今年も汗だくの夏、なんとかにおいぐらいはケアしたいと思い、臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に、前後編の2回にわたってお話を聞いています。前編の「汗を放置、汗腺の衰え…におう理由を臨床内科専門医に聞きました」では、汗そのものは無臭であること、しかし汗をかいても放っておいたり、汗腺が衰えたりするとにおいを発するようになること、また汗がにおいやすい部位について紹介しました。
ひき続き今回の後編では、汗の適切なセルフケアや汗腺を衰えさせないための汗腺トレーニングの方法について詳しく教えてもらいましょう。
汗を乾いたタオルで拭くのはにおい対策にならない
はじめに正木医師は、汗のにおいを防ぐための「汗の拭きかた」を伝授します。
「前編で説明をしたように、汗は放置しておくと皮膚(ふ)の古い角質やあか、皮脂などと混ざり合って、それを常在菌が分解して酸化し、においを発します。つまり、汗をかいたらすぐにこまめに拭くことがにおいを防ぐためのポイントです。
水で濡らした清潔なタオルやハンカチ、また市販の汗拭きシート、ウエットティッシュなどでそっと拭きましょう。乾いたタオルで拭くと水分は吸収できますが、角質や皮脂などは皮膚の表面に残ってにおい対策にならないので、水で濡らしたもので拭くのが適切です。
顔はメイクの上から拭くことになるので、市販のメイクの上からでもOKというタイプの汗拭きシートで、発汗している場所、髪の生え際や鼻、唇の下などをそっと押さえましょう。
自宅やオフィスなどの水が使える場所では、腕から指先までなど、できる限り洗える部位は水で汗を洗い流しましょう。汗だけなら石けんを使ってゴシゴシと洗う必要はありませんが、新型コロナ対策にもなるので、手を洗うついでにハンドソープで腕まで洗うとよいでしょう」
38度前後のお湯で半身浴をする
前編で、「涼しい場所に居続けることや運動不足で汗をかかないでいると、汗腺は衰えてにおいの原因になります。しかし、汗腺は鍛えることで機能を高めることができます」とレクチャーしてもらいました。では、具体的にどのような方法があるのか、正木医師は汗腺をトレーニングする方法について次のように紹介します。
「入浴時は、全身の血流が促されて代謝が上がるので、汗腺トレーニングに良いタイミングです。夏は38度前後のぬるめのお湯に、みぞおちあたりまで10~15分ほどつかる半身浴をしましょう。
すると、体の中心から温まって、サラサラの汗をかきます。このとき、手と足もお湯につけてください。
入浴後は自然と汗がひくのを待ちましょう。冷房が強い部屋で涼むと、急激に汗腺が閉じて体温調節が難しくなります。うちわであおぐ、扇風機の風量を弱にしてクールダウンするなどがよいでしょう。
入浴の前後は必ず水分補給をしてください。また、入浴後すぐは体温が上がっていて寝つきにくいため、入浴は就寝する1時間以上前にすませておきましょう」
お風呂の直後は、冷房の風の下に直行して汗をひかせていました。しかしそれでは、せっかくお風呂で汗腺トレーニングをしても意味がないということです。
「帰宅時ウォーキング」で汗をかく
また正木医師は、「暑くても運動は必要」と言い、次のことを勧めます。
「ウォーキングや筋トレ、ストレッチなどの軽い運動は、全身の血流が促されて汗をかきやすい体になります。
夏は外の気温がかなり高いので、屋内のショッピングセンターや駅、オフィスの階段を利用する、また気温が下がる朝方か夕方以降に涼しい場所を選んで15~30分のウォーキングを行いましょう。毎日は時間がない、運動に慣れていないという人は、通勤時にいつもより早足で歩く、1~2駅分歩くなどからはじめましょう。
冷房が効いた場所での運動では汗をあまりかきませんが、運動は血流促進と体温アップになるので重要です。とくに終日冷房が効いたオフィスや自宅で仕事をしていると『冷房冷え』をすることもあるでしょう。
出勤時に汗をかくと仕事開始時からにおいなどが気になる場合は着替えを持参する、面倒なら『帰宅時ウォーキング』を習慣にしてください。もちろん、いずれの場合も熱中症に十分に注意をし、水分補給をする、紫外線は避けるなど心がけながら行いましょう」
においや不快感が嫌だからと言って、発汗を避けてはいけないということでしょうか。
「そうです。子どもは汗腺が活発なのでサラサラの汗をかきます。においもあまりしません。その状態をイメージして、汗を不快の対象だとばかり思わずに、適度な発汗で夏の健康状態をキープしましょう」と正木医師。
聞き手によるまとめ
夏はどうしてもベタベタとうっとうしく、汗はかきたくないと思っていましたが、それでは汗腺が衰えていく一方だということです。汗腺トレーニングを意識して汗をかくことこそがにおい対策になるとのことで、夏でも半身浴や帰宅時ウォーキングを工夫しながら継続して、においの気にならない健康な汗を出せるようにしたいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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