ビジネス用語やIT、医療など専門用語の意味や使用例について、大正大学表現学部の教授で情報文化表現が専門の大島一夫(おおしま・かずお)さんに、編集スタッフの藤原椋(ふじわら・むく)が連載で尋ねています。
今回・第5回は、メディアや広告、ITの業界でよく耳にする「パブリシティ」という用語について詳しく聞いてみました。
「パブリシティ」は広告料が発生しない広報活動
「パブリシティ」は英語で「publicity」、直訳すると「宣伝・広報」や「注目・評判」といった意味です。一般に、広報や広告の業界用語として知られています。企業や団体が、商品やサービスをマスコミに売り込み、テレビや新聞、雑誌、ウエブなどのメディアで報道、紹介されること、あるいはその手法を意味します。
街の飲食店や物販店などがテレビや雑誌でよく紹介されていますが、そうした情報公開の方法のことですか。それは広告とはどう違うのでしょうか。
広告とパブリシティでは活動の手法が異なります。大きな違いは、費用の発生の有無です。広告は有償、パブリシティは無償です。
広告は、企業や団体がメディアの広告枠を購入し、商品やサービスの宣伝をする活動で、広告料が必要になります。それだけに、発信する情報の主体は企業側にあります。
一方、パブリシティは、企業や団体、店舗などから提示された情報、あるいはメディアが探しあてた情報を取材し、無償で報道する活動です。メディア側が責任をもって主体的にその情報を発信します。
テレビや雑誌の広告枠ではなくて、本編や記事中で情報として紹介された場合は、企業側から見たらパブリシティ活動の成果と言えるでしょう。
報道によって社会的信頼につながることも
企業や店舗など報道される側にとっては、メディアに無料で自社や製品の紹介をしてもらうことになり、情報を多くの人に発信できる点で大きなメリットがありそうです。一方の、報道するメディア側のメリットは情報収集でしょうか。
そうです。メディア側は企業などからのパブリシティ活動を通して多彩な情報を集めています。そして自社のメディアで、視聴者や読者に有益と思われる情報を選択して発信します。その関係には金銭授受がないこともあります。一般の人の話題にのぼりやすく、信頼を得ることにもつながり、結果的に、企業全体の宣伝になるでしょう。
パブリシティはPR活動のひとつ
パブリシティはPRとも違うのでしょうか。
PRは、「public relations(パブリックリレーションズ)」を略した用語で、直訳は「公衆との関係」です。企業や団体が消費者や取引先、地域住民と良好な関係を築くためのコミュニケーションを意味します。現実的な目的は、自社の存在や商品の広告、宣伝で販売を伸ばすことでしょう。パブリシティは、そうしたPR活動のひとつになります。
一般販売の新聞や雑誌に掲載される広告では、パブリシティを含む記事と区別するために、「広告」「PR」と明記されていることが多いですね。
ニュース・リリースを作成してメディアにアプローチ
企業や団体は、どのようにしてメディアにアプローチするのですか。
まずは、メディアで発信したい商品やサービスの概要を記した、「ニュース・リリース」や「プレス・リリース」と呼ぶ書面を作成します。文章と写真で発信したい内容を説明し、問い合わせ先を明記します。それを、広報担当者らがメディア各社に配布し、自社のウエブサイトにも掲載します。
ニュース・リリースがアップされている企業のサイトは多いので、確認してみてください。それを受け取ったり、自ら探したりしたメディア側は、情報を選択、構築して報道に備えます。
メディアに自社を認識してもらうためのニュース・リリースというツールがあるのですね。気になる企業の新商品のニュース・リリースをウエブサイトでチェックしてみます。
ビジネスシーンでパブリシティを使った会話例としては、「A社は、広告料をかけずにパブリシティ活動を積極的に行っている」といったところでしょうか。
そうですね。社内では例えば、「夏休みに開催するイベントをPRするため、広報担当がパブリシティを仕掛けた。おかげでBテレビ局、C新聞社、D雑誌、E ニュースサイトから取材を受けて掲載された」などと使用することができます。
「パブリシティ」の意味や用例、また、同じ意味ととらえがちな広告とPRとの違いを理解することができました。これからは企業や団体、店舗の具体的なパブリシティの手法にも注目してみます。
次回・第6回は「コンプライアンス」についてお尋ねします。
(構成・取材・文・イラスト 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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編集の仕事をしていると、「パブリシティで●●社の▲▲の製品を記事中で紹介しよう」といった会話が飛び交うことがあります。ただ、言葉の意味や記事にする仕組みがあやふやなまま、話が進むこともあるようです。
「パブリシティ」という言葉からは「パブリック」を連想し、「大衆・公衆」が思い浮かびますが、実際、どういった意味でどういう場で使われるのでしょうか。