ローソンの「Uchi café Sweets(ウチカフェスイーツ)」や「渋谷ヒカリエ」「東急プラザ渋谷」など、幅広いジャンルのブランディングを手掛け、成功に導いてきたブランドプロデューサーの柴田陽子(しばた・ようこ)さん。
柴田さんが代表取締役を務める「柴田陽子事務所(通称、シバジム)」は20人ほどの少数精鋭組織。「営業を全くしない」のにずっと先まで仕事の依頼が詰まっているのだそう。その秘訣は誰でも身につけることのできる「思考回路」にあると言います。
柴田さんの「思考回路」についてつづられた著書『勝者の思考回路 成功率100%のブランド・プロデューサーの秘密』(幻冬舎)をフックに、なぜ彼女が求められ、結果を出し続けることができるのか、お話を伺いました。最終回では、「毎朝5時に起き、トレーニングを欠かさない」という柴田さんが、なぜ毎日頑張れるのか、その秘密を教えていただきました。
感謝の気持ちを伝えたくて始めた筋トレ
——柴田さんは毎朝5時半に起きて加圧トレーニングを行っているそうですが、とてもストックですよね。筋トレを欠かさない理由は?
柴田陽子さん(以下、柴田):もともとはデザイナーやパタンナー、縫製工場の方々など、ボーダーズの洋服を作ってくださる皆さんに誠意というか、感謝の気持ちを表すために始めたのがきっかけだったのですが……。
——なぜ筋トレが感謝に??
柴田:ですよね(笑)。たとえば「このパターンが素晴らしいですね!」とパタンナーさんに伝えるには、それが他の洋服と比べてどう優れているかがわからないと、感謝がきちんと伝わらないと思うんです。
でも、デザインやパターン、縫製など、ボーダーズの洋服を作ってくださる皆さんのお仕事をすべて理解するのは難しかったので、それならば、出来上がった服を完璧に着こなせる土台を自分が作ろうと思ったんです。
つまり、私自身がトルソーのような身体になって、その服の良いところや修正したほうがいい点を率直に伝えよう、と。それが服作りのプロであり、ファッションを愛する作り手さんたちへの感謝の伝え方だと思ったんですね。
これは他の仕事にも通じる話ですが、心からの感謝を伝えるためには、どんな点に相手が心を砕いてくれたのか、その仕事ぶりを正確に理解する必要があるんです。
それに、自分がきれいになればその方