コラムニストの桐谷ヨウさんによる新連載「なーに考えてるの?」がスタートしました。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第17回目のテーマは「R=Radio(ラジオ)」です。
ラジオは良質な雑談
ラジオは独特の文化だなぁと感じる。
正直、時代から取り残されたメディアだと思うし、動画にくらべて情報量だって少ない。それなのに一定数のファンが確実にいて、なくなったら惜しまれるメディアの筆頭であろう。また、リスナーが持つ親近感はテレビと比べものにならないくらい高いと言われている。ハガキ職人って存在も面白いですよね。
俺の場合は、ラジオが好きなのか、苦手なのか、微妙なところである。たまにラジオを聞いてみると、平和に話しかけてくれる安堵感が気持ちいいとは感じる。だけど、自分のペースで楽しめないのですぐにかったるくなる。だから生活にラジオが馴染んでいるわけではない。
ただ、それなのにインターネットで文章を書く際に、ラジオをお手本としている自分がいる。
たしか6、7年前くらいからインターネットで見かける文章に飽きてしまって、辟易とすることがとても増えた。そして、当時は自分もバズ狙いの文章を書いていた頃で、演説のような気持ちで書いていることが多く、それにも飽きていたのだ。読み手としても、書き手としても、Wで飽きている。地獄である。
なんかお手本になるものはないかなー、と考える期間がけっこう長かった。
最終的に出た結論としては、「ラジオのように心地いいおしゃべりを聞かせてくれる文章」と「飲み屋で知り合った面白いオッチャンに聞かせてもらう話のようなおもしろうっとおしい文章」が、自分のいまの気分ということだった。
そう、インターネットでスカスカのまとめサイトが増えたり、何かを過剰に煽(あお)ったり、怒ったりする語気の強い文章が蔓延(まんえん)するようになってから、「良質な雑談」がインターネットにもっとあってほしいと思うようになったのである。そのお手本がラジオであり、書き手とはパーソナリティのようであるべきなんじゃないかなぁ、というのが俺の考えなのである。ちなみにドラマになってしまいますが、『大豆田とわ子と三人の元夫』はそんな感じで最高でした。
ラジオ的を具体的に語れるほど、ラジオのことを知っているわけじゃありません。だけど、なんかあるテーマについて、たまたま聞いているリスナーに対しても、連帯感を持ってくれている固定ファンリスナーに対しても、ふんわりと、それでいてパーソナリティの個性を発揮しながら、同じ時間を共有して、なんとなく楽しい気持ちで解散する。そういうイメージなのです。
なんとなく楽しい気持ち、というのはポジティブであれば、それだけで良い。どこにでもある話のようで、なんか自分なりの気づきがあった! とか、知ってるだけで得することができそう! とか、もうその人の声(文章)にふれているだけであったかい気持ちになれる……みたいなことです。
そういうラジオのような文章、もっともっと増えていってほしいんですよね。
YouTubeはラジオ感覚で流しておく
さて、ラジオとテクノロジーについても雑感を残しておきたいと思う。
やっぱりRadikoはありがたいですよね。リアルタイムじゃなくても、ラジオ番組を聞くことができる。年に数回しかラジオを聞かない自分でも、たまに聞くことができるのはこのサービスのおかげ。
いまの流行りはVoicyだろうか。いろいろなインフルエンサーが収録型のミニラジオとして利用をしていて、チャプターごとに細切れで聞ける感覚がなかなか楽しい。もっといろんな人がやってくれたら良いのになぁと思う。
あとはPodcast。はやりそうではやらない代表格ですが、長く続いている番組はやっぱりプロとアマチュアの境目が良い意味でないことを教えてくれて、聞き応えがあってすごく面白い。
そしてYouTube。ここ数年で俺もYouTubeを使うことが増えたのですが、動画を見るというよりは、ラジオ感覚で使っています。実は広告を解除して、バックグラウド再生ができるようにプレミアム会員になっているくらいです。ずっと動画で見る気にはなれないのですが、音声情報として聞いている分には、なんかラクなんですよね。
視覚、聴覚…自分が得意な感覚は?
最後に、音声と情報収集の関係について。
人間は優位性を持った感覚器に個人差があるようである。VAK=視覚(Visual) ・聴覚(Auditory)・ 触覚(Kinesthetic)のどれが強いかは、人それぞれらしい。同様に、何で学習するのが頭に入りやすいか? というのも個人差があるようだ。
そういう意味で言うと、自分は「聞き学」が下手くそである。情報が脳みそを通過せずに、素通りしていく。
学生時代から授業で聞いたことはすぐに忘れてしまうし、社会人になってからオーディオブックで勉強しようと思っても右から左にすり抜けていくし、妻と同じテレビを見ていても「えっ? そんなこと言ってた?」と思うことがしばしばである。要は、聴覚優位の体感覚ではないのだ。これがラジオにハマりきらない要因なのだろう。
自分がどの体感覚に優位性を持っているかは、ぜひ意識して、見つけてみてほしい。
別に学習という視点でなくても良い。自分が敏感な体感覚は、良質のものにふれると身体が喜ぶ。倍音が魅力的な声、癒されるビジュアル、モッフモフのクッション。なにが身体を喜ばせるものなのかは、あなたにしか分からない。そういった自分の体が喜ぶものを生活に取り入れてみてほしい。きっともっと人生が楽しくなり、ずっと安らげるはずである。
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