読者から届く健康へのお悩みの声が多い「逆流性食道炎」について、兵庫医科大学病院の副院長で消化器病指導医・専門医、内科指導医の三輪洋人(みわ・ひろと)医師に連載でお話しを聞いています。
これまで、症状や原因、悪化するとどうなるのか、謎の痛み、改善に良い&悪い食事、運動法、生活動作などについてお伝えしました。それについては文末のタイトル一覧からリンク先の記事を参考にしてください。
今回と次回は、医療機関で内視鏡(胃カメラ)検査を受けた編集部スタッフS(38歳・女性)の経験談を含めて、診断や検査の方法について三輪医師にお尋ねします。
診断の第一段階の問診で聞かれること
——スタッフSは逆流性食道炎の症状があって医療機関を受診した際、次のような質問を受けたと言います。
・つらい症状を具体的に
・それはいつごろから起こっているか
・どのようなタイミングで起こるか
・つらさの程度はどうか
・症状の持続時間は
・症状が出る頻度は
・治療中のほかの病気はあるかなど既往歴について
・服用中の薬はあるか。薬にアレルギー症状が出ることはあるかなど薬について
三輪医師:まずはそうした症状などを聞き取る「問診」を行います。患者さんに記入してもらう「質問票」を用いることも多いでしょう。
医療機関でよく活用されているものとして、日本で開発された「Fスケール問診票(FSSG:Frequency Scale for the Symptoms of GERD」や、イギリスで開発されて日本でも有用性が確認されているGerdQ問診票(Gerdは胃食道逆流症のこと)があります。
——GerdQ問診票ではどのように診断されるのでしょうか。
三輪医師:症状に関する「胸やけ」「胃内容物の逆流」「上腹部痛」「悪心」の4項目と、生活への影響に関する「睡眠障害」「市販薬の追加服用」の2項目があり、過去1週間の頻度として「まったくない=0点」「1日=1点」「2~3日=2点」「4~7日=3点」のいずれかを選択してもらいます。6 問の合計として、18点満点中の8点以上で胃食道逆流症(逆流性食道炎・Gerd)と判定します。
逆流性食道炎では主に胸やけや吞酸(どんさん。酸っぱいものが込み上げてくる感覚)、胸がつかえるなどの症状が特徴的ですが、胃が痛い、のどや耳が痛い、咳(せき)こむなどを訴える患者さんもいます。そのため、症状のありようやその程度を細かく診察する必要があります。
胃酸を抑える薬を飲んで改善するかを観察
——この結果次第で、逆流性食道炎かどうかを診断されるのでしょうか。スタッフSは「内視鏡による検査をした」と言います。
三輪医師:GerdQ問診票の開発者らによると、この票による「Gerdの疑いありという判断」は64.6%、「疑いなし」は 71.4%であり、重症度の評価、治療効果の判定に有用であると報告されています。70%ほどは診断がつくという報告があります。ただし、症状のありようや程度によっては、口か鼻からビデオカメラ付きの細い管を挿入して食道、胃、十二指腸の内部を観察する「上部消化管内視鏡検査」を行います。
胸やけや呑酸(どんさん。酸っぱいものがのどもとまでこみ上げてくる症状)の症状があって、それほど強くはない、発症からの期間が長くない、悪性の疾患の徴候がないなどであれば、まずは内視鏡検査よりも先に胃酸の分泌を抑える薬を処方して、1~4週間の経過観察をするケースが多いです。
——経過観察とは、「胃酸の分泌を抑える薬」が効いて症状が治まるかどうかを観るということですか。
三輪医師:そうです。その胃酸の分泌を抑える薬とは、逆流性食道炎の治療の第一選択薬に用いる「プロトンポンプ阻害薬(PPI:Proton Pump Inhibitor)」です。この薬を適切に服用して症状が改善したならば、「その症状は逆流性食道炎によるもの」と診断することができます。これを「診断的治療」といい、薬品名から「PPIテスト」と呼ぶことがあります。
また最近、カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬(P-CAB: Potassium-Competitive Acid Blocker)というPPIより強力な薬が発売され、この薬剤で症状の変化をみる「P–CABテスト」も行われるようになりました。
——それらで改善すれば内視鏡検査をしないですむのでしょうか。
三輪医師:PPIテストは薬を飲むだけなので肉体的、時間的、費用的な負担がかからないというメリットがあります。
ただし、これまで一度も内視鏡検査を受けたことのない方は、どこかの時点で一度は内視鏡検査を受けておく必要があると思われます。胸やけや呑酸は逆流性食道炎だけではなくて、胃かいようや胃がん、食道がんなどの場合でも起こることがあります。しかもPPIやPCABの薬で改善することもあるため、こういった重篤な病気を見逃すことがないように十全な注意をしましょう。
聞き手によるまとめ
逆流性食道炎の診断には、専用の問診表を用いて細かく症状を分析する、軽症の場合はPPIやP–CABという胃酸を抑える薬を飲んでみて改善したかどうかを観察する診断的治療を行うということです。
次回・第14回は、内視鏡検査の具体的な方法について紹介します。
(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)
- 逆流性食道炎かも…病院ではどう診断する? 【専門医に聞く】
- 燃えるような胸やけ、重苦しい胃痛…逆流性食道炎の症状【消化器病専門医に聞く】
- 猫背は大敵! 逆流性食道炎を改善、予防する運動はある?【専門医に聞く】
- 寝ると胸やけがつらい! 逆流性食道炎を軽減する4つの就寝中の姿勢とは?【専門医に聞く】
- ウォーキングはいつする? 脂肪が燃焼しやすい時間帯【糖尿病専門医が教える】
- 逆流性食道炎かも…病院ではどう診断する? 【専門医に聞く】
情報元リンク: ウートピ
逆流性食道炎かも…病院ではどう診断する? 【専門医に聞く】