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「料金設定は妥協しない」レズ風俗の店長が目指す誰も損しない仕組み

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新卒で入社したベンチャー企業で体調不良が続き、試用期間の3ヶ月でクビになってしまった橘 みつさん。銀座の高級クラブ、デパートの販売員などのアルバイトを経て、レズ風俗の世界に飛び込み、2018年に24歳で対話型レズ風俗店「Relieve」(以下、リリーヴ)を立ち上げます。

現在は同店のオーナー兼キャストとして働きながら、今年の5月には自身の半生をつづった『レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話』(河出書房新社)を上梓しました。

橘さんにこれまでのキャリアや、現在のお仕事、そしてレズ風俗の現状について話を聞きました。橘さんのキャリアについて伺った前回に続く、第2回は、「対話型のレズ風俗店ってどんなところなの?」という気になる疑問について聞きました。

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初めてレズ風俗を体験して気づいたこと

——橘さんは、レズ風俗のキャストとして働きだす前に他店に客として行っています。初めてサービスを受けた感想はいかがでしたか?

橘みつさん(以下、橘):初めてサービスを利用して気づいたのは、自分がお客さんのはずなのに、私は相手を楽しませようと頑張ってしまうんだなということでした。それまで一度も性的なサービスを受けた経験がなかったので、新しい自分を見た気がしました。

また、お金を払って利用しているはずなのに、「申し訳ない」と思ってしまう感覚を経験できたのはよかったなと思っています。お客さんの戸惑う気持ち、そしてそれを解消するプロとしての在り方を学ぶことができましたね。

——セックスは、コミュニケーションの要素も強いですよね。「快楽だけをいただきます」みたいにはなりにくいのかも。

橘:そうですね。私が運営するレズ風俗店リリーヴは「対話型」と掲げて、お客さんとのコミュニケーションを大切にしていることをいちばんに発信しています。

たとえば、私はサービス前に「どうして今日はレズ風俗を利用しようと思ったんですか?」と必ず聞くようにしています。この質問はリリーヴをはじめる前、他店に在籍していた頃から続けていて、背景を知っているかどうかで、時間のつくりあげ方が変わるんじゃないかなって。

「対話型」としたのは、性的な行為だけを提供する場所にしたくないという思いもあります。私たちの仕事って、裸の自分をさらけ出した状態で、お客さんの深い悩みや欲望に触れることができる。キャストとの対話を通じて、一人きりで抱えていた悩みをほどくことも可能なんじゃないかと思いました。

「ギラギラ」していない風俗を目指す

——お客さんが安心して悩みを打ち明けられる状態をつくるために、なにか工夫していることはありますか?

橘:キャストを選ぶところから、そのキャストの「人となり」を感じてもらえるようにしました。たとえばホームページのキャスト紹介には、バストやヒップを強調した写真や、「フェムです、タチです」といったプレイスタイル、性感帯などは載せていません。その代わり、性格とか好きなこと、得意なことなどがわかるようになっています。

リリーヴのHPより

リリーヴのHPより

橘:私自身がそうだったのですが、プレイスタイルや容姿だけでは「その人に会いたい」と判断しにくい。これから会う相手がどんなことを考えている人なのか、どんな性格の人なのか知りたいなと思ったんです。

——プレイ内容がバシッと決まっていたら、カタログから選ぶみたいに決めることもできそうですが、人となりが多少見えると安心かも。

橘:女性向けの風俗店のほとんどは、男性向けの風俗店の経営経験のある人が多いので、どうしても肌の露出が多くて、性的表現が過激なギラギラしたホームページになる傾向があります。最近は少しずつ、落ち着いた感じにはなってきましたが。

——リリーヴのホームページはリラクゼーションサロンみたいですよね。

リリーヴのHPより

リリーヴのHPより

橘:キャストのカタログのようなホームページにしてしまうと、お客さんが「私はこれから人を選んで、買う」みたいな気持ちになるのではないかと思ったんです。実際は「人の時間を買う」だけだし、罪悪感を抱く必要は全くないんですけどね。

そういう罪悪感がお客さんの「レズ風俗を利用して、自分を変えてみたい」というきっかけを損ねてしまうのはすごくもったいない。なるべく気持ちを押し込めなくてすむような入り口づくりを心がけました。

お金をもらうのは、「相手の言いなりになること」じゃない

——他にリリーヴの経営で気をつけていることはありますか?

