体や頭、メンタルに不調があるけれど、いったい何科を受診すればいいの? と迷うことはありませんか。消化器内科、循環器内科、脳神経外科、気管食道科……大規模な病院には複数の診療科があります。
わかったようでわからない病院の各々の診療科の取り扱う症状や病気、治療法から注目の最新情報まで、診療科ごとに、「この不調、何科へ行けばいい? 診療科ナビ」と題して連載にて紹介していきます。
第1回は、もっとも身近な不調のひとつ、胃やおなかが痛いときの専門の診療科「消化器内科」について、兵庫医科大学病院の副院長で消化器病専門医・指導医の三輪洋人(みわ・ひろと)医師に尋ねます。
消化器ってどこ?
——読者から、「かかりつけ医から『肝臓が良くない』と、大学病院の消化器内科を紹介されたけれど、何をするのだろう?」「そもそも、消化器ってどこ?」という質問が届いています。
三輪医師:消化器とは、口、のど(咽頭・いんとう)、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)、大腸、肛門管まで続く消化管と、これらにくっついて消化液を分泌する肝臓、胆嚢(たんのう)、膵臓(すいぞう)からなります。食べる、消化する、栄養を吸収する、老廃物を排泄するといった役割があります。
消化器内科とは「内科系」のひとつで、これら消化器の部位の病気を取り扱う診療科です。
「肝・胆・膵内科」もある
——消化管は長いからか、消化器内科では扱う部位が多いのですね。
三輪医師:消化管は、口から肛門まで約10メートルもあります。そのため、症状によっては、消化器内科とは別に、肝臓の病気を扱う「肝臓内科」や、肝臓と胆嚢と膵臓を診察する「肝・胆・膵(かん・たん・すい)内科」、またそれぞれの臓器を検査する「内視鏡科」などを設けている病院もあります。
および、消化管のうち、食道・胃・十二指腸(小腸のうち、胃にもっとも近い部位)までを「上部消化管」、小腸(十二指腸以外)と大腸を「下部(かぶ)消化管」といいます。私の専門は上部消化管ですが、大規模な病院では消化器内科の中でも上部と下部に分けて専門的に診察を行います。
——肝臓や胆嚢、膵臓も「消化器」なのですね。それで先ほどの読者の質問の「肝臓の不調で消化器内科を紹介された」という理由がわかりました。
消化器内科で症状、病気は?
——消化器の中で不調が起こりやすいのは、おなかだと思います。とくに、便秘、下痢、なんとなく胃が重苦しいなどでも、消化器内科で診察してもらえるのでしょうか。
三輪医師:もちろんです。街の診療所である医院やクリニックでも、消化器内科を掲げているところもあります。また、消化器のうち、胃と腸を中心に診る「胃腸内科」もあります。
かかりつけの内科がある場合はまずはそちらを受診されると、医師が専門的な検査や治療が必要だと判断した場合に、大規模な病院や大学病院の消化器内科を紹介します。
——大学病院の消化器内科には、どのような症状で訪れる人が多いのでしょうか。
三輪医師:胃やおなかが痛い、おなかが張る、食欲がない、むかむかするなどの方が多いです。また、下痢でも食べ過ぎや飲み過ぎではなく長く胃の重苦しさや胃痛が続いている、胸やけや吐き気、げっぷがひどい、便の状態が異常などと訴える方もいます。また、健康診断で異常を指摘されたので検査をという方も多いです。
ここ10年で増加しているのは、胃食道逆流症(逆流性食道炎・非びらん性逆流性食道炎)です。
消化器内科ではどのような治療をする?
——消化器内科で扱う病気にはどういったものがあるのでしょうか。
三輪医師:主に、消化管の炎症や感染症、胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、胆石症、胃食道逆流症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、腸閉塞(へいそく)、潰瘍性大腸炎、大腸憩室(けいしつ)炎、下痢、便秘、食道・胃・十二指腸・大腸のがんなどがあります。
——がんの治療は外科で行うのではないのですか。
三輪医師:開腹手術は消化器外科で行います。内科では、炎症や潰瘍、ポリープ、がんなど、病気の原因を見極めるために内視鏡などによる検査と、内服薬による治療、抗がん剤治療、またがんでも早期の場合など病状によっては内視鏡による治療を行います。
——内視鏡によるがんやポリープの治療とはどうするのでしょうか。
三輪医師:内視鏡とは先端に撮影器具と、鉗子(かんし。はさみやナイフのような形をした手術用道具)などがついた細い管状の医療機器です。上部消化管の検査には口か鼻から、下部消化管は肛門から挿入し、ポリープや早期のがんなどの病変を取り除く治療が可能です。
いま、AI(人工知能)による内視鏡検査と治療法が開発されており、今後はますます、早期の病変の発見や治療が可能になっていきます。
消化器の病気は、がんであっても早く発見することで内科での治癒が可能です。この場合、体にメスを入れる必要がないということです。便秘や下痢、吐き気、げっぷでも、長く続く、また症状が強いときは何かの病気が隠れている場合があるので、体からの警告だと気づいて早めに受診をしてください。
聞き手によるまとめ
体調不良の中でも、おなかが痛い、胃が苦しい、吐き気がする、食欲がないといったよく体験する症状は、消化器内科を受診するケースが多いということです。また消化器の場合、もしもがんであっても早期に発見すれば、開腹手術ではなく内視鏡による治療が可能だといいます。胃腸の不調が続くとき、市販薬でだましだまし過ごすのではなく、早めに消化器内科を受診したいものです。
なお、胃食道逆流症については三輪医師に詳しく尋ねた次の記事、「燃えるような胸やけ、重苦しい胃痛…逆流性食道炎の症状を消化器病専門医に聞く」を参考にしてください。
(構成・取材・文 海野愛子/ユンブル)
- 燃えるような胸やけ、重苦しい胃痛…逆流性食道炎の症状【消化器病専門医に聞く】
- ウォーキングはいつする? 脂肪が燃焼しやすい時間帯【糖尿病専門医が教える】
- 消化器内科って何をするところ?【専門医に聞く】
- ラーメンを食べると鼻水が出るのはなぜ? 食事中に抑える方法【耳鼻咽喉科専門医が教える】
- 歯科恐怖症!? 歯がボロボロなのに大人でも歯医者に行けない原因は【歯学博士に聞く】
- 生理がきていても排卵しているとは限らない…排卵日をチェックする方法は?
情報元リンク: ウートピ
消化器内科って何をするところ?【専門医に聞く】