そろそろ“ちゃんと”しなきゃと思うお金のコト。けれど、老後に必要なのは何千万円と言われてもピンとこない。そもそもそこまで貯めるのに何年かかるのかわからないし、自分のキャリアも安定とは言えない——。そもそも、お給料は趣味や美味しいものを食べるため、自分の暮らしを快適にするために「使いたい!」と思う人も少なくないのでは?
2019年3月に発売された『一生楽しく浪費するためのお金の話』(イースト・プレス)の著者のひとり、ファイナンシャルプランナーの篠田尚子(しのだ・しょうこ)さんは「使う人ほど貯められる」と話します。ウートピではその理由や、これからお金のことについて考えたいという人に向けてのアドバイスを全6回にわたって紹介します。
第3回は、「お金を増やすための意識改革」についてアドバイスしていただきました。
現状のお金の流れを知り、見直す
——貯金は30代からでも遅くないという言葉にちょっと安心しましたが、そもそも書籍のタイトルにもあるように、楽しく浪費しながら、お金を貯める・増やすことって、本当にできるのでしょうか?
篠田尚子さん(以下、篠田):もちろん、できます。そのためには、実践可能な「貯める・増やす仕組みづくり」が必要です。まずはざっくりとした支出を書き出し、給与明細を確認して、現状を把握することから始めましょう。
そういうと、みなさん「結局、節約でしょう。娯楽費を削れって言うんでしょう」と思われるかもしれませんが、支出の優先順位は自分で決めるもの。FPなどお金のプロが一般的な見方で「ここはムダ、真っ先に削るべき部分」と思ったとしても、本人にとっては「いやいや、そこは……」ということは多々あります。プライオリティが高いのが趣味に使うお金なら、そこを確保したうえで他を見直せばいいんです。
——たとえば、どういった部分ですか?
篠田:民間の保険会社で加入している保険料。本書のアンケートでも7割近くの方が保険に加入しているという回答でしたが、手厚すぎる保険に加入していたり、公的保険でまかなえるのに民間保険でも二重に加入していたりするケースは少なくありません。公的保険というのは、毎月お給料から天引きされている健康保険のことです。
——給与明細は手取り以外見ないという人は多いと思いますが、強制的に控除されている部分ですね。
篠田:はい。実は日本の会社員は諸外国と比べても、健康保険や厚生年金など、社会保障で手厚く守られています。まずは公的な保障でどこまでカバーされるのかを把握し、それでもまかなえない部分は民間保険でカバーするという手順が必要です。
民間保険の場合、内容が手厚ければ当然保険料も高くなります。まだ収入が安定していない20代〜30代前半の人の場合、そこから多額の保険料を支払っていたらもったいない。遺伝的なことで健康に不安があるなど特別な事情がない限り、手厚い民間保険はおすすめしません。今の自分に本当に必要な内容と金額なのか、加入している保険料の負担を見直してみてください。
——見直した結果、解約したり保険料が安くなったりすれば、その分を貯金に回すこともできるということですね。厚生年金については、年金が受け取れなくなるというマイナス面ばかりクローズアップされていますが。
篠田:たしかに、受給年齢は上がるかもしれませんが、支払われないということはありません。年金は最低限の生活を保障してくれる大切な社会の仕組み。もちろん、プラスアルファの備えは必要ですが、老後資金として必要だと言われている3000万円をゼロから貯めるのではないと思うと、少しは安心材料になりませんか?
つまり、会社員であれば自動的にお給料から天引きされている社会保障で老後資金の何割かはすでに確保できているんです。ちなみに、受け取れる年金額は、毎年誕生日に送られてくる「ねんきん定期便」で確認することができます。
貯めたお金を増やす
——たしかに、3000万円を全額貯金で賄うと思うと暗澹たる気持ちになりますが、そうではないんですね。それに、一般的には娯楽費<保険料という優先順位が当たり前で、娯楽費を優先すると後ろめたい気持ちになりがちですが、ムダに支払っている部分を洗い出すと考えると、ポジティブにお金と向き合えそうな気がします。
篠田:何事にもポジティブは大切ですよね。そこで、もうひとつ重要なポジティブ思考への変換をお教えします。これからの時代は貯めるだけでなく「増やす意識」が必要ということです。
収入はアップしないけど子どもにかかるお金はどんどん増えるなど、現状維持かマイナスになることを前提にするのが基本的なFPの考え方です。ですから、とにかく削れるところは削って貯金に回しましょうという節約メインの考えになっていきます。
しかし、現状維持の意識は危険です。なぜなら、今後消費税も上がり、物価もどんどん上がっていきます。現在、年収200万円で生活している人が、10年後も200万円で生活できるかといえば、それは難しい。ですから、収入アップも含めて貯めたお金を運用して増やしていくといった、ポジティブ路線に考え方をシフトしていく必要があります。
——そのためにも、前回のお話にあったような自己投資が必要ということなんですね。
篠田:その通りです。私はライブ、フェス、コンサート参戦が趣味ですが、チケットの価格もじわりじわりと上がっています。電子決済が当たり前になってきて、企業側の設備投資を考えると、その分手数料などの名目でチケット代が上がるのは仕方のないことです。今後も物価が上がっていくことしか考えられない中で、給料だけがそのままだとやはり浪費を続けていくのは難しくなります。
劇団雌猫のみなさんの話で印象的だったのが、「みんなでずっと浪費したい。仲間が離脱するのを防ぎたい。お金の不安で離脱してほしくないから、みんなで楽しく浪費を続けるためにはどうしたらいいか教えてほしい」という言葉でした。
そのためには、変わり続ける社会や周囲の環境に対して敏感になることです。世の中は以前に比べてこう変わってきているし、今後はこう変わっていく、それを理解したうえで収入アップの方法や、貯めたお金を増やしていく方法を考え実践していきましょう。
Point
支出の優先順位は自分で決める
無駄な保険に入っていないか見直す
貯めるだけでなく増やす意識を持つ
※次回は6月4日(火)公開予定です
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情報元リンク: ウートピ
「支出の優先順位は自分で決める」お金を増やすための意識改革