「ちょうどいいブス」「女性のほうがコミュ力が高いから…」平成も終わろうとしているのに、いつまで誰かの価値観に振り回されなきゃいけないの?
ウートピでは、女性をめぐる自虐や我慢について、改めて問い直してみるキャンペーンを始めました。ちょうどいいブスをやめた人も、今まさに葛藤している人も。一緒に考えてみませんか?
今回は、ライターで、連載「アイドル女塾」の著者でもある小沢あやさんに「ハロプロに学ぶ『ちょうどいいブスにならない哲学』」を寄稿していただきました。
Contents
モー娘。が日本社会に「私サイコー!」精神を振りまいてから約20年
モーニング娘。が第50回紅白歌合戦のステージで『LOVEマシーン』を歌ったのは、1999年のこと。彼女たちは「あたしゃ本当 NICE BODY 自分で 言う位タダじゃない!」と歌い踊り、私サイコー! 明るい未来に就職希望だわ! イェイイェイウォウウォウ! と日本のお茶の間のテンションをブチ上げてくれた。
そこから約20年が経ったいま、突如降ってきたのが「ちょうどいいブス」問題である。相席スタート・山﨑ケイさんのエッセイ『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)のドラマ化が発表された直後のことだった。どうした日本。モーニング娘。が提唱し、世間を熱狂させてくれた「私サイコー!」精神は、幻だったのか……。
そのタイトルと「ちょうどいいブス=酔ったらイケそうな女」の定義が波紋を呼び、ネットは荒れに荒れた。結局、1月10日の放映開始時までにドラマタイトルは『人生が楽しくなる幸せの法則』と改題されることとなった。
山﨑ケイさんは芸人という世界での生存戦略として「ちょうどいいブス」を選んだというだけであり、そのメソッドがまとめられたエッセイは、書籍が発売したタイミングでは炎上もなかった。しかし、マスに向けた地上波で堂々と扱うにはワードのパンチが強すぎたようだ。言及するからには……と、初回放送を観てみると「ブスは容姿のことではない」とか「ブスは内面のこと」などのセリフがあったが、このドラマ自体、見た目(=タイトル)だけ取り繕って、中身が「ちょうどいいブス」のままなんて、そこからもうメッセージがぼやけているのではないか。説得力がない。中途半端な弁明パートが入れ込まれたことにより、もはや誰に対して発信しているのかもわからないコンテンツとなっていた。
ハロプロに学ぶ「ちょうどいいブスにならない哲学」
唐突だが、大好きなハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)の話をさせてほしい。ハロプロは、その20年の歴史のなかで、いくつかブスをテーマにした作品をリリースしている。2004年にはモーニング娘。おとめ組として『友情~心のブスにはならねぇ!~』、2011年にモベキマス(※)名義で『ブスにならない哲学』をリリースしていた。
ここでいう「ブス」はタイトルからわかるように、顔の造形やしわの有無ではなく、ため息をついて不機嫌をアピールするなどの「心のブス」をさす。どちらの曲も、作詞作曲を手がけたのは、当時の総合プロデューサーであるつんく♂氏だ。つんく♂氏は自社のタレントを総動員して「決してブスにはなるな!」とメッセージを社会に対して発信しているのである。
※モベキマス=ハロプロに所属する全メンバー総動員した夢のグループ
ハロプロ楽曲の魅力のひとつは、ほとんどの楽曲における主語が「わたし」であることだ。他者からの評価を蹴散らし、「わたし」の可能性を「わたし」は信じているし、諦めない。「ちょっと地味に見えるからって、わたしのことをなめるなよ!」の精神なのだ。
つんく♂氏がプロデューサーを退き、他のアーティストが作詞作曲をするようになった後も、この精神はきっちりと受け継がれている。
「ちょうどいいブス」論争でヒートアップしたポイントは「誰にとってのちょうどいいなのか」という部分だ。「ちょうどいいブス」がモテるための戦略あっても、自尊心をすり減らした先にある評価なんて、くそくらえだと思う。口にするかどうかは置いておいて「わたしだってモテるんだからね! 誰かに取られる前に口説いてみなさい!」的、ハロプロ精神でいたほうが、こちらも堂々と振る舞えるし、ハッピーに生きられるのではないか。
「今日も可愛いぞ!」で、可愛いのK点超えを果たした道重さゆみ
最後に、伝説のハロプロメンバーである道重さゆみさんのエピソードを紹介したい。道重さんは2003年にモーニング娘。に加入し、シングル「シャボン玉」でCDデビューを果たした。当時のメンバーには1期生の安倍なつみさん、飯田圭織さんをはじめ、矢口真里さん、辻ちゃん加護ちゃんらが名を連ねる。
同期で加入した田中れいなさんがメインボーカルを務めるなどいきなり大抜擢される中で、なかなか人気が出ないまま、長年立ち位置も後列。歌割りも少なかった。それでも「わたしが一番可愛い」と言い続けた道重さんは、ナルシストキャラでブレイク。バラエティ番組にひっぱりだこになった。モーニング娘。のリーダー就任後には、久々のオリコン1位を奪還。現在のモーニング娘。に続く基盤を作り、伝説のリーダーと呼ばれるようになった。
彼女が光り輝き、成果を出せた理由はどこにあるのか。彼女は過去に出演した番組で、こうコメントしている。
「アイドルの心得は『自分に自信を持つこと』。鏡に向かって「よし、今日も可愛いぞ!」って言うんです。自信がない日や、まわりが可愛い子ばっかりで『自分なんて』って思う日もあって……。でも、わたしには応援してくださる方がいるので、自信がないままステージに立ったりテレビに出ることは凄く失礼なことだなと思うんです。『可愛いぞ!』って言い聞かせて、自分を認めてあげれば顔に自信も出てくると思う。まず自信を持つことが大事なのかなって」
(2014年放送 NHK『スタジオパークからこんにちは』出演時の発言)
なんということだろうか。彼女は、自身のマインドを引き上げるために、「可愛くなりたい」ではなく「可愛い!」と毎日唱え続け、最初から、可愛いのK点超えを目指していたのだ。このロジックは「自己評価70点で実際には50点の女が、『私は45点の女なんですよ≒私ってちょうどいいブスなんです』とプレゼンする」ことを推奨する「ちょうどいいブス」メソッドとはまったく異なるものだ。
可愛いのプロ、道重さゆみさんでさえ、成功するまでにはこんな精神の引き上げをしていたのだ。自己評価が低い人間に擦り寄ってくる人間なんて、ろくなもんじゃない。みんな、「ちょうどいいブス」で満足している場合ではない。根拠がなくてもいい。卑屈にならなくていい。笑顔の総量が増えたほうが、絶対にいいのだから。「よし、今日も可愛いぞ!」のマインドで、気分と口角を引き上げながら生きていこうではないか。
(小沢あや)
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情報元リンク: ウートピ
「よし、今日も可愛いぞ!」で気分と口角を上げていきたい【小沢あや】