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映画『真実』メインビジュアル(C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

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澄んだ空を見上げて終わることを決めていた

——『万引き家族』はジメッとした夏の描写が印象的でした。『真実』は全体的な軽やかなトーンでカラッとした印象を受けたのですが、秋のパリを舞台にした理由は?

是枝裕和監督(以下、是枝):湿度は大事ですよね。今回は、最初から秋の話だなと思っていました。湿度の低い、澄んだ空を見上げて終わるということだけ決めていました。

家族を描くことにこだわっているわけではない

——「母と娘」をテーマにした理由は?

是枝:テーマを「母と娘」に設定したというよりは、もともとの構想が女優の楽屋を舞台にした話だったんです。年を重ねる主人公と、若くして死んでしまい、もう年を取ることはないライバルの存在という構図を考えました。

でも、「2人」というのは不安定で「3人」の三角形のほうが安定するんです。そう考えたときに、母親のもとで女優になりそこなった娘で、彼女は主人公のライバルと仲がいいという構図を思いつきました。その途端、三者が立体的になった。母と娘を描こうとしたというよりは、そんな出発点です。

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——前作の『万引き家族』もそうですが、“家族”を描くことにこだわっているのでしょうか?

是枝:それはないです。今回はリュミールをどう描くかにこだわりました。ファビエンヌが主人公に見えるのですが、実はこの物語で一番変わるのはリュミール。リュミールを変えていくために、どういう人間がどんなふうに配置されるのがいいかを考えると、夫や娘がいたほうが都合がいいんですね。娘である、母である、妻である顔を多面的に演じ分けられる描写のためには家族がいたほうがいい。

限られた空間の中で人物やストーリーを立体的に描こうとしたときに、ファミリードラマは人物が担う役割があって、その役割ごとに違う顔を見せられるので都合がいいんです。

複雑なものを複雑に描く

——人間の多面的な顔を描きたいということでしょうか?

是枝:(しばらくの沈黙)……複雑なものを複雑に、単純化せずに描ければなあと思っています。

成長して獲得する話はたくさんある。努力して成長して獲得して幸せになる話。でも、実人生って必ずしもそういうものではない。喪失して成長することもあるし、成功して失うものもある。物事には必ず裏と表、陰と陽があるものだから。「陽!陽!陽!ハッピー!!」というわけにはならないし、そういうものが好きなんでしょうね。

——映画『真実』の構想から製作の日々について綴った『こんな雨の日に 映画「真実」をめぐるいくつかのこと』(文藝春秋)も発売されました。

そこには「にもかかわらず、どうしてもこの映画を讃歌にしたいと強くこだわったのは、そうこだわることで自分が希林さんという映画作りのパートナーを失った喪失感に引っ張られないでいたいという、そんな気持ちからだったのだろうと、1年経った今気づいた」と綴られていました。その心の動きの部分を改めて伺いたいです。

是枝:やっぱりあれだけ一緒に作品を作ってきた人を亡くしたので、自分の気持ちを持ち上げる意味もありました。それは本に書いた通りで、書かれていることが全てです。ぜひ、読んで下さい(笑)。

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映画『真実』
10月11日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和 
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク/リュディヴィーヌ・サニエ 
撮影:エリック・ゴーティエ
配給:ギャガ (C)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA
公式サイト:gaga.ne.jp/shinjitsu/

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

情報元リンク: ウートピ
「澄んだ空を見上げて終わる」それだけを決めていた。映画『真実』について【是枝裕和】

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