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「隠されている感じ」が嫌だった。安彦家の性教育を助けた『こっちむいて! みい子』

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『生理終了!~恋愛マンガ家が50歳になったら人生こうなる~』をコミックサイト「ウーコミ!」で公開中の漫画家・安彦麻理絵さんと、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)、『月経と犯罪 “生理”はどう語られてきたか』(平凡社)などの著作をもつ歴史社会学者の田中ひかるさんの対談。

安彦さんと田中さんはほぼ同年代。ということで、 “麻理絵ちゃん”“ひかるちゃん”の間柄で、閉経と更年期についてざっくばらんに語り合っていただきました。

閉経や更年期なんてまだ先の話、と思うかもしれません。

しかし、生理に関する情報がアップデートされていく昨今、閉経や更年期のことだって事前に知っておくことで、気持ちがラクになることだってたくさんあるはず。連載の第2回です。

(左から)安彦さんと田中さん/イラスト:安彦麻理絵

(左から)安彦さんと田中さん/イラスト:安彦麻理絵

「生理の貧困」は経済的な理由だけではない

——前回は、月経カップや吸水ショーツ、ピルなど、生理を少しでもラクにするためのアイテムはどんどん使っていこうというお話で終わりました。

田中ひかるさん(以下、ひかる):選択肢があるということを知っておくのは大事ですね。でも、月経カップにしろ、サニタリーショーツにしろ、それをちゃんとケアできる、メンテナンスできる環境じゃないと日常的に使うのは厳しいと思う。

——経済的な理由などで生理用品を入手することができない状態をさす「生理の貧困」が話題になると、「使い捨ての紙ナプキンが買えないなら、月経カップや布ナプキンなど、繰り返し利用できる代替品があるじゃないか」という声が出たりもしますよね。

ひかる:月経カップも布ナプキンも、繰り返し使うからには洗浄や洗濯など手入れが必要です。「生理の貧困」の状態にある人は、ほかの面でも制約があるでしょうから、そういった手間がかかるものを衛生的に使えるとは限らない。不衛生な経血処置は、感染症などの問題を引き起こしますから、特に生理が始まったばかりの小中学生には、使いやすくて清潔なナプキンが、いつでも手近にあるような環境を整えてあげてほしい。

安彦麻理絵さん(以下、麻理絵):私、衝撃的だったんですよ、「生理の貧困」問題。親がネグレクトでナプキンを与えないなんて。

ひかる:ナプキン買ってもらえない子は、ブラジャーも買ってもらえないことが多いみたい。

——それは経済的な理由……ではなく?

ひかる:はい。ネグレクト、もしくは積極的ないやがらせです。ナプキンがないと困る、ブラジャーがないと困るとわかっているのに、親が知らんぷりしてる。

麻理絵:私も、実家の母親がそれでしたよ。なかなかブラジャー買ってくれなかった。娘の成長から目を背けてたっぽいなって思う。

ひかる:子どもと性について語りたくない、語るのが恥ずかしいとか?

麻理絵:そうそう、そういうのがあると思う。友達の漫画家Nちゃんは、母親から「胸が出てきて気持ち悪い」って言われたことあるって言ってた。

——親も、自分が体験したことないことはできなかったりするじゃないですか。ネグレクトする母親は、自分も親からそういう目にあってきたのかもしれません。

麻理絵:でも私は親にブラジャー買ってもらえなかったのが嫌だったから、絶対自分の娘には同じことしたくないって思ったわ。

ひかる:麻理絵ちゃん、一番上の娘さんはいくつ?

麻理絵:大学4年生なのよ。私はバツイチで、一番上の娘とは離れて生活してたんですよ。元夫が「生理きたみたいだよ」とメールくれたり、新しい奥さんがブラジャー買ってくれたりしていたので、直接自分で何かをすることはできなかったけど、次女は今小学校4年生。そろそろ初潮も始まるタイミングなので、いろいろ話そうと思うんだけど……この漫画、『こっちむいて! みい子』にめっちゃ助けられてる!!!

ひかる:漫画のカバーがボロボロ。すごい年期入ってるね(笑)。

写真提供:安彦さん

写真提供:安彦さん

安彦家の性教育は『こっちむいて! みい子』で

麻理絵:1995年から月刊少女漫画雑誌の『ちゃお』で長期連載している漫画作品なんだけど、長女はじめ、中2の長男、小6の次男、小4の次女まで、子どもたち全員が大好きで。作者のおのえりこ先生が、漫画の中で生理のことやおりもののこととか、その他性教育全般についてを本当に普通に描いてくれているのよ! うちは性教育全般、『みい子』に助けられています。

ひかる:『みい子』が、性教育の役割を担ってくれているんだ。

麻理絵:今回、資料として『みい子』を持ってくるにあたって、子どもらに「生理の話描いてあるのって何巻だっけ?」って聞いたら、中2の長男が「持ってきたよ」ってこの巻を渡してくれたくらい、みんな熟読してる(笑)。

ひかる:家庭のそういう雰囲気は大事だよね。

麻理絵:長男にいきなり「セックスって何?」って聞かれたときも、一瞬ビックリしたんだけど、「全部『みい子』に描いてあるじゃん」って言ったら、「そうだねー」って。私以外にも、『みい子』が全部性教育やってくれたってツイートしている方がいて、本当に作者のおの先生には感謝しかない。

ひかる:麻理絵ちゃんちはすっごくオープンで、それは理想的なことだと思うし、その手助けをしてくれてるのが『みい子』なんだね。

麻理絵:自分が子どものころ、なんか「隠されているみたいな感じ」が嫌だったからでしょうね。ひかるちゃんのとこは? ひかるちゃんの本とか読んだりしてるの?

