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こぼれ落ちるのが怖い? 男子校的なノリと「こじらせマッチョ」の共通点【清田隆之×ジェーン・スー】

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コラムニストのジェーン・スーさんが会いたい人と会って対談する企画。今回のゲストは恋バナ収集ユニット「桃山商事」の清田隆之(きよた・たかゆき)さんです。全3回。

男子校的なノリと「こじらせマッチョ」の共通点

ジェーン・スーさん(以下、スー):豊山時代の清田さんの話がもっと聞きたいです。

清田隆之さん(以下、清田):日大豊山は「ストニュー」でイケてる学校ランキングに数えられ、また体育会系の校風も強く、当時池袋を席巻していたカラーギャングに入ってる人なんかもいて、全体的にオラついた学校だったと思います。そんな中で、ヤンキーやスポーツエリート、イケメンやオシャレなやつらがヒエラルキーの上位にいた。

僕は友達の多いタイプだったけどヤンキーでもオシャレでもないし、サッカーをやっていたけどレギュラーになれず、成績も下のほうでおまけに家がバブル崩壊の影響で生活苦になり、高校時代は結構どん底でした。そこで「面白くなるしか道はない!」と思い立ち、いかにも男子校的なノリに過剰適応していきました。例えばちんこを出すとか、先生にいたずらを仕掛けるとか。

スー:わはは! それ学内YouTuberじゃないですか。

清田:どれだけばかなことをできるか的な……。本当に最悪なんですが、学校の地下にトイレがあって、みんなそこにこっそりうんこをしに行くんですけど、誰かがその個室に入るのを待ち構え、ドアの上から水をかけるといういたずらとかを友達と熱心にやってました。

スー:かけられたほうも、「ひでぇなお前らゲラゲラ」と、平気なフリを暗黙の了解でやるやつですね。

清田:そうそう、ネタにガチでキレるやつはダサいという風潮があるし、チキン野郎と見なされるのをめちゃくちゃ恐れているんですよね、男子カルチャーって。だから何事もなかったかのように平然と出てきたりするという。

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スー:どうりで「ピッチャービビってる! ヘイヘイヘイ!」が煽(あお)りになるわけだ。「こじらせ女子」は雨宮まみさんが作った言葉ですが、今って「こじらせマッチョ」の時代だと思ってまして。トランプ政権時代にホワイトハウスでクラスターが起きた時、それでもマスクを付けないと言う人がいました。たいした病気じゃないとね。

強さを誇示したいとき、人は「俺はここまで大丈夫」というチキンレースをやるじゃないですか。チキン野郎と思われたくない男子校と変わらないですよね。オチとして怖いのが、トランプの支持率は決して低くなかったこと。公衆衛生の概念が欠如しているというワンイシューだけでほかがどんなによろしくてもアウトだと私は思うのですが……。こじらせマッチョの魅力って何だろうと常々考えるわけです。
 
清田:オラつきとかイキりみたいなものに固執することの意味ですよね。何なんだろう……。例えば「ホモソーシャル」とか、あるいは『ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか』(レイチェル・ギーザ/DU BOOKS)で解説されている「マン・ボックス(=伝統的な男らしさのイメージ)」いう概念を知ったあとだったら、「そこからこぼれ落ちることの怖さ」という説明もできるかとは思うのですが、渦中にいるときはそんな自覚はないわけで、そこが難しいところで。

スー:その怖さを丁寧に解説していただけないでしょうか。体感としてわかりきれなくて。ホモソの輪から外れる恐怖って、具体的にどういうことなのか。

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清田:ジェンダー研究の分野では、ホモソーシャルとは「女性蔑視と同性愛嫌悪をベースにした男同士の強固な結びつき、および男たちによる社会の占有」を意味するそうなんですね。マン・ボックスの中には<タフ、強い、大黒柱、プレイボーイ、ストイック、支配的、勇敢、感情を出さない、異性愛者>といった言葉が並んでいます。そういったものの中にいれば仲間と認めてもらえるし、「支配する側」に立つことができる。

一方、そこから外れてしまうと「寒いやつ」とか「チキン野郎」とか「女々しい男」とされてしまい、それがとても怖い。そういう構造になっているんだとは思いますが、じゃあその怖さの質って一体何なんだって話ですよね……。

スー:そうそう。残念ながらそれと背中合わせにあるのが、女性は弱い存在と思われたほうが表層的には大切に扱ってもらえる場合があること。男女関係においては自己決定権を手放すという手痛い損とセットの話ですが。社会的地位が高くはない男性でも、弱い女性に対しては相対的に強くいられるので、現実的かどうかは別として、弱い女性のほうが需要があるとされている。

一方で、弱さを持つことによって、駅で知らない人にどんとぶつかられたりとか、付随する負債もかなり大きい。そのあたりのことを女性は特にこの数年でだいぶ言語化してきていると思います。そして、男性がホモソーシャルに縛られていることも、清田さんや田中俊之先生などいろんな男性が語り始めたことによって、私たちはかなり理解を深めてきたとは思っています。でも、なぜそれが手放せないのかがわからない。

ホモソなんてやめればいいのに、なぜやめられないか。そうそう、ネットでは日本人でトランプのことを「おやびん」と呼んでる人が多数いまして。ボス然とした人が欲しいんでしょうか。自分の頭で考えなくとも、とにかくその人を肯定していれば居場所ができるという権力構造。

清田:あー、なんかわかるような気がします。例えばスポーツとかでも、強豪チームのファンであることでマウント取ってくる男の人って一定数いるんですよ。お前が強いわけじゃないだろって思うけど、弱いチームのファンをばかにしてくる。強い側につくことで優越感を得られるという構図って、自民党とか大阪における維新の会とか、圧倒的多数の与党を支持している人(もちろん全員ではありませんが)にも通じるものがあるなって個人的には感じています。

スー:強いものが好きっていう感覚は、決して自分が強くなりたいわけではなく、強いものにくっついていれば思考停止でいられるからでしょう。本物の親分は部下を守ったり子分のために身をていしたりするけど、トランプだけでなく、象徴としての「おやびん」はどうなんだろう。子分を養分にしてるだけなようにも思います。

清田:チューチュー吸ってるだけと言ったら失礼かもですが、いざというときでも守ってくれないイメージは正直ありますよね。

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情報元リンク: ウートピ
こぼれ落ちるのが怖い? 男子校的なノリと「こじらせマッチョ」の共通点【清田隆之×ジェーン・スー】

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