いま、20代・30代でも高血圧に悩む人が増えていると言われます。そこで、「高血圧と言われた、どうする?」と題し、日本臨床内科医会常任理事で同会認定専門医の正木初美医師に連載でお話しを聞いています。
第1回は、高血圧と診断される基準について詳しく伝えました。今回は、病院や家庭で測定したときに、それぞれ数値が違う理由や、「白衣高血圧」、「仮面高血圧」、「持続性高血圧」と呼ぶ状態の特徴について尋ねます。
診察室で測定すると数値が上がる「白衣高血圧」
——第1回では、血圧はそのときどきで大きく変動すること、診察室で測定する「診察室血圧」は問診と数回の計測を、家庭で測る「家庭血圧」は5~7日の測定値を平均して判断するということでした。診察室血圧と家庭血圧はそれほど違うのでしょうか。
正木医師:かなり違うことがわかっています。家庭で血圧を測るといつも130/80mmHg未満なのに、受診して診察室で測ったときは高血圧基準の140/90mmHg(第1回参照)を超える人は多いのです。こうした例をどう診断するか、ずいぶんと研究がつくされています。
診察室血圧が家庭血圧より高くなるケースを「白衣高血圧」といいます。血圧は興奮や緊張をすると上昇するため、診察時に緊張して血圧が上がる現象をこう呼んでいるのです。自覚はなくても、一般に多くの人に現れます。
そして、診察室血圧が高くても家庭血圧が正常であれば、薬による治療の必要は当面はないということがわかってきました。
白衣高血圧と逆の「仮面高血圧」のケースも
——病院で測ると血圧が上がる…経験があります。ただ、白衣高血圧とは逆に、家庭では高いのに、診察室では正常値だという現象もあるそうですね。
正木医師:あります。家庭や職場など日常では高くなるのに、病院や健康診断で測ると正常だという状態です。これを「仮面高血圧」といいます。診察時には高血圧が隠れていることからこう呼ばれます。
——なぜ、そうなるのでしょうか?
正木医師:このケースは、高血圧と診断されて薬を飲んでいるけれど、薬の効きが良くないことが原因だと考えられています。例えば、朝に薬を飲んで血圧が下がっているときに診察を受けると診察時血圧は低くなりますね。ですがその後に薬の効用が切れて血圧が上がり、職場や帰宅時に計測すると高血圧になっているという状態です。
それに、職場や家庭でのストレスが強い、喫煙や飲酒をしている場合は、むしろ受診中のほうが緊張がゆるみ、タバコやお酒の影響がないので血圧が下がる可能性があります。
——では、診察室血圧・家庭血圧の両方とも高い場合はどのように診断されるのでしょうか。
正木医師:第1回で紹介した基準に従い、診察室でも家庭でも適正値より高い場合を「持続性高血圧」といい、高血圧症と診断されます。
仮面高血圧は危険
——白衣高血圧、仮面高血圧、持続性高血圧…どの状態がもっとも危険なのでしょうか。
正木医師:高血圧の治療では、24時間いつでも血圧が適正値になることを目標とします。
高血圧がなぜ危険なのかは後の回で順を追って説明しますが、まず、仮面高血圧の場合は、持続性高血圧と同じくらいに脳卒中や心筋梗塞(こうそく)を発症しやすいことがわかっています。そのため、薬による治療が必要です。
また、診察室では血圧が正常であることから自覚にとぼしく、気づかないうちに血圧が急上昇して脳や心臓の病気を起こすリスクが高いのです。その点で、仮面高血圧がもっとも危険だと言えるでしょう。
その仮面高血圧の場合、家庭血圧を測っていれば血圧の上昇に気付きやすくなります。とくにストレスが強い人、喫煙する人、お酒を多飲する人、アスリートなど身体的活動度が高い人は仮面高血圧になりやすいことを知っておきましょう。
持続性高血圧の場合は、すでに高血圧と診断されて治療を開始していると思われます。かかりつけ医と相談のうえ、常にコントロールするように、薬の服用、食事をはじめとする生活習慣の改善が必要です。
白衣高血圧の場合は、将来に治療が必要な高血圧になる可能性が高いことがわかっています。そのため、家庭血圧に注視しながら生活習慣を見直して定期的に受診しましょう。
——白衣高血圧、仮面高血圧、持続性高血圧とも、一度は受診をしたから判明したことですよね。
正木医師:そうです。実は、高血圧はどこかが痛いとかかゆいとかいう症状がない病気です。そのため、自身が高血圧であることに気づかず、そもそも血圧を測っていない、受診をしていないということが最大に危険です。多くの研究で、そういう人が高血圧を疑われる人の約半数存在することがわかっています。思いあたる人も多いのではないでしょうか。それについてものちの回でお話ししましょう。
聞き手によるまとめ
血圧は病院で測る診察時血圧と、自宅で測る家庭血圧ではかなりの差があり、白衣高血圧、仮面高血圧、持続性高血圧という状態があるということです。それぞれの違いや特徴を理解し、定期的に血圧測定をしておきたいものです。
次回・第3回は、家庭血圧の適切な測り方などについて紹介します。
(構成・取材・文 品川 緑/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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