読者(34歳・女性)の悩みにお答えし、「まさかの糖尿病予備群…健診で診断されたら」と題する記事を連載しています。第1回からお話しを聞いている、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある糖尿病専門医・臨床内科専門医の福田正博医師は、第7回で「腹やせウォーキング」を、第8回ではウォーキングの前に行うと運動効果が高まるという「かるゆるスクワット」を勧めます。
さらに今回は、「家事や生活動作でもカロリー消費をしています。意識をして少しパワーアップした動きをすることで毎日の脂肪燃焼率を高めることができます」(福田医師)ということで、詳しいお話しを聞きました。
家事や生活動作の消費カロリーはどのぐらい?
福田医師は日ごろの腹やせウォーキングやかるゆるスクワットに加えて、「家事や生活動作をしながらの筋トレを積極的に実践しましょう。それにあたり、まずはそれらの動作がどれぐらいのカロリー消費になるのかを知っておきましょう」と話し、動作ごとのおおよその運動量について、次のように説明をします。
「医療の現場で運動療法を行うとき、『メッツ(METs)』という運動強度を表す単位を活用することがあります。座って楽にしている「安静状態」を1として、ヒトの動作の強度を示す数値です。具体的に、次のようになります」
・2.0~2.5メッツ……料理・洗濯・ベッドメイク・シャワー・歯磨き・洗顔・化粧・着替え・家の中での歩行・皿洗い・ゴミ捨て・ヨガなど
・3.0~3.5メッツ……掃除機をかける・床ふき・窓ふき・風呂掃除・ぶらぶら歩く・軽い筋トレ・階段を降りるなど
・4.0~4.5メッツ……階段を昇る・子どもと遊ぶ(歩く/走る)・介護動作・庭の草むしり・農作業・速歩き・自転車に乗る・など
・5.0~6.0メッツ……ペットと走る(活発)・かなりの速歩き・ジョギング・バドミントン・バレエなど
・8.0~8.5メッツ……重い荷物を運搬する・サイクリング・ランニング・クロールで泳ぐなど
また、メッツを使って、消費カロリーを計算することができます。
メッツ × 時間 × 体重(kg) ≒ 消費カロリー(kcal)
例)
・料理と皿洗い(2メッツ)を体重50㎏の人が1時間行った場合
2(メッツ))× 1(時間) × 50(kg) = 100(kcal)
・掃除機をかける(3メッツ)を体重50kgの人が20分行った場合
3(メッツ) × 1/3(時間)× 55(kg)= 55(kcal)
・子どもと遊ぶ(4メッツ)を体重60㎏の人が30分行った場合
4(メッツ) × 1/2(時間) × 60(kg)= 120(kcal)
「家事・生活動作ながら筋トレ」を実践
家事でのカロリー消費量がわかったところで、福田医師は、「これらの家事や生活動作を毎日だらだらとやり過ごすのではなく、意識して筋トレとして活用することをわたしは『家事・生活動作ながら筋トレ』と呼んで推奨しています。家事や生活動作を大げさな動きで行う、筋肉に負荷をかけながら動くということです。とくに、『どの動作でもパワーオンのポイントとしておなかに力を入れながら行う』ことが腹やせにつながります」と話し、次の方法をレクチャーします」
・洗面や皿洗いをしながら、ゆっくりとかかとを上げて、ゆっくりと下げる動作を繰り返す。
・掃除機、歯磨きをしながらゆっくりと大きく足踏みをする。
・テレビを観ながら、腕を前後に振りつつ「その場ウォーキング」をする。また、座っておしりで前後に移動する「おしりウォーキング」をする。
・段差や階段を利用して「踏み台昇降」をする。
・屋内で8の字を書くように歩く。まっすぐ歩くよりもターンをするときに筋肉に負荷がかかる。
・自宅でデスクワークなどで座りっぱなしのときは、30分に1回3分間、軽い運動や歩くだけでも筋トレとして有用。
毎日の家事・生活動作は腹やせウォーキングに匹敵する
厚生労働省は、メタボリックシンドロームの予防のために「3メッツ以上の身体活動を1週間に23メッツ×時間(単位はエクサイズ)行う」と提唱しています。福田医師はその実現について、こうアドバイスをします。
「単位や数字が細かいと覚えきれないので、大まかに、『腹やせウォーキングを毎日30分・休日には40分』、それに『かるゆるスクワットを毎日1・2セット』と今回紹介した『家事・生活動作ながら筋トレ』で、1週間の運動量をトータルするとそのぐらいになります。家事や生活動作を、わざわざ時間を取らずとも運動量を高める機会として利用しましょう」
前回、「100キロカロリーを消費するには、速歩きで23分」と教えてもらいましたが、今回のメッツを利用した計算によると、料理と皿洗いを合わせて1時間行うのと同じぐらいの運動量だということがわかりました。洗顔や化粧、入浴、掃除など家事や生活動作を組み合わせると思いのほか、カロリーを消費しているようです。
「家事や生活動作は積み重ねなので、1日の量は腹やせウォーキング20~30 分ぐらいのカロリー消費になります。さらに、前に紹介した食事法(第7回)を組み合わせると、しんどくない自分のペースでの『3カ月で体重3%ダウンのゆるダイエット』(第6回)で内臓脂肪の燃焼が可能になります。それぞれの運動が相乗効果を生んで基礎代謝がアップする効用もあります。脂肪が燃焼しやすい体になるわけです」(福田医師)
聞き手によるまとめ
日ごろの動きを筋トレとして応用すること、その具体的な運動量もわかり、「ながら筋トレ」のやる気がアップしたのですぐに実践してみました。3日ほど意識して続けていると、いつしか自然に、歯磨きや料理、お皿洗い中に、デスクワーク中でも足踏みやかかと上げトレーニングをするようになっていました。おしりウォーキングは、けっこうおなかやおしりの筋肉に効いているのがわかります。試してみてください。
次回・第10回は、基礎代謝と1日の食事量、運動量のバランスについて考えます。
■これまでの連載を読む
【第1回】私がまさかの糖尿病? 血液検査のどこを見ればいい?
【第2回】肥満とメタボの計算式で体型を確認! 脱・糖尿病予備群のためにできること
【第3回】3年以内に糖尿病になる…? リスクをセルフチェックする方法
【第4回】おなかのぜい肉は内臓脂肪? 皮下脂肪? 体に悪いのはどっち?
【第5回】脂肪が気になる体型はリンゴ型?洋ナシ型? メタボの診断基準は?
【第6回】3カ月で体重3%ダウンを目標に…内臓脂肪の減らし方
【第7回】内臓脂肪を減らしたい! 腹やせウォーキング法
【第8回】「かるゆるスクワット」で内臓脂肪を減らし、腹やせを実現!
(構成・取材・文 藤井空/ユンブル)
- 内臓脂肪を減らしたい! 腹やせウォーキング法【糖尿病専門医に聞く】
- ウォーキングはいつする? 脂肪が燃焼しやすい時間帯【糖尿病専門医が教える】
- 3年以内に糖尿病になる…? リスクをセルフチェックする方法【専門医が教える】
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情報元リンク: ウートピ
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