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介護も家事も子育ても…「楽になること」に罪悪感を持たないで

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大好きだった“わたしのお婆ちゃん”が、気がついたらアルツハイマー型認知症になっていた——。

認知症になった実家の祖母との暮らしや介護についてつづったニコ・ニコルソンさんのエッセイマンガ『わたしのお婆ちゃん〜認知症の祖母との暮らし〜』(講談社)が6月に発売されました。

東京でマンガ家をしていたニコさんが宮城に帰省したときに気づいた祖母の奇行、認知症と知って実家で母と一緒に介護をしようと決心したこと、介護を通じて家族や自分と向き合った日々が描かれています。

家族や身近な人に介護が必要になったらどうすればいいの?

ニコさんに、3回にわたって話を聞きます。最終回は、「自分ができること」について伺いました。

【第1回】施設に入れるのは可哀想? “祖母の介護”を通して見えたこと
【第2回】祖母の介護を通じて変化した母との関係

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あげるべきは「時間」だった

——私たちの世代だと、祖父母に介護が必要になって……というケースがリアルですよね。ニコさんのお話を聞いて、介護をしている人のケアも大事なんだなあと思いました。そのために考えておいたほうがいいことや準備しておいたほうがいいことって何でしょうか?

ニコ:無理に「こうしなきゃ」とか、「覚悟しておかなきゃ」と、スタンバイするのも疲れちゃいますよね。だからものすごく身近なことで言うと、家族が遠方な場合でもなるべく会うようにすることと、話を聞いてあげること。本当にそれに尽きる気がします。

——なるべく会うように、かあ。

ニコ:電話で話しているだけではわからないことってすごく多いんですよね。田舎のおばあちゃんって、「元気?」って聞くと「元気だよ。たまには帰って来なさいよ」って返ってくる。それが決まり文句だったから、祖母の認知症が進んでいるなんて全然気がつかなかったんです。実際に私も実家に帰って、2週間ほど経ってからようやくおかしいと気付いたので。

——確かに思い当たることはあります。うちの祖母も90歳を過ぎていますが、電話だと20年前とそんなに変わらない。実家に帰って久しぶりに顔を見て「こんなに年をとっていたのか」とギョッとすることがあります。

ニコ:そうなんですよね。ウートピさんを読んでいる世代の女性は仕事も忙しいし、やることがたくさんあるし、東京は楽しいこともたくさんあって誘惑も多いし(笑)。

心のどこかで「うちは大丈夫」「まさかね」と思っているフシがあると思うのですが、なるべく電話ではなくて会いに行ってあげる。なるべく長い時間を一緒に過ごすのが大事かなと思います。

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——本当にそうですよね。たまに電話して何か美味しいものとか母や祖母が喜ぶ化粧品でも送ってあげればいいかなって思っていました。

ニコ:私も婆がこうなる前までは、花を贈ってあげたり、サーカスのチケットを贈ったりしていたんですが、結局会いに行くのが一番いいなって思いました。

——贈り物をするのって楽なんですよね。ネットで何でも買えるし。

ニコ:そうなんですよね。でも、すごくよいことをした気になって気分がよくなっていたのは自分だけでしたね(笑)。

——お金も出すから、すごく気分がよくなるんですよね。私が働いて稼いだお金で何かをしてあげたって。

ニコ:そうそう。でも、違いましたね。あげるべきは「時間」でしたね。

繰り返しになってしまうんですが、介護に限らず「家族が病気になったらどうしよう」「事故に遭ったらどうしよう」とかあまり思いつめたり、心配しすぎなくてもいいと思います。

今、家族と離れて暮らしている自分ができることと言ったら、会話を増やしたり、コミュニケーションをとったりすることに尽きるのかなって。それぞれ家族との関係性は違うと思うんですが、急に何かがあったときに真っ先に連絡がくるのは家族だし、何とかしなければいけないのも自分だと思うので、家族のお互いの状況を知っておくのは大事だと思います。当たり前のことなんですけれど、意外としていないものなんですよね。

——本当にそうですね。

自分が楽になることは悪いことではない

——3回にわたってお話を伺ってきたのですが、読者に「これだけは伝えたい」ということはありますか?

ニコ:あまり偉そうなことは言えないですけれど、マンガを読んでくださった方が「ニコさんみたいにやらなきゃ」というふうに思ったり、プレッシャーを感じたりする必要はないと思っていて、だから、何かを伝えたいというよりもマンガを読んだ読者さんの心に何かが少しでも残れば嬉しいです。

——「こうするべき」とか「こうしなければいけない」と思う必要はないんですね。

ニコ:それは全然ないと思います。ただ、介護している人には、自分が楽になることに罪悪感を持たないでほしいです。母がそういう人だったので。「自分は楽になっちゃいけない」という思いが根底にあるらしく、でも、自分が楽になることで相手にも楽をさせてあげられるんじゃないのかな……? という気はしています。

——介護に限らず仕事や子育てでも「楽しちゃいけない」と思い込んでいる人は多いですよね。

ニコ:そうですね。楽をすることがどこか悪いことのように言われますよね。楽すると「手を抜く」と捉えられる。そもそも手を抜いてもいいじゃんって思うんですけれどね。

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——料理やお弁当でも“手作り神話”がありますよね。

ニコ:大変だったら冷凍食品でもいいですし、出汁を最初から取らなくてもいい。介護にしても家事や子育てにしてもみんな頑張りすぎちゃうのかもなあ……。

——ニコさんは介護していたときって楽になることへの罪悪感ってありましたか?

ニコ:楽になりたいとしか思ってなかったですね(笑)。でも楽になれない。犬の散歩のわずかな時間がどれだけ癒しだったかっていう……。犬を散歩させるという正当な理由のお陰で外に行けたので、私は楽になりたいとしか思ってなかったな(笑)。

——楽になることは悪いことじゃないですもんね。

ニコ:悪いことじゃないですよ。介護しているほうも、されているほうも、みんな毎日十分頑張っているはずです。

——ニコさんは今後はどんなものを題材にマンガを描いていきたいですか?

ニコ:今回、読者の方の反応で、こんなにも認知症の人って多いんだというのがよくわかりました。マンガを読んでくれた友だちも「おじいちゃんが認知症なんだよね」とか、先輩が「うちの父親も認知症みたいなんだよね」とか話してくれて。

実は、あまり他人に話さないだけでこんなにいたんだというくらいいろいろな反応がありました。だから、認知症というものに対して違った視点で何か描ければいいなと考えています。

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(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)

情報元リンク: watapi
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