橘:お店に関わる人が誰一人として損をしていない状態というのはかなり意識しています。お客さんはもちろん、キャストも私自身も。

——損をしない。私の偏見かもしれませんが、性サービスと搾取ってセットで語られることも多いですよね。

橘:そうですね。実際に性サービスにおける搾取の問題は根深いです。貧困に陥った女性のセーフティーネットとして機能させられてしまっている側面がないとは言いきれませんし……。

値崩れが起これば、容姿やスペックで差がつき、選ばれない人はよりきつくて危険なことをしなければ稼げないという危うい面もあります。もちろんそういった業者ばかりではないですが、リリーヴはそういう場所にしたくなくて。

——具体的にはどんなことに気をつけているんですか?

橘:サービスの価格を決めるときに他店と足並みを揃えたり、無理に値段を下げたりしないようにしています。キャストへのバック率も、SNSでの営業活動も含めて頑張り損にならないように。私も働いた分はしっかりと稼げるように気をつけています。

お金をもらっているのでサービスの範囲で、キャストはプロとして相手に合わせる必要があります。でも自分の安全が脅かされたり、過度に精神が削られたりするようなことがあれば、我慢しなくていいと思っています。

——たしかに。

橘:そもそもお金は「自己主張の度合いを下げる」ための機能だけしかないと思っていて。たとえば「今日何食べたい?」とお客さんに聞かれたとき、私はそのお客さんの好みを想像していくつかピックアップして伝えます。それが「接客」ですよね。

でも、プライベートで友達に「今日何食べたい?」と聞かれれば、正直に私が食べたいものを答えます。

そんなふうにお金には「相手を軸に考えるか、自分を軸に考えるかの割合の差」を生み出す機能しかないと思っていて。「お金を払っているのだから、何でも言うことを聞くのは当たり前」っていうのは明らかにラインオーバーですよね。

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心がけているのは率直さ

——お客さんの言うことを聞きすぎてすり減っている全てのサービス業の人に伝えたいです……。

橘:あとは、率直さを大切にするのも「誰一人として損をしない」ための一つかなって。

——率直さ?

橘:もし、お客さんに嫌だなと感じることをされた場合は、こちらの気持ちを伝えるようにしています。キャストが直接お客さんに言うのは難しいので、私が間に入って「お店からお客さんに伝える」という形をとって。

——逆クレーム、届いたら最初はショックかも……。

橘:丁寧にお伝えしても、それが受け入れられないと判断されたときには、もうリリーヴとご縁がなかったんだなと。でも、この形が必ずしもお客さんにとって「悪いこと」ではないと、あるお客さんに教えてもらいました。

先日、あるお客さんにキャストの声を伝えたところ、「言ってくれてありがとう」と返してくれたんです。「リリーヴはそういう意見を率直に伝えてくれるからこそ、安心して遊んでいられる。なんか嫌なことをキャストにしちゃってないかなって気にしなくて済むから」って。

お互いが率直であるからこそ、一緒によりよい時間をつくりあげられるのだとそのお客さんに教えてもらった気がしましたね。

——話が飛躍しちゃうんですけど、生理のときってどうしているんですか? それも正直に伝えている?

橘:そこは事前にお客様と相談してやっています。タンポンを入れた入浴も、キャストが可能でお客さんも気にしなければありですし、どうしてもしんどいときにはこちらから「すみませんが」とリスケをお願いすることもあります。

——お客さんが思いがけないタイミングで生理になった場合は?

橘:5000円の前金をいただく代わりに「理由を問わず1回だけリスケできます」という仕組みを今年の6月から導入しました。コロナウイルス蔓延の影響でそうしたのですが、変更できるとなれば、体調が悪いのに無理して来る必要もなくなるので、遠慮なくリスケしていただければ。互いにいい時間を作ることを目指せればと思います。

最終回は7月29日(水)公開予定です。
(構成:岡本実希、撮影:大澤妹、聞き手、編集:安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
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