英文学・女性学研究者の田嶋陽子さんがインターネットテレビ局「ABEMA」で5月1日に配信される『Wの悲喜劇』にゲスト出演。「怒れるフェミVSフェミ嫌い #わきまえないオンナたちの大激論SP」と題して、MCのSHELLYさんをはじめりゅうちぇるさんらとトークを繰り広げます。
令和と元号が変わってもうすぐ丸2年。コロナ禍で私たちの生活や働き方は一変し、時代はどんどん変わっていっているのに男女格差やジェンダーをめぐる状況は昭和からあまり変わってないような気も……。
このほど収録に臨んだ田嶋さんにお話を伺いました。前後編。
炎上が怖い
——「ジェンダー問題や女性の生きづらさに理解をしないヤツは悪いヤツだ」という風潮もあいまって「正しいフェミニズム」「フェミニストかくあるべし」という圧を感じる場面を見かけることがあります。
田嶋陽子さん(以下、田嶋):それは学校に行って? 地方で? どこでどんなふうに?
——主にSNSで。Twitterでフェミニズムに関する議論が活発なので。中には「教えてやる」という感じの人もいて、それをみると「なぜ、あなたから……?」と思ってしまうんですよね。
田嶋:そんなのタチ悪いよね。一緒に考えようならまだいいけどね。教えてあげましょうという人は上から目線でパトロナイズする人だから、一番良いのは、相手にしないことかな。「ありがとうございます、参考にさせていただきます」でいいんじゃないかな。悪意に満ちた文章とか、攻撃のための攻撃みたいなのは無視してもいいんじゃないかな。でも、そういうのにはちゃんと答えたいの? 頭に来るの?
——頭に来るというか、ウートピというメディアを運営している立場としてちゃんとそういうことも想定しないといけないと思うんです。
田嶋:その文章はあなたを名指しできてるの? 名指しではきてないのね。よくそんなのに答えようとするね。無視できないの?
——今日の収録でウートピ編集長の鈴木円香が言っていたように、記事を掲載するときに変なふうに炎上したら嫌だな、とか攻撃されたらどうしようと思ってしまうんです。
田嶋:されればいいじゃん。
——されていいんですか?
田嶋:当たり前だよ。だって攻撃されるってことは、言ってみれば議論をふっかけられたわけでしょ? お前の言うことは違うって言ってきたら、そのときこそきちんと反論しないと。攻撃されるのを待ってなきゃ。そうしたら、私はどこがおかしいの? どこでみんなを刺激しちゃったの? って考えれば、次書く文章の役に立つと思うんだけど。違う?
——田嶋先生はずっとそれをやってきたわけですよね。
田嶋:私は個人攻撃と攻撃のための攻撃みたいな文章は無視しましたよ。ただ攻撃というのか、反論されないと、敵が分からないじゃない。攻撃されたら、よしよしやっときたなって。「お前の言うこともよく分かる。よく分かるけど、お前、ここがおかしいだろ?」って、きちんと指摘しなきゃ。自分が指摘できないと相手に負けるから、勉強しなくちゃってなるし。おっかながるんじゃなくて、精一杯自分を出してみる。全部出してみる。そうやって、相手の反論に対してきちんと答える。そういう練習をしていかないとね。フェミニズムってそうやって太っていくんじゃないかな。
——その練習をしてこなかったかも……。
田嶋:やってきてないと、議論したときにすぐやられちゃうんでしょ?
——はい。練習が足りてなかったのか。
田嶋:そうそう。練習しなきゃ。良い訓練の場だよね。私ならそう思うけどね。中にはどうしようもなく頓珍漢(とんちんかん)もいるからそういうときは無視しちゃうといい。お前、フェミニズムの「フェ」の字も分かんない。せめて、「フェミニ」くらいまで分かってから何か言ってこいよって思うけどね。でも反論していって練習してみたら?
——そうですね。それさえ怖くてやってなかったのかもしれない。
田嶋:攻撃に弱いんだ。
——そうなんです。
田嶋:まあ、誰でもそうだけど。攻撃された経験あるの?
