同僚や仕事相手の気持ちを知らず知らずのうちに汲み取っていて、一日が終わる頃には気疲れでグッタリ。そんな人はきっと多いはず。気疲れから解放されて、もっと心穏やかに仕事をするにはどうすればいいの? 『マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術』(青春出版社)の著者で人材コンサルタントの大嶋祥誉さんに聞きました。
相手の気持ちを敏感に読み取る人
——よく女性は感情的と言われますが、男性より女性のほうが感情コントロールは苦手なのでしょうか?
大嶋祥誉さん(以下、大嶋):共感、共有という能力が男性より長けているがゆえに、相手の気持ちを感じすぎてしまう傾向はあるでしょうね。相手の感情に自分が対応しなくてはいけないと思ってしまうのです。こんなことを言ったら相手が怒ったり嫉妬したりするかもしれないと先回りして相手の感情を忖度し、がまんして自分を出さない女性は多いと思います。でも嫉妬するかしないかは相手の問題であり、こちらに責任はありません。
——その線引きが、つまり感情コントロールというわけですね。
大嶋:はい、女性の場合、勝手に相手の感情の面倒をみてしまう傾向が強い気がします。そこにエネルギーを使ってしまうがゆえに、仕事に支障が出てくるケースも少なくありません。
——「忖度」は必要ないと。
大嶋:必要ない場合が多いですよね。また、無意識に他人の感情に共感してしまい、あたかも自分の中で湧き起こった感情と勘違いしてしまうことを「情動感染」と言いますが、感情が乱れやすい人は、無意識にしろ意識的にしろ、周囲の感情に目が向きすぎているのだと思います。感情を上手にコントロールするためには、人の感情ではなく、自分の感情に目を向けることが重要です。
ウイルスのように空気で伝染する「情動感染」
——「情動感染」について、詳しくに教えてください。
大嶋:情動感染は怒りや不安など、負の感情に起きやすいと言われています。感情は音叉(おんさ)と同じで、感染しやすいもの。電車に乗るまでは気分がよかったのに、とくに何があったわけでもないのに降りるときになってモヤモヤした気分になったことはありませんか? それは、周囲にいた人の怒りや不安など、負の感情が感染ってしまったせいです。
人の心は抽象的な基盤で感情を体験することはできません。つまり、何もないのに怒りだけを感じることはできないのです。そこには必ず何らかの理由が存在します。でも人から感染ったと考える人は少なく、かといってモヤモヤのままでいるのは嫌だから心は理由をほしがります。そこで、たまたま家族や上司に対して感じていた不満や仕事への不安など、目の前にある何かをくっつけて、それに対する感情なのだと納得しようとするのです。
——理由は後づけで、人から負の感情が感染していることも多々あると。
大嶋:70〜80%は自分の感情ではなく、たまたま一緒にいた人とか、たまたま見たニュースから感染っていることが多いと私は感じています。ニュースもエネルギーを持っています。だからSNS には気をつけないといけません。無意識に影響を受けてしまうからです。
こじらせる前に手当をすれば大丈夫
——感染するという表現は、風邪のようでおもしろいですね。
大嶋:まさに風邪と同じで、こじれたら大変です。体調の変化を感知できる人は多いと思いますが、風邪のひき始めに対処してしまえば、寝込んだりすることなく症状は治まります。感情も同じです。意識することで、大きな感情になる前にキャッチできるようになります。こじらせる前に手当てができれば、大事に至る前にやり過ごせます。
——まずは自分の中から湧き出た感情なのか、人から感染した感情なのかを見極めることが大切ということですね。
大嶋:突然、嫌な感情が湧いたら、「これは私の感情じゃないな、あの時のあの人かな」とか、「さっき電車で移動したからそこでもらったかな」とか。それを分けて考えられるようになれば、上手に感情コントロールができるようになるはずです。
*次回は11月15日(木)公開予定です。お楽しみに!
(取材・文:塚本佳子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
相手の感情を読み取る人ほど、仕事で疲れる本当の理由 「情動感染」のメカニズム