頭痛は、ズキズキする、重だるい、肩こりやめまいをともなうなど、原因や体調によって症状の現れ方が違います。
漢方専門医で臨床内科専門医でもある吉田クリニック(大阪府八尾市)の吉田裕彦院長によると、「原因がほかの疾患ではない場合の慢性頭痛では、痛み方や頭痛にともなう不調や体質を見つめてケアする必要があります。肩こりやめまい、冷えなど複数の症状がともなうならば、漢方薬を試すという選択肢もあります」ということです。
そこで、漢方薬でのケア法について聞いてみました。
「気・血(けつ)・水(すい)」に注目する
はじめに吉田医師は、漢方医学での頭痛の原因について、次の説明をします。
「自律神経のバランスが乱れると疲れやストレスが溜まり、頭痛やめまいなどの不調、体温調節がうまくいかないなどの多様な症状が現れます。自律神経のバランスの乱れは、漢方医学では体を構成する要素の『気・血・水(き・けつ・すい)』のいずれか、もしくはすべてのめぐりの停滞だととらえることがあります。
『気』とは生命活動のエネルギーを表す元気のもとであり、『血(けつ)』はおもに血液を、『水(すい)』は水分やリンパ液など血液以外の体液全般を表します。心身の健康はこの3つの要素がバランスよく循環して保たれ、循環が悪くなると心身に不調が現れると考えます。頭痛や肩こり、めまい、冷えもそのひとつで、複数の不調が影響を及ぼし合うと診てケアをしていきます」
漢方薬は心身の全体の状態を見つめて選ぶ
次に、漢方薬の特徴について吉田医師は、こう説明を続けます。
「西洋医薬の場合、頭痛をケアするにはまず、痛み止めを用います。同時に吐き気やめまいがあるときはそれぞれ別の適した薬を処方します。
頭痛では、くり返しますが、肩こりや首のこり、また、めまいや立ちくらみなどの不調がともなうことがあり、その原因がよくわからない慢性頭痛のほか、風邪、疲労、月経トラブル、冷えなどの場合があります。漢方薬は西洋医薬とは違い、頭痛という主な症状だけでなく、自分の体力や体格、またほかの症状など、そのときの心身の全体の状態から考えてひとつの薬を選びます。」
ドラッグストアで漢方薬のパッケージをあれこれ見ていると、たしかに体格やほかの症状についても説明が記されています。ここで吉田医師に、頭痛のケアのための漢方薬を具体的に教えてもらいましょう。
●呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
体力が中等度以下で、肩こり、冷え、吐き気やおう吐、手足の冷え、胃もたれなどをともなう頭痛や、ズキズキとした頭痛の場合に向きます。「気」や「血(けつ)」の滞りをケアし、元気がなくて冷えやすい体を改善して頭痛を抑える、おなかをあたためて胃腸の働きを整えます。
●葛根湯(かっこんとう)
風邪のひき始めに用いられることで知られますが、体力が中等度以上で胃腸は丈夫な場合で、肩や首がこり、うなじや背中の筋肉が緊張しやすいときの慢性頭痛に用います。また、鼻炎、鼻づまりにも向きます。「気」や「血(けつ)」の不足、「水(すい)」の停滞をケアし、体を温めて、症状を緩和します。
●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力が中等度以下で、めまい、疲れやすい、冷え、耳鳴り、動悸(き)などをともなう頭痛に向きます。月経不順や困難にも対応し、一般に「女性のトラブルに向く漢方薬」として知られています。「血(けつ)」のめぐりをよくし、全身の血流を促します。
●苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
体力が中等度以下で、めまいや立ちくらみ、ストレスや憂うつ感をともなう頭痛があるときに向きます。「気」の不足を補い、たまった「水(すい)」をとり除き、気力、体力をアップ、水分代謝に働きます。
●五苓散(ごれいさん)
体力は関係なく用いられ、頭痛のほかにめまい、吐き気、胃もたれ、胃痛、むくみ、口の渇き、尿量の減少、夏バテなどをともなうときに向きます。体にたまった「水(すい)」を取り除き、むくみやすい、二日酔いなど、体に水分をためやすい場合に用います。
最後に吉田医師は、「どれを選べばいいかわからない場合は、薬局に常駐の薬剤師に相談しましょう。また自分の体質や体格がわからないとき、さらに頭痛や頭重感、肩こり、めまいなどの症状が激しく、日常の仕事や生活に差し支える場合は早めに内科を受診してください。何らかの病気が隠れている可能性もあります」とアドバイスを加えます。
漢方薬の特徴は、頭が痛いことだけを考えるのではなく、体質とほかの症状など心身の全体の状態を見つめて改善を試みるということです。その点を理解し、自分に合ったタイプを選びとりたいものです。
(取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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