アニメーション映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』が、11月7日(金)に全国公開されました。
本作は中国のアニメ監督のMTJJさん、寒木春華(HMCH)スタジオが制作。2011年3月にウェブアニメシリーズが動画サイトで公開されて、人気を集め、19年に劇場版を公開。興行収入3.15億人民元(約49億円)と、中国アニメを代表する作品となりました。
日本語吹替版では、主人公のシャオヘイを花澤香菜さん、ムゲンを宮野真守さん、フーシーを櫻井孝宏さんらが務めたほか、フリーアナウンサーの宇垣美里さんがゲスト声優として参加。
本作でアニメ声優初挑戦を果たした、宇垣さんにお話を聞きました。前後編の前編では、初めての声優業や作品について語っていただきました。
まさかのアニメ声優オファー
——本作がアニメ声優初挑戦となりますが、アニメ好きの宇垣さんですから、かなりうれしかったのでは?
宇垣美里さん(以下、宇垣):そうですね。うれしさの前に、すごくびっくりしました。オファーがあったと聞いたときは、映画のレビューや推薦文を書くお仕事かなと思ったんです。詳細を聞いて、中身だったので驚いたと同時に、光栄だと思ったし、怖さも感じました。
——怖さ?
宇垣:はい。人気のある作品だということは知っていたので、「え、あの羅小黒戦記?」と。注目度の高い作品でのチャレンジになることに加え、声優は職人のようなお仕事だと思っているので、尊敬しているからこそ、邪魔をしてしまうのではないかと不安でした。どうしたって私が一番下手ですから。世界観を乱してはいけないと緊張していましたね。
——その仕事を尊敬していて、大変さもわかるからこその怖さですね。実際にアフレコに参加していかがでしたか?
宇垣:初歩すぎて、ほんとに、もう……。正直に言うと、どこを見ていいのかすらわからかったんです(苦笑)。というのも、アフレコの時に、画面の下に字幕がついていたんですけど、当然字幕と台本のセリフは違っておりまして。さらに、うっすらと中国語も聞こえている。もう情報過多で混乱していましたね。
——それは大変そう(笑)。でももうやるしかないと腹をくくって。
宇垣:そうですね。「やるしかない」でしたね。ああ難しいなと思いながらも、練習したり、監督に細かく指示をいただいたりしてなんとか。「はい、大丈夫です!」と言われたときは「え、本当に?」って。大丈夫だったのだろうかとしばらく葛藤しました。念願のアニメ声優挑戦ではありましたが、楽しかったというよりとにかく必死でしたね。
役作りはギャルの友人をイメージして
——宇垣さんは、元気でかわいい「花の妖精」の役です。役作りはどのように?
宇垣:私自身は、割と声が落ち着いていて、そんなに起伏があるタイプではないので、花の妖精の元気ではつらつとしたしゃべり方やかわいらしさをどうしたら表現できるかなと試行錯誤でした。
——違う人を演じる難しさを……人っていうか妖精ですもんね。
宇垣:そうですね。生き物としても違いますけど、やっぱり素の私ではダメだと思ったので、どう違う感じを出すかは難しいことでした。でも、周りを見渡してみたらぴったりな人が見つかりまして。
——おお!
宇垣:すごく元気なギャルみたいな友人がいるんですよ。彼女はいつもハッピーな雰囲気をまとっていて、笑顔! 笑顔! 笑顔! という感じの子。彼女の声をひたすら聞きました。「しゃべって!」「え、何で!?」って言われたりして(笑)。
彼女といるとこちらも楽しい気持ちになって、つられて笑顔になるので、彼女のことを思い出しながらアフレコの現場に臨みました。
この感覚、わかる!
——作品についてはどのように感じましたか?
宇垣:「アニメ=日本」のイメージが強い中で、本作のような作品が日本ですごく人気になったことは、「すごい時代になったな」と。その中に、「日本のアニメの息吹」のようなものも感じましたし。この先、世界の各国で日本のアニメを見て育った方が、どんどん作品を出してくれるかもしれないなと思って、楽しみになりました。
——「日本のアニメの息吹」というのは具体的にどんなところに?
宇垣:そうですね……。違っていたら申し訳ないのですが、私が感じたのは、森の緑の感じが(スタジオ)ジブリの作品みたいだなと。それから、戦闘シーンは『NARUTO-ナルト-』を彷彿させると思いましたね。
ユーモアのセンスにも日本に近いものを感じました。たとえば、アメリカのアニメ『パワーパフガールズ』(1998年)は、色彩から何から私たちが慣れ親しんでいるものとは全く違います。もちろんその世界観の良さや面白さは感じますけれど、『羅小黒戦記』には「わかる!」と思うシーンが多くありました。
——たしかに。どんなところに「わかる!」が出ましたか?
宇垣:例をあげるなら、シャオヘイがムゲンから逃げようとして何度も捕まるシーン。捕まえるところは直接描かれていないのですが、シーンが切り替わるとぐるぐる巻きにされたシャオヘイが出てくる。それを見て、「今まで見てきた感じ!」と思いました。この感覚を同じように理解できて、面白く感じるんだというのは新しい発見でした。
アニメで実感したエンタメの持つ力
——国が違っても笑いのツボが同じだったり、予定調和の出来事が起こったりするのは新しい感覚になれるかもしれませんね。
宇垣:そうですね。作品を観ることで「あ、そっか、中国の人も、同じようなものを見てすごいと思って、同じような色彩感覚で、同じようなものにかっこいいと思うんだろうな」って。異国がちょっと身近になると思うんです。それは、エンタメの持つ力のひとつだと思うので、ぜひ劇場で感じてほしいなと思います。
ストーリーも、普遍的なんですよね。ずっと昔からある、誰かの居場所を押しのけて生きていくことの罪のようなものが描かれている。それでも誰かと共存して生きていくというのは、ずっと人間の課題としてあると思っていて……。
——人間による環境開発で動物たちの居場所を奪ったり……。
宇垣:はい。そうやって私たちは生きてきているから、関係ない人はいない物語のはずです。観てくださった方にとって、改めて自分の中に何か問いかける作品になったらいいなと思います。
■映画情報
後編は11月13日公開予定です。
(取材・文:安次富陽子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
宇垣美里、アニメ声優初挑戦。映画『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』