ド派手な装飾のハイヒールに、大胆なポージングのセルフィが並ぶ彼女のInstagram。超美脚の持ち主である“八木さま”こと八木恵利子さんは、今年で62歳。世界中の高級ブランドを着こなし、デザイナーやセレブリティからも厚い支持を受けています。
SNSでの発信だけでなく、自身の日々のファッションを記録したフリーペーパー「YB」を8年前から発行。一風変わったクリエイティブが話題となり、米国版「VOGUE」でも紹介されるなど、海外のセレブリティにも広く知られるようになりました。
連載第2回は、八木さんの運命を変えた自己発信について伺いました。
欲しい服を手に入れるためには良質な顧客になるしかないと思った
——八木さんのファッションは、個性的で目を引きますよね。
30代になって、服を買うようになってから気がついたんです。いろんなブランドのカタログを眺めてみても、わたしが欲しいと思うものほとんどは、日本では展開しないラインだったの。欲しかったら、デザイナーと直接交渉して、日本で買えるようにしないといけない。「そこに到達するにはどうしたらいいのか?」って、真剣に考えましたね。
——ファッション業界で目立たなきゃいけない、と飛び込んだんですね。
手に入れるためには「ファッションへの情熱がある顧客だから、日本に入荷してあげよう」って思わせなきゃいけない。とにかく、たくさんのコミュニケーションをとりました。
——もともとコネがあったわけじゃないんですね。八木さんは、最初からセレブなのかと思っていました。
ないない(笑)! 最初はお手頃な、靴下とか下着から買い出したんだから。ブランドとのやりとりも、販売員の方との会話からはじめましたね。顧客として、「取り置きのキャンセルは絶対にしない」とか「浮気をしない」とか、信頼関係を築くことから。
——名刺のように自作のフリーペーパーを配って、PRしたり。
ここまで、すごい努力してきましたよ。海外イベントの時は勝負ですよ。JAPANと自分をどうアピールするか。考え抜きましたね。
フリーペーパーを手に、アナ・ウィンターにも突撃
——ファッション業界の方とたくさんの繋がりができたと思いますが、一気に世界がひろがったきっかけは?
「Dolce&Gabbana」にいた、アレックスとの出会いが一番大きかったかな。ブランドを辞めたとしても一生友達でいられる相手ですね。彼がいろんな人を紹介してくれて、突然オートクチュールのショーに呼ばれたの。
——オートクチュールのショーって、そんなにいきなり招待されるものなんですね?!
もう、わたし本当にビビっちゃって。わからないから怖かったの。ドア閉められて、無理やり高額商品を買わされたらどうしよう! って。
——「八木さま」でもビビること、あるんですね。
勇気を出してショーに行ってみたら、アナ・ウィンター*やスージー・メンケス**がいたの。「ここで配らないで、どこで配るんだ!」って、力を振り絞って、自分のフリーペーパーを渡したんです。
*イギリス出身のファッション誌編集者。米国版「VOGUE」の伝説の編集長。映画化もされた小説「プラダを着た悪魔」の鬼編集長のモデルにもなった。
**ロンドン生まれのジャーナリスト、ファッション評論家。
SNSは加工しすぎないでリアルな自分を発信
——すごい挑戦ですね。そこで世界中のセレブとのつながりが?
そう。Instagramは最近はじめたんだけど、海外に行くと「見てるよ」と言われるようになりました。でも、わたしがこだわっているのはSNSではなくて、あくまでもリアルの場。SNSであまりに飾りすぎると、イベントで実際にあった時に嘘が出るでしょう? 加工しすぎないで、リアルな自分を発信しています。
——継続してアップしているのもすごいです。
全部オートで撮って出し。仕事をしていて時間がないし、毎日何枚も撮っていられないですから。
——下から全体を撮る独特のポージングにいきついた理由は?
上から自撮りすると、服が全部見えないからね。下から撮ると、服も全部うつるでしょう。靴を見せたいし、ローアングルなら三脚もいらない。楽なのに、個性も出るんです。
——下からあおって撮っている人、なかなかいないです。目をひきます。
続けることが一番大変です。美人だったり、ものすごい才能があったりする人は継続しなくてもいい。けど、大したことない人間にとっては、継続することが一番大事です。
わたしは自分に負けたくないから、毎日やり続けているの。毎月発行しているフリーペーパー*もそう。手を出す人はいるけれど、続けられる人ってなかなかいないじゃない? 継続するかどうかで、勝負がつきますね。
*海外版は3ヶ月に1回発行。
連載第3回は、自分の魅力を見つける方法や、八木さんのキャリア観について伺います。
※次回は9月14日(金)公開です。
(取材・文:小沢あや、写真:宇高尚弘/HEADS)
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情報元リンク: ウートピ
「加工しすぎずリアルな自分を発信」62歳インスタグラマーの運命を変えた自己発信術