最近は、タレントやお笑い芸人などさまざまな体形の方が下着モデルを務めることが多くなり、下着のモデル=スレンダーでセクシーな外国人というイメージは、もはや過去のものに。美しさの定義はそれぞれと考える個性重視の時代が本格的に到来していることを実感します。
それと同時にブラジャーは「寄せて上げる」ものという印象が薄らぎ、ブラジャーに求める機能も多様化。女性のマインドや社会情勢、ファッションの変化とも連動しながら変化を遂げています。その変化の変遷を、日本の女性下着の文化をけん引してきたワコールの広報・宣伝部 福岡智亜紀さんに聞きました。
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【90年代前半】ボディコンブームが後押しした、「寄せて上げる」ブラ旋風
ワコールが「よせる あげる きめる」のキャッチコピーで「グッドアップブラ」を発売したのは1992年2月のこと。累計1000万枚以上を販売した大ヒット商品で、このブラの発売が、日本での本格的な谷間メイクブラの幕開けになったと言っても過言ではありません。
「その背景には、80年代後半から続くボディコンシャスファッションの流行があります。ボディラインへの意識が高まると同時に、バストを強調することに抵抗がなくなり、ブラジャーが本来持っている“よせて あげる”という機能にあらためてフォーカスしたキャッチコピーを使うことになりました。バストの谷間が市民権を得た時代ともいえ、それは、世界的な流れでもあったのです」(福岡さん)
1990年代は各社から寄せて上げる機能を強調するブラが登場。海外ブランドのブラも輸入され、まさに谷間メイクブラ戦国時代といえる様相を呈するようになります。
【90年代後半】タイトなトップスの流行に応え、「脇はスッキリ、バストはグラマラスに」
ボディコンブームが過ぎ去った後の1990年代後半のファッションとして記憶に残るのが「アムラーファッション」。チビTなどタイトなトップスが流行する中、1年間で170万枚を売り上げたのが1998年発売の「スレンダーブラII」です。
「脇をスッキリさせてバストの高さを出すスレンダーブラは、スレンダーに見せたいけれどバストはグラマラスに見せたいという女性の願望に応えるブラとして人気となりました」(福岡さん)。
【2000年代前半】やさしい着用感やマインドに寄り添うブラジャーが続々登場
1995年の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、1997年の京都議定書採択などを経て、内面の充足や自然環境への意識が高まった90年代終わりから2000年代前半。1999年には「癒し」という言葉がユーキャン新語・流行語大賞を受賞します。
この時代「その代表といえるのが、1999年に発売された『マシュマロブラ』です。低反発ウレタンを使ったマシュマロのような触り心地のブラジャーは、体に馴染(なじ)むやさしい着用感が支持されました。それ以外にも『感じるブラ』『キメブラ』『ラブブラ』などのブラジャーを発売しています」(福岡さん)
【2000年代後半】美しさ=若さではない!年齢を重ねてこそ表現できる大人の美しさを応援
2000年代後半になると、アンチエイジングをうたう化粧品が大人気となったり、美魔女ブームをつくった『美STORY』が創刊されたりなど、エイジングに対する意識が一気に高まります。そんな中、ワコールは「ラブ・エイジング」というキャンペーンテーマを打ち出し、2009年、「胸もと年齢マイナス5歳を目指すブラ」を発売します。
「40代をターゲットにしたブラで、年齢を重ねた女性のからだをより美しくするというのがコンセプト。そこには、若い人だけが美しいのではなく40代には40代の美しさがあり、その美しさを応援したい、との想いが込められています。この頃から商品にも広告にも個々の美しさを表現していこうとする傾向がはっきり表れました」(福岡さん)。
世の中が少しでも“若見え”することを良しとする空気の中、ワコールではエイジングに寄り添い、現代のボディポジティブに通じる動きがすでにあったというのは大変興味深いですね。
【2010年代】ノンワイヤーブラとワイヤー入りブラの概念が大きく変化
2010年代に入ると、「リラックスできるノンワイヤーブラはオフタイムに着けるもの、という概念が崩れ、オンもオフも日常的に着用できるノンワイヤーブラが広がり始めました」(福岡さん)。
そして2016年にワコールは、心地良い着け心地とバストメイクする造形性を兼ね備えた「新・解放系ブラジャー」というカテゴリーを設け、その代表アイテムとして「SUHADA」を発表。「SUHADA」はワイヤーではなくカップに内蔵した樹脂シートでバストを面で支えるもので、ワイヤーは入っていないものの、この樹脂シートが美しいバストラインをキープする、言わば機能派ノンワイヤー。
もうひとつ、ワコール直営店で販売されるノンワイヤーブラシリーズ「ブラジェニック」を発売。その後、下着売り場ではノンワイヤーブラのバリエーションがぐんと広がり、それまでのノンワイヤーブラは楽ちんでオフタイムに着けるもの、バストメイクするならワイヤー入りブラといった概念を大きく変えるパラダイムシフトが起きたのです。
選択肢がたくさんある今だからこそ、「私らしいブラ」を選んで
素材の開発や技術が進化したこともあり、あらゆる選択肢に応えるブラジャーがそろう今。そんな時代だからこそ、「ご自身のからだに意識を向け、何が気持ちよく快適に過ごせるのか、私らしい美しさとは何か、どう見られるのが私は心地良いのか、その声に素直に従いブラジャーを選んでほしい」と力を込める福岡さん。
バストの形もブラジャーも生き方も、他人が決めた理想に縛られるのではなく、「自分はどうしたいのか?」を意識してチョイスしていきたいですね。
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情報元リンク: ウートピ
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