雑誌やネットのニュースを見ると「モテるためのテク」「愛される女性になるために」「結婚できる女の条件」など、恋愛テクにまつわる記事やコラムが毎日のように掲載されていますが、「セックス」に関してもマニュアル化、定番化が進んでいるようです。
元AV女優で現在はソープ嬢として活動する長谷川瞳(はせがわ・ひとみ)さんの初の単行本『ヒアリングセックス』(角川書店)が10月19日に発売されました。
長谷川さんは元“中の人”として「AVで描かれるセックスが多くの方に思い込みや偏った認識を与えてしまっている。本当にいいセックスをできなくさせている“元凶”」と言い切ります。
AVで描かれるセックスの思い込みって何? 本当にいいセックスってどんなセックス? 長谷川さんに3回にわたってお話を伺いました。
AVの罪、女性誌の呪い
——今回の本は「AVの罪」がテーマですが、ウェブメディアも含めていわゆる“女性誌”も重なる部分があると思っています。「こうすればモテるよ」「30歳にもなってミニスカを履くなんてイタイよ」という読者の不安をあおるような情報ばかり発信している。私は勝手に“呪い”と呼んでいます。確かにそういう記事はPVも跳ねるという事情もあるのですが……。
私も若いときに読んだセックス特集や「好きな人の精子を飲むことで絆を深める」というのを信じていたんです。でもぶっちゃけ精子なんてマズいし、絆は深まらないし、マズかった思い出しか残らない。それなら本当にお互いがしてほしいことをし合うほうが絆は深まるんじゃないかなって思います。
女性の男性を喜ばせたいという気持ちはわかるのですが、本当に自分も楽しんでいる? って言いたい。もっと楽しんでセックスをしていただきたいと思うんですね。それに男性に遠慮しないで自分がやりたいことを、自分が気持ちいいいところ伝えると男性も成長していくんです。
——--長谷川さん自身はどうですか?
私は言います。「そこをずっと触って」とか「それ気持ちいい」と言うと、男性は頑張って触ってくれるんですよ。だから「これは嫌だな」と思ったら言ったほうがいい。嫌なまま我慢していたら「こいつ嫌だな。次はないな」と思うだけだから。積極的すぎて触られたくないところをガシガシ触ってくる人もいるんですが、年上の世代に多いかな。今までのセックスが受け入られてきたからそれが正解だって自信を持っているんでしょうね。
——「オレのセックス、イケてる」と思っちゃってるんですね。
思っちゃってますね。「これがいいんだろ?」みたいな感じでガシガシやってくる人。お客様でも私は「もっと優しく触ってくれたほうが気持ちいいな」って言いますね。
——お客さんにも伝えるのですね。それはなぜですか?
ちゃんと伝えたほうがその人のことを好きになれるし、続くと思うからです。「もうちょっと弱いほうが私は好き」って言ったら、大体「ごめんね」って言ってくれる。「そんなわけないだろ」って言う人はあんまりいないですね。
「自分がしたいことを伝えたら距離が縮まった」
——長谷川さんは子どもの頃から「思っていることは相手に伝えよう」というタイプだったのですか?
いえ、全然言えないタイプでしたね。30歳くらいからですね、きちんと言えるようになったのは。
——大人になってからなんですね。何かきっかけはあったんですか?
同じ職場で人の心をつかむのがうまい女の子がいたんですが、あるとき「プレイを見てほしい」と言われたんです。見られるのが好きというお客さんで、2人のセックスを見ていたら、すごく要望を言う子だったんです。「これだ!」と思いました。
——“コミュ力”が高かったんですね。
はい(笑)。それでちょっと興奮しちゃったというか、「これでいいんだ」と発見があったんです。それから私も言うようになりました。
——セックスって基本は“秘め事”だから他人がどうやっているかはわからないですもんね。
そう、だからAVを教科書にしてしまうのでしょうね。
——自分の要望を相手に言うようになってから変化はありましたか?
すごく変わりました。自分のセックスも楽しくなってきて、お客さんとの距離も縮まりましたね。お客さんから「こうしてほしい」と言われたり、私も「今日は体調があまりよくないからそこは優しく触って」と伝えたりしていくうちに不思議と距離が縮まっていくんです。そうすると、長く付き合えるから信頼関係が生まれてきて、どんどんどんどんよくなってくるんですね。
だから、1回のセックスや初めてのセックスが一番気持ちいいということはあまりなくて、それも”幻想”なんじゃないかなって思います。何回も何回もして、お互いにお互いが気持ちよくなって、毎回、毎回「気持ちいい」が何年も続くというのがいいんじゃないかなって思います。
伝え合うことでセックスはもっと楽しくなる
——3回にわたってお話を伺ってきましたが、セックスは特別なことではなくて日常の延長線上にあるコミュニケーションということに尽きるなと思いました。最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
私はAV女優、ソープ嬢として6000人以上の人とカラダを重ねてきたのですが、中には昔の自分みたいな人もいるし、本当にいろいろな人がいるなあと思うんです。たとえ短い時間であったとしても、肌と肌を重ねるという密な関係性を築いていくうちにわかったことをここに書かせていただきました。
それで思ったのが自分の気持ちに素直になることがすごく大事だなということ。自分の気持ちを伝えることは、決して悪いことではないし、むしろ伝え合うことでよくなるものだと思います。伝え合うことで楽になるし、自分も相手も無理しなくてよくなる。そうするとセックスはもっともっと楽しくなります、というのをお伝えしたいですね。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)
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情報元リンク: ウートピ
「精子を飲んでも絆は深まらない」6000人とカラダを重ねてきた私が伝えたいこと