以前、こちらの記事でも、取り上げた「ボディポジティブ」という言葉。最近は、ずいぶん浸透して女性誌などでも目にする機会が増えました。
「ボディポシディブ」には、「美しさの基準は人それぞれ。ありのままの自分のからだを好きになって、自信を持って」というメッセージが込められています。自分が心地よい下着、自分が選んだ好きな下着を身に着けることがありのままの自分を受け入れることにつながると、私は信じています。
一方で、「下着について話すのは恥ずかしい」「下着の話は人前でするものではない」と思う人がまだまだ多いのも事実。そのせいで、誰にも相談できず、ずっと下着の悩みやからだの悩みを抱えることにもなっているようです。
そんな思い込みに縛られることなく、自分らしい選択ができる大人になるためのファーストステップの場となっているのが、ワコールの「ツボミスクール」。ワコールが行っている下着教室で、ファーストブラを手にする思春期の女の子とその保護者を対象に、科学的なデータに基づいて下着や変化する体形について正しい知識を伝えています。
ワコールがツボミスクールを通して女の子たちや大人に伝えようとしていることとは? 講師を務める増田亜紀子(ますだ・あきこ)さんに聞きました。
「変化していくからだの成長を肯定してあげて」
「ツボミスクール」がスタートしたのは2001年。それまでは高校や大学で下着教室を開催していましたが、学生たちからの「もっと早く知りたかった」という声に応えて、小中学生を対象に行うことに。
現在は学校などからの依頼を受け、小学4年生から中学3年生の女の子とその保護者を対象に、ワコール人間科学研究所のデータをもとにからだの変化やブラジャーについて話しています。下着の販売は一切ありません。
この20年の間に約16万人以上が受講している「ツボミスクール」。そのほかに、成長期の女の子のからだの成長やブラや下着について、自宅からオンラインで学べる「ワコールの学ブラ(まなぶら)講座」もスタートしています。
増田さんは「自分のからだを大切にしましょう、下着にはからだを守る大切な役割がある」と、ただ下着の知識を伝えるだけでなく心に寄り添うことを心掛けているといいます。そして、保護者には「変化していくからだの成長を肯定してあげて」とのメッセージも。
「子供たちは、自らの変化するからだに戸惑いや不安を抱えている。そこに保護者の方の『もう胸がふくらんできたの』『もう生理がきたの』など、『もう』という言葉が、子供にとってマイナスに捉えてしまうケースがあります。『おめでとう、胸が膨らんできたんだね、大人になる準備が始まったね』というこれからの成長を一緒に応援するという気持ちを伝えると、子供たちは安心します」と増田さん。
女の子たちが大人になっていく自分のからだを大切にできるよう、保護者だけでなく大人として心に留めておきたいことです。
また、女の子たちにとっては周りのお友達と成長の速度が違うのも大きな悩み。そんな時は「お友達と違っていても大丈夫。からだの変化はそれぞれ違うから、自分が必要な時がきたらちゃんとブラジャーを着けましょう」との言葉をかけるそう。これは、今のボディホジティブのメッセージにも通じます。
10歳の女の子はおませで当たり前
ワコールは、からだが変化し始める10歳にフォーカスした「10歳キラキラ白書」を2016年から発表しています。
2018年版の白書には「10歳が“自己肯定感”が最も高く、おませなお年頃であることが判明」と興味深い内容が。この白書では“自己肯定感”を「『自分のことが好き!』『私は価値のある人間だ!』『今の自分に満足している』というような気持ち」と定義し、「自分のことを肯定的に捉えている人は前向きに毎日を送ることができる」としています。
確かにその年頃は、恋愛やファッション、メイクへの興味が急に増す時期。大人っぽい持ち物に憧れ、「まだそれは早過ぎるんじゃない?」と親に窘(たしな)められた経験がある人も多いですよね。
10歳の心理を深く研究している、目白大学人間学部心理カウンセリング学科の小野寺敦子教授は「自分の良い点と悪い点について自覚するようになるのはちょうど10歳くらいから。保護者がからだや下着のことを10歳の女の子と向き合って話を聞き、ちょっとおませで背伸びをし始め、ファッションや化粧に興味をもつような心理状態を理解してあげることはとても大切です」と述べています。
思春期を終えて長い年月がたった大人の私たち。いまだに、あの頃と同じように日々変化していく自分のからだに戸惑うことも少なくありません。スピードや変化の仕方に個人差はありますが、それを受け止め、自分のからだと向き合っていくことが自分を大切にすることにつながるのかもしれません。
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「体の成長を肯定してあげて」ワコールの下着教室が女の子と周りの大人に伝えたいこと