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コロナ禍が突きつけた「みんなで」の限界…9月入学よりも大事なこと【不登校新聞編集長】

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新型コロナウイルスの感染拡大で臨時休校していた学校も緊急事態宣言の解除を受け、約3カ月ぶりに多くの学校で授業が再開される見通しです。

長引く休校で「9月入学」も検討されましたが*、日本で唯一の不登校専門紙「不登校新聞」の石井志昂(いしい・しこう)編集長は「9月入学よりも、個人個人に見合う、無学年制オーダーメイド式の教育を選択肢に入れるべき」と話します。

前編に引き続き、石井編集長にコロナ禍で浮き彫りになった、学校や教育をめぐる問題について伺いました。

*自民党の秋季入学制度検討ワーキングチームは5月29日の会合で、「9月入学」について「今年度・来年度のような直近の導入は困難」とする提言案を大筋で了承。6月上旬に政府に提出する見込みです。

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「不登校新聞」の石井志昂編集長

「不登校新聞」の石井志昂編集長

「9月入学」よりも重要なこと

——学校休校で9月入学も検討されましたが、石井編集長のお考えをお聞かせください。

石井志昂編集長(以下、石井):正直、脆弱(せいじゃく)というか、何て筋違いの話をしているんだろうと思っていました。

——脆弱というのは?

石井:AIの教材は、「小学1年生はこの単元」というくくりがない“無学年式”がほとんどなんです。フリースクールも学年がありません。AIでお話すると、学びは人によってできることとできないことがあるという考えに基づいていて、その人に合わせた課題で学べるのがAIアプリなんです。学年は中学1年生だけれど、数学が小4で止まっている子もいれば高校生レベルという子もいる。

そもそも、同じ中学1年生だからといってみんなが無理やり中1の勉強するのはコストパフォーマンスが悪いですよね。まして、中学1年生の4月だからこれ、5月だからこれをやりましょうというのは、みんなで合わせることに力点が置かれていて本人の学びに力点が置かれているとは言えません。すごく効率の悪いやり方だと思います。

「みんなで」の限界

——今回のコロナ禍では、満員電車や同じ場所に「みんなで」集まって「みんなで」仕事をすることのリスクが浮き彫りになりました。教育も「みんなで」が前提の考え方を疑う段階にきているのかもしれませんね。

石井:みんなで足並みを揃(そろ)えることに主眼が置かれ過ぎていて、学校という自分の人生を豊かにするためのものという意味が薄れていると思います。

AIでの学習はできなくても誰もその子のことを責めないんです。できなければできるところからやってできるようにするのがAIを使った学びです。一人一人はみんな違うし「できる」「できない」があって当たり前。そんな社会が当たり前になれば、「一斉に合わせる」という視点はなくなるんじゃないかなと思います。

だからと言って、学校がいらないとは全く思いません。AIでできないのは友達との交流やチーム競技。みんなで何かをすることで生まれる喜びだったり、悔しさだったりの感情や得られるものもあるから、そういう場として学校を活用すればいいと思います。ただ、勉強に関してはもっと効率よくやってもいいんじゃないかなと思いますね。

——子供だけではなくて大人にも言えることかもしれません。働き方として、在宅勤務のほうが自分に合っているし効率もよいと分かった結果、前のようにオフィスに出勤するのが不安という人もいるようです。

石井:『学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)にも登場していただいた演出家の宮本亜門さんは「『不安がる自分』を否定しないで」とおっしゃっています。

確かに今、学校や会社に行かなくなったり、自粛明けの生活に不安に感じている人もいると思うのですが、まずは不安を感じている自分を認める。そこから必ずしも何かが建設的に作られたり、ポジティブなものが生まれたりするわけではないけれど、立ち位置を把握するという意味で大事だと思います。「不安に思っている自分がいるんだ」と自分にはそう言い聞かせています。

コロナ禍が私たちに投げかけたもの

——コロナ禍が社会に投げかけた問いがあるとしたら、石井編集長は何だと思いますか?

石井:休校期間や自粛期間でリモートの重要性が認知されたのかなと思います。今はコロナですが、ほかにも台風や洪水、地震など災害は起こります。そんなときに何かがあったらリモートで授業ができる体制になっているといいですよね。

いじめられていて学校に来られない子や教室に入りづらい子にとってもリモート授業の仕組みが整っていれば、ほかの子と同じように授業が受けられる。平日にディズニーランドに行きたいから土曜にリモートで勉強を終わらせようという選択肢もできるのかなと。そんな可能性が今だからこそ検討できると思いますし、選択肢を用意するという意味でも重要だと思います。

まずは、すべての子供にタブレットを貸し出していつでも使える状態にしたり、モバイル機器に触れる環境をつくったりするのが大人や社会の役割だと思います。

「みんなで学校に行かなければならない」という前提があるから不登校が問題視されてきたけれど、その前提が崩れたのが今回のコロナ禍だったと思います。生活が苦しくなったり、家族で息が詰まりそうになったり、これまで我々を支えていたものがいかに脆弱性があったか、柔軟性がなかったかが思い知らされたと思います。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

情報元リンク: ウートピ
コロナ禍が突きつけた「みんなで」の限界…9月入学よりも大事なこと【不登校新聞編集長】

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