1年間だけと決めた不倫の恋や学生時代はモテた女性の後悔、かつての彼女とよく通ったパン屋さんを訪ねた男性……
さまざまな恋愛模様を音楽とお酒のエピソードとともにつづった林伸次(はやし・しんじ)さん(49)による初の小説『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)が7月に発売されました。
東京・渋谷のワインバー「Bar Bossa」の店主でもある林さんに、小説執筆の経緯や恋愛とバーの関係など「恋愛」にまつわるお話を伺いました。
【前回は…】バーに時計がないのはなぜ? バーに行くと恋愛がしたくなる理由
恋愛は流行っていない?
——これまで「恋愛」をテーマにお話を伺ってきたんですが、ふとまわりを見渡してみると「恋愛できない」「恋の仕方を忘れてしまった」と言っている友人も多いんです。本当かどうかわかりませんが「若者の恋愛離れ」という言葉も聞きます。
林:実は、この小説を企画したときに編集者さんと3人で「恋愛がテーマだけど、恋愛ってどうなの?」ということについて話し合ったんです。「今、恋愛って流行ってないらしいぞ」と。確かに、小説を出していろいろな人のリアクションを見ていると、恋愛なんて興味ないしっていう人がすごく多い。
——そうなのですね。
林:小説に「恋愛に季節がある」って書いたんですが、「春なんていらない」という人もいるらしいです。
——ええっ、「春」って本にもありましたが、互いに探り合っている状態の一番ドキドキする季節ですよね。
林:はい。春が一番面白いっていうことを書きたかったのに「春いらないんだ……そっか。。」って思って。そういう意味では、今は恋愛って流行っていないですね。でも、一方で「恋愛ができない」と言っている人たちも、恋愛に過剰に期待している部分があってそれでできないような感じもするんですよね。
——ああー、確かに。
林:恋愛できない人たちで多いのは、偶然出会わないといけないと思っているんですね。角を曲がったところで出会うとか。
——あ、思ってますね。「自然な出会い」を求めている。彼氏欲しいならナンパでもしたら? と友達に言ったらキレられました。そういうのは嫌みたい。
林:偶然出会って、「え!」と思って、互いを意識し始めて、ちょっとずつデートを重ねて、デート中にキスしてっていう、それをやらなきゃいけないと思っている。でも現実は、そんなにうまくいくわけでもなくて……。
——「恋愛はこういうもの!」という呪いにかかっているのかもしれないですね。
「恋愛しなきゃ」という呪い
林:音楽家の小西康陽さんが「恋愛を人生のすべてと考えている人々のための一冊。」と小説の帯を書いてくださったんです。幻冬舎のサイトにはもっと長い紹介文が書かれているので、ぜひご覧いただきたいのですが……。小西さんが書いてくれたように、僕も恋愛が人生のすべてであるって結構思っているんです。
——楽しいですよね。もちろん苦しいこともあるんですけれど、それも含めて楽しい。
林:フラれちゃったなとか、全部含めて楽しいじゃないですか。何でうまくいかなかったんだろう? とか、自分が焦り過ぎちゃったかな、とかいろいろ考えるのもコミコミで面白い。
——「この音楽はあの人に教えてもらったやつだ」とか「この映画を一緒に見に行ったな」とか思い出すのもいいですよね。恋愛に酔っているとわかりつつもそのほろ酔い具合が心地いい。
林:はい。でもそういうふうに思っている人たちが実は少なかったと思うと、恋愛って、高度なというか特殊なものなのかもしれないですね。平安時代の一部の人たちが、和歌を贈りあっている感じ……。
——以前、ウートピで独身研究家の荒川和久さんという方にお話を伺ったときも「だいたい世の中に恋人がいる人は全体の3割しかいない」つまり「恋愛しているのはいつの時代も3割」とおっしゃっていました。そう考えると、実態はそんなものなのに「世の中の人はみんな恋愛している、どうしよう?」と焦っている人もいるのかもしれないですね。
林:そういえばある女性に相談されました。「私はそんなに人を好きにならないんですけど、これって病気なんですかね?」って。「まったくそんなことないですよ」って言ったんですが。
——「恋愛しなきゃいけない」と思い込んでいるのも恋愛の呪いなのかもしれないんですね。
それでも恋したい貴女へ
——インタビューも今回で最終回です。小説のタイトルに『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』とありますが、恋愛の仕方がわからない、恋愛をしたいけれど一歩踏み出せないという女性に一言お願いします。
林:僕もよく「どうやったら恋愛って落ちることができますか?」とか「ドキドキする方法を教えてください」という相談を受けるのですが、やっぱり恋愛ってある日突然落ちてしまうものなんですね。だから『恋愛しなきゃ!』って思わないほうがいいのかもしれないですね。
——「最近恋愛してない!ヤバイ!」と言っている人、時々いますが「何がヤバいのかなあ」って不思議なんです。「恋愛をしてない自分はダメだ」と思う必要もないということですよね。
林:恋って、ある日突然、好きになるつもりなかったのに、好きになってしまうものなんですね。
——まさに「恋に落ちる」ですね。
林:ただ、心を恋愛に開かれた状態にしておくのは大事かもしれない。さっきの「ときめくにはどうしたらいいんですか?」という相談に対してよく言っているのは、しょっちゅう人と2人きりでデートした方がいいって。やっぱり、1対1でデートするとドキドキしませんか? そういうのでもいいと思います。
——そうですね! 時間を忘れるようなお話をありがとうございました。
(聞き手・ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:河合信幸)
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情報元リンク: ウートピ
「恋しなきゃ!」も恋愛の“呪い”? 恋愛小説を書いたバーの店主と語ってみた