——ないです。
田嶋:そうか。
——記事を出したときに攻撃がきたら、会社に迷惑がかかるんじゃないかと考えちゃうんです。
田嶋:そんなの「会社命(いのち)」の変な男と同じだよ。それでみんな会社の奴隷になっていくんでは。
——はい。田嶋さんとお話していて、まだ何も起こっていないのに頭の中ですごく勝手にシミュレーションして怖がってたんだなって思いました。
田嶋:まだ起こってないことにあれこれどうしようって思う人はたくさんいるよね。そんなのは行動したあとで考えればいいじゃないって。用心深さが時には女性に必要とされてきたかもしれないけれど、とにかく今は目の前にあることを完璧にすることを一生懸命やって、失敗したら次を考える、しかないよね。やる前から「こうなったらどうしよう」と考えていると、エネルギーをそがれて前へ進めないんだよね。
みんなフェミニズムを自分の中に持っている
——そうですね。もう一つ、よろしいでしょうか? 例えばフェミニズムに関する記事を掲載するときや会議で話すときに「私はフェミニズムを専門的に学んだわけではないのに、こんなことを言ってもいいのだろうか?」と思ってブレーキをかけてしまうんです。
田嶋:その気持ちも分かる。でも本質的に私たち人間は、女性男性の区別なくすべての人はみんなフェミニズム精神を持ってるんだよ。人間として生まれた人は、みんな自立して一人の人間になりたいって、他の人もそうだといいなって思ってるの。そんな思いにいろんな思想で火をつけられるわけよ。フェミニズムもその一つ。みんなフェミニズムを自分の中に持っている。だから早いも遅いもないの。長くフェミニストをやってる人でも、今の社会に上手に適応している人や恐がりの人は、フェミニズムを自分の中で生かしたくない人もいる。
フェミニズムなんて言葉を知らない人でもフェミニズムの生き方をしてる人もいる。勉強した長さじゃないの。その人がどうありたいかなの。だから、フェミニズムで人を差別しちゃいけないし、されてもいけない。いくら長くやってても、フェミニズムが自分の血となり肉となっていない人もいるんじゃない。とにかく男女間の差別は人類の中で一番大きな差別で、文化や社会システムそのものだったし、変えるのはそれこそ大変!
“森さん的な人”への接し方
——今回の収録でも森さんの発言*が話題にのぼりました。例えば会社や身近なところで森さんみたいな発言をする人もいるし、そういう発言にちゃんと抗議してこなかった自分たちの責任もあるんじゃないかなと思いました。でも、日本って空気に弱い国なので逆手にとって「え? 何言っちゃってるんですか?」って言っていく空気をつくっていけばいいのかなと考えているんですが、田嶋さんはどう思われますか?
田嶋:それいいね。一つ言葉を決めておいてさ。「あ! 出たね」とか、何でもいいから、相手に「それ違うんだよ」って伝えるための気のきいた言葉があるといいよね。説教しなくてもいいから助かるよね。なんか相手を傷つけないような言葉でね。
——自分もついうっかり言っちゃうことありますもんね。
田嶋:そうそう、「あ、また言っちゃったな。反省」とかね。そういうふうになっていくといいよね。大説教しなくたってね。
——さっき田嶋さんがおっしゃっていたように一緒に考えていければいいですよね。対立しなくても。
田嶋:そう、ユーモアで解消できたらいいね。相手もバカじゃないから、今何がはやってるのかがキャッチできていれば、背中をポンとたたかれただけで、「変なこと言った」って気づいてもらえるだけでもいいじゃない? そういう人たちが仲間になってくれれば生きやすくなるよね。だからいろんな方法があると思うよ。
*東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗元会長の女性蔑視発言問題
■番組情報
男子は見なくて結構!男子禁制・日本一過激なオンナのニュース番組がこの「Wの悲喜劇」。さまざまな体験をしたオンナたちを都内某所の「とある部屋」に呼び、MC・SHELLYとさまざまなゲストたちが毎回毎回「その時どうしたのか?オンナたちのリアルな行動とその本音」を徹底的に聴きだします。
Wの悲喜劇「怒れるフェミVSフェミ嫌い #わきまえないオンナたちの大激論SP」は2021年5月1日(土)午後10時から放送。
(聞き手:ウートピ編集部・安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
「みんなフェミニズムを自分の中に持っている」田嶋陽子に議論を学ぶ