風邪をひいて熱が出たときにはすぐに解熱剤を服用して、ひたすら早く熱が下がるのを待つ人は多いのではないでしょうか。
内科医で泉岡(いずおか)医院(大阪市都島区)の泉岡利於(としお)院長に尋ねると、「発熱は、体がウイルスや細菌と闘っているというサインです。風邪の場合、すぐに解熱剤を飲むとこじらせることもあります」ということです。
詳しいお話を聞いてみました。
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発熱はウイルスや細菌と闘うための反応
風邪で発熱するととてもしんどくなりますが、泉岡医師ははじめに、「熱が出るのは、ウイルスや細菌に感染したときです」と話し、その理由についてこう説明をします。
「ウイルスや細菌は、我々の体温が38.5度以上になるとたいてい死滅します。そのため脳と体は、体内に入ったウイルスや細菌と闘うために体温を上げて、白血球の働きを活発にします。そうして免疫機能を高めます。つまり発熱とは、生体の防御反応のひとつなんです」
発熱は、体がウイルスや細菌をやっつけようとがんばっている状態ということです。では、解熱剤はすぐには飲まないほうがよいのでしょうか。
「熱が上がりだしたとき、37.5度までの微熱状態のとき、ぞくぞくと悪寒がして熱が出る予感がする段階では、解熱剤を飲んで体温を下げると、ウイルスや細菌が死滅せずに風邪が長引きやすくなります。この段階では解熱剤を飲む必要はありません。
ただし、熱が出ると、体がだるい、食欲がなくなる、頭痛などの症状が出ます。体力が消耗するので、長時間発熱が続く場合や症状が激しい、つらいときには熱を下げるようにします」と泉岡医師。
では、どのタイミングで解熱剤を飲めばよいのかについて、泉岡医師はこうアドバイスをします。
「発熱が続いて『これはつらい』と思ったときには、解熱剤を飲んで熱を下げてください。38度5分を目安に服用するとよいでしょう。
注意してほしいのは、熱が下がってきて頭や体のしんどさがらくになったと思っても、風邪が治ったわけではありません。解熱剤は熱を下げますが、風邪を治す薬ではないため、しばらく安静にして自分の症状を見つめてください」
体温が上昇中のときは、体を温めて白湯を飲む
では、発熱時はどのようにして過ごせばよいのでしょうか。いつどう温めればいいのか、また冷やせばいいのかなど、自分でできる具体的な対処法について、泉岡医師はこう話します。
「熱が出始めると、寒さでふるえをともなうことがあるでしょう。やがて体温が上昇してくるとともに、だるさや頭痛などの症状が現れます。
そのときは、まずは体温を逃がさないために保温性の高いパジャマを着る、室内の温度を高めにする、布団をかけるなどしましょう。また、発熱の際には脱水症状があるので、白湯などの温かい飲み物を十分に飲んで、体を温めて休んでください。
次第に、手や足、顔がほんのりと赤くなり、温まって熱が上がっていると感じるでしょう。体温を測りながら、しんどくてつらい、38度5分前後になった、汗が出てきたら、次に、冷やしていきます」
首、わき、足のつけ根の脈打つ部分を冷やす
どこをどう冷やすとよいのでしょうか。泉岡医師は効率が良い体温の下げ方について、こう伝えます。
「よくおでこを冷やす人がいますが、熱を下げる効果はあまりありません。首のまわり、両方のわきの下、ふともものつけ根など、脈が感じとれる場所を保冷用パックや冷えたタオルなどで冷やしてください。そのあたりは太い血管が皮膚の表面の近くを通っています。体温が高いときは、体中を巡る血液の温度が高くなっているので、これらの場所を冷やすと血液の温度を下げて体温を下げることになります。
冷やす際は、熱が逃げやすいように薄めの衣服に着替え、布団も薄めをかけましょう」
汗をかいているときは、どうすればいいのでしょうか。
「発汗は、体がウイルスや細菌と闘って、体温をいつもの状態に戻す作用のひとつです。熱が下がるとおさまりますが、大量に出ることが多ので、服やパジャマを着替えて汗が止まるのを待ってください。発汗時はとくに脱水症状になりやすくて、脱水が発熱を増強させることもあります。白湯を十分に飲んで水分補給を心がけてください」と泉岡医師。
さらに、発熱時に解熱剤を飲むタイミングがわからないときやつらいときについて、泉岡医師はこうアドバイスをします。
「がまんや無理をしたり、また市販の解熱剤をたくさん飲んだりしないで、早めに内科を受診して、解熱剤を飲むタイミングなどを尋ねてください。また、熱が長引くときは風邪ではなくほかの病気が隠れていることもあります。この場合も早めに内科を受診しましょう」
解熱剤を飲むと熱が下がってくるので、風邪が治ったのだと勘違いをしている人は多いのではないでしょうか。発熱はウイルスや細菌と闘っている正常な反応であり、また、解熱剤の役割とは熱を下げるだけで風邪を治すものではないとのことです。この点をよく理解し、発熱時にはやみくもに解熱剤で熱を下げようとせずに冷静に対処したいものです。
(取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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