歯と口のセルフケアの中でも、とくに気になるのが「歯と歯の間の磨き残し」ではないでしょうか。そこで、口腔衛生に詳しく、『すべての不調は口から始まる』(集英社新書)の著者でもある江上歯科の江上一郎院長に、デンタルフロスの上手な使い方について3回の連載でお話しを聞いています。
「第1回 歯ブラシと併用で歯垢を85%処理! デンタルフロスの使い方のコツ」では、前歯、奥歯など、歯の部位別の用いかたを、「第2回 デンタルフロスはいつ使う? 歯磨きの前、後、寝る前?」では、歯磨きとデンタルフロスを使う効率的なタイミングについて、また歯の部位別やブリッジに向くフロスについて紹介しました。
これらの記事はとても好評を博しました。そこで今回の第3回では、デンタルフロスや歯間ブラシの選びかたについて、さらに追求してレクチャーしてもらいましょう。
使い慣れたら「ワックスなし」タイプを選ぶ
デンタルフロスを選ぶ際に、「ワックスがついているタイプ」と「ついていないタイプ」があることに気づきました。後者は一般に、ノンワックス、アンワックスと呼ばれているようです。どう違うのでしょうか。江上医師はこう説明をします。
「ワックスがついているタイプは滑りがいいため歯の間に入りやすく、またほつれにくくなっています。デンタルフロスを使い慣れていない場合や歯間が狭い部分にはこちらを選びましょう。
ただし、歯垢(しこう。第1回参照)をかき出す力は、ワックスなしのタイプのほうが強くなります。そのため、フロスの使い方に慣れてきたときや歯間が広い部分は、ワックスなしのタイプに変えるとよいでしょう」
さらに、口の中でふくらむタイプもあります。
「デンタルフロスを歯間に差し入れると、だ液でふくらむようになっているタイプです。これは大人の歯列に多いブラックトライアングル(第1回参照)や、歯間が広い部分の使用に向いています。このフロスはふくらんでも軟らかいので、すっと引き抜くことができます」
歯のすき間に応じて使い分ける
歯間磨きのグッズは、デンタルフロス以外にも多彩に販売されています。江上医師は選ぶコツについて次のようにアドバイスをします。
「すき間が狭い場所や、前歯や奥歯に関係なく使いやすいのがデンタルフロスです。使い始めたころは、指に巻くのが面倒で歯間ブラシのほうがいいという人はとても多いのですが、デンタルフロスに慣れると、歯のすき間に応じて食べかすや歯垢がもっとも取り除きやすいことに気づかれるでしょう。
また、被せものをしている歯の場合、歯間ブラシを無理に引き抜くと被せものが取れそうな感じがする、という人もいます。デンタルフロスだとすっと引き抜けるので、そういったストレスもありません。
1回あたりの費用も、デンタルフロスがもっとも経済的でしょう。
ただし、うまく使えない場合は、前回(第2回)紹介した前歯に向くF型や奥歯に向くY型の歯間ブラシ、またブリッジをしている部分には歯間ブラシを用いましょう。
歯間ブラシには、針金のような細い金属にナイロンの毛を付けたタイプや、シリコンなどゴム製のタイプがあります。また、サイズは極細から太めまでと、多様に揃っています。
歯間ブラシを使い慣れていないときや、被せものがある歯には、歯ぐきへの負担が小さいゴム製がいいでしょう。サイズは自分の歯のすき間に合わせて、いくつかを用意して使い分けてください。くり返しますが、選びかたに迷ったときやうまく使えないときは歯科医院で遠慮なく相談しましょう」
磨き忘れが多い歯は「犬歯」
さらに、デンタルフロスで磨き忘れが多い歯について、江上医師はこう解説します。
「上下とも、犬歯(けんし)に注意してください。前歯から数えて3番目の歯で、糸切り歯とも呼ばれる、先端がとがった歯です。犬歯はカーブしていて両隣のすき間に食べかすが残りやすいため、デンタルフロスや歯ブラシでも磨き残しが目立ちます」
また、「親知らずの周囲も磨き残しが多い」と指摘する江上医師は、次のように説明を続けます。
「親知らずが生えている場合は、その隣の奥歯との間に食べかすや歯垢がたまりやすいです。デンタルフロスが入りにくく、形状も整っていないので磨きにくいでしょう。親知らずがない場合は、奥歯のもっとも奥の面が磨きにくくなります。
それらの部分には、歯ブラシよりも細く小さく、毛の本数が少ないワンタフトブラシを使ってみてください。ワンタフトブラシには、毛先がまとまっているタイプと、毛先がばらばらのタイプがあります。
前者は、毛先が硬くコシがあるため、背の低い歯の噛む面や親知らずの周囲、また、すき間が少し開いている歯間部、矯正器具を付けている場合などに、後者はしなやかでコシがある毛が特徴なので、歯並びが悪く歯が重なって生えている部分や被せものをしている歯の周囲、またインプラント部に有用です。どちらも使い分けて試してみましょう」
画像入る ワンタフトブラシ 原版(江上歯科様が撮影してくださいました)をメール添付しました。傾き補正(下記が分かりやすいと思いますが、縦位置になるので、横位置がいい場合はおまかせします)&トリミング&補正&リサイズをお願いします。
デンタルフロスや歯間ブラシに洗口剤を少量つけて磨く
デンタルフロスや歯間ブラシに、歯磨き剤や洗口剤をつけて使用するのは有用でしょうか。江上医師はこうアドバイスを加えます。
「OKです。ただし、歯磨き剤によっては、研磨剤や合成界面活性剤がたくさん含まれていて、それらは歯を削ったり歯ぐきを傷めたりしやすいのでやめておきましょう。
洗口剤を少量付けて、歯と歯のすき間のポイント磨きをすることは歯間の清掃やむし歯、歯周病対策に有用と考えられます」
聞き手によるまとめ
3回の連載を通して、歯のセルフケアには自分の歯に合ったデンタルフロスや歯間ブラシを効率的に使うことがとても有用であると理解しました。自分の歯の形状や歯間、歯の根元のすき間、被せものの有無などを鏡でよく見つめ、デンタルフロスや歯間ブラシ、ワンタフトブラシといったアイテムを、素材やサイズなどもいくつか試しながら使い分けていきたいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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