“足立区で一番気さくな税理士”として活躍する田村麻美(たむら・まみ)さんによる『「フツーな私」でも仕事ができるようになる34の方法』(日経BP)が8月5日に発売されました。
田村さんと言えば、己の現実を冷静に見つめて目標(結婚と経済的な自立)を実現するための戦略をつづった『ブスのマーケティング戦略』(文響社)が話題に。
今回の新刊では、「頑張っているのになかなか評価されない」「八方美人の同僚ばかり評価される」など、仕事で悩む女性たちに向けて、「自分が評価されやすい市場(=職場)」を見極める方法や自分の弱点を最小化する方法などについてつづっています。
人間関係の捉え方やコンプレックス解消の取り組み方について、田村さんにお話を伺いました。前後編。
「やっぱり早稲田に行きたい」コンプレックスへの突っ込み方
——『ブスのマーケティング戦略』もそうですが、田村さんは自分のコンプレックスにがっつり取り組んでそのたびに結果を出しています。「早稲田に行きたかった」コンプレックスを解消するために、33歳のときに2歳の子供と仕事を抱えながら早稲田のビジネススクールに通ったそうですね。
田村麻美さん(以下、田村):本当は大学は早稲田に行きたかったのですが、現役のときは行けなかったんです。戦略的に自分をマーケティングすることで結婚して子供を授かった。「組織で仕事ができない」コンプレックスも独立開業で何とか乗り越えて、ふと「心残りはあったかな」と思ったときに浮かんだのが「早稲田大学に行きたかった」だったんです。
そして、たまたま早稲田のビジネススクールを見つけました。早稲田のビジネススクールは社会人大学院なので、基本的には働きながら学べます。それでも学校なので大変は大変で、2年間で卒業することにはなっているのですが、2年で卒業できなかったらどうしようという事態も考えた上で、最悪留年でもいいかなと思って入学しました。
私のコンプレックスって「早稲田を卒業したい」よりも「早稲田に入りたい」だったから、最悪退学でもと考えて飛び込みました。
——またしてもコンプレックスに飛び込んでったんですね。
田村:スッキリしました。だから今は学歴に関してのコンプレックスは何もないですね。本当に私のコンプレックスって単純で「優秀な男性と付き合いたい。そのために勉強を頑張って絶対に早稲田入ってやる。でも、現役のときは行けなかった」っていう挫折だったので。
——もうコンプレックスはないですか?
田村:ないですね。
——「コンプレックスを抱いたまま他人にそれをぶつけて、周りからめんどくさがられる」大人も多い中で、コンプレックスに突っ込んでって解消するってもちろん自分のためになるし、こうして仕事にも生かされていて、生産的だなと思います。
田村:やっぱり後悔して死にたくないじゃないですか。本に関しても、いつか出せればいいなとは思ってたんです。ただ、お声がかかるとは思ってなかったので、死ぬ間際に自費出版で自伝を書いて死のうと思ってたんです。それで一応モヤモヤは解消できるから。でも、こうやって書かせていただいたので、それも解消できました。
あと、まっとうしなければと思うのは、親としての責任感というか、子供ですね。産んでしまったからにはちゃんと育て上げなければいけない。娘がやりたいと言ったことはできる限りやらせてあげたいと思っているので、そのためにある程度お金を稼がないとと思っています。
まずは「バカっぽい欲望」を洗い出してみる
——田村さんのエネルギー源になったのは「俗っぽい欲望」「バカっぽい欲望」だったと書かれていて人間くさくていいなと思いました。世間では「やりたいことがない」という声もよく聞きますが、まずは自分の心に正直になってみるのが大事なんだなと思いました。
田村:仕事で言うのであれば、「出世したい」でもいいでしょうし、「出世は望んでないけど、年収800万円が目標だ」とかでも良いと思うんですけど。これが、いわゆる「俗っぽい欲望」だと思うんですよね。普通、言えそうで言えないじゃないですか。「出世したい」って意外に恥ずかしくて言えないじゃないですか。「社長になる」とか言えないじゃないですか。だから、やっぱり漠然とでも、こういうバカっぽい目標って絶対立てたほうがいいと思うんですよね。
——「車の免許を取って外車に乗りたい」でもいいのでしょうか? 最近は若者のクルマ離れが言われているのでなかなか周りにも言えないんです。
田村:いいと思います(笑)。私は「いい男とヤリたい」っていうのが若い時の目標だったんです。でも言えないじゃないですか。でも、私はずっと言ってたんですよ。そうすると、「いい男と出会いたいって言ってたよね? じゃあ合コン行こうよ」ってなるわけですよ。「おお、ありがとう!」って(笑)。例えば、「出世したい」って言ってれば、上司は「お前は上昇志向があるんだな」って。ついでに「出世したいってことは、お前は長くこの会社にいるつもりなんだな」って解釈してくれるかもしれない。
——自分はバカっぽいと思っていても、相手がどう解釈するかは分からないですもんね。
田村:前向きであることは、周りから変な見え方はしないですよね。
——言って悪いことって、そんなにないってことなのかな?
田村:ただ、みんな恥ずかしいんですよ。「言ったからにはやらなきゃ」とか「達成しないと恥ずかしいんじゃないか」って思っちゃう。でも他人ってほとんど覚えてないですから。自分だって自分の言ったことを結構忘れてたりするじゃないですか。他人は自分にまったく興味を持ってないですから。
欲望を洗い出すのは年末年始がおすすめ
——前編でもおっしゃっていましたが、「他人は自分に興味がない」という前提で考えたら気が楽ですね。田村さんが欲望を洗い出す時に具体的にやっていることってありますか?
田村:最終的に死ぬ時に後悔したくないと常に思っているので、後悔しないために自分は何がしたいのか? を考えて逆算していくと、いろいろ出てくると思います。後悔しないっていうのは、単純に「海外に行きたい」とかでもいいと思うんですよね。
私は年に1回、必ず年末に1年を振り返って、来年は何をするかを書くようにしています。今でこそブログに書いていますが、必ず振り返りだけはしています。
それで、1年間を振り返ってみてすごく頑張ったなっていう年もあれば、頑張ってない年もある。頑張ってない年だと、じゃあ来年は頑張ろうかなとか。だいたい年末年始って、人ってテンション上がってるじゃないですか。だから一番まとまりやすいんですよ。多分、俗っぽい欲望が出がちなのは、年末年始だと思うのでその時期に目標を立てるのはオススメですね。
——今年もあと3カ月ちょっとだしちょうどいいですね。さっきの「他人は自分に興味がない」もそうですが、田村さんの本を読んだり、お話を伺っていると「リアリスト」なんだなあと思うのですが、己の現実に向き合うコツを伺いたいです。というのも、「己の現実を見つめましょう」と言うと「ひどい!」と言われることもあって……。
田村:どうやったら? 逆に皆さんなぜそんなに自信があるんですかね? 事実を事実として認めたくない理由は何だろう? と思っちゃいますね。事実は事実だよみたいな。それに事実は絶対変えられないものなので、事実を受け止めないほうがデメリットですよね。
——はっ、確かに。
田村:事実を受け止めた上で、「じゃあどうしよう?」って他の解決策を考えていかないと。
——ほんとそうですね。最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
田村:消極的なメッセージになっちゃうのかもしれないですけど、生きていく上では自分以外の誰かの評価をもらわないと生きていけないのは、悲しいけど現実なので。それを受け止めた上で、自分がどうやったら楽しく生きていけるか? どうやって動いたらいい感じになるか? を考えて生きていったほうが人生ハッピーになると思いますよ、というのを伝えたいですね。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)
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情報元リンク: ウートピ
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