ひかる:うちはねー、漫画は読むけど本は読まなくて(笑)。始業前に本を読む「朝読書」に持ってけって言っても持っていかない。

麻理絵:ひかるちゃんの書く本、面白いのにね。『生理用品の社会史』とか読んでると、なんかキャスティングしたくなるんだよ(笑)。泰子(よしこ*)は私の中では沢口靖子。電機会社の社長は小林稔侍にしか思えないし、ナプキンのモニターは伊藤かずえかな。

*泰子(よしこ)…1961年、“元祖”使い捨てナプキンである「アンネナプキン」を開発・販売したアンネ社の社長・坂井泰子(よしこ)。当時27歳。広告によって生理のネガティブなイメージを払拭し、月経観を大きく変えた。

ひかる:ぜひ、朝ドラに! それにしても電機会社の社長は当時まだ30代だよ。モニターが伊藤かずえさん?? 謎のキャスティング(笑)。

麻理絵:そういえば、うちの母親はアンネナプキン使ってたのかな? アンネナプキンが登場したとき、14歳くらいだったはず。

ひかる:脱脂綿からアンネナプキンへの移行期間を知ってるかもしれない。私たちもギリギリ「アンネ」という言葉を耳にしてたよね。

——ちょっと話がずれますけど、今、性教育が注目されていますよね。シオリーヌさんはじめ、いろいろな方が性教育YouTubeチャンネルを開設したり、SNSで発信したり。良いことだと思う反面、家庭でも正しい性教育を子どもにしなければならないというプレッシャーも生まれてしまうんじゃないかと。追い詰められないようにするにはどうしたらいいと思いますか?

ひかる:たしかに、「性教育どうしよう」と悩む親御さんも多いでしょうね。だからこそ、最低限のことは義務教育でちゃんと教えてほしい。父子家庭で生理のことを教えづらいケースもあるし、お母さんが生理痛は我慢するものと思い込んでるケースもあるし、それこそ生理用品を買ってくれない親もいる。家庭に任せちゃうのはどうなのかなって思います。

麻理絵:うちも、長女が『みい子』読んでくれてなかったらどうなっていたことか……。家庭内で頑張りすぎず、子どもが自然に性教育の本を手にとれる環境にしておくといいかもしれない。

*画像はイメージです

*画像はイメージです

笑福亭鶴瓶がナプキンのCMに出てきて…

麻理絵:ところで、生理用品のCMで印象深かったのってある? 私が衝撃受けたのは、1980年代に笑福亭鶴瓶がナプキンのCMに出てきたとき。「なんだこりゃ!?」ってギョッとした(笑)。

ひかる:元キャスターの女性が週刊誌で「欧米の一流の女優は生理用品のCMなんか出ない」と言ってたくらい、女の人でも出るのに抵抗があった時代だよね。

——ここ十年くらいは、若い男性俳優が出ているケースもありますね。2011年には、溝端淳平さんが「エリス ウルトラガード」のイメージキャラクターになったりも。

麻理絵:そうなんだ、全然知らなかった! 時代は変わったのね。でも、逆にタンポンのCMって見なくなったよね。昔、「タンパックスタンポン」のCMがあったと思うんだけど。

ひかる:タンパックスタンポンは2001年に輸入販売が終了して、日本から撤退しちゃった。今、日本でタンポンの製造販売を行っているのは、ユニ・チャームだけですよ。2000年あたりって、タンポン人口がガーッと減った時期。ナプキンの進化とともに、「ナプキンはイマイチだからタンポン派」だった人たちが減ってきたんでしょうね。今の20代はタンポン使用率低いよ。

麻理絵:うちの娘も使ってないだろうな。

ひかる:必要ないんだろうね。今のナプキンは性能いいし、生理中にプールに入ることを強制する学校も減ったし。

麻理絵:ほんと、ナプキンの性能は上がってると思う。昔は羽根つきとかなかったもん。裏に細いテープがついてるだけだった。

——生理用品は確実に進化してますよね。女性器につける、というか挟む製品とかありますし。ナプキンと併用するとより安心感が増すという。

ひかる:「シンクロフィット」ですね。発売されたのは15年前なんですが、最近ネットで話題になり、愛用者が増えてます。

麻理絵:女友達と「あのナプキンいいよね」なんて情報交換をしたことなんてないわよ、私。今はネットで情報が入りやすくなっていて羨ましい!

(構成:須田奈津妃、編集:安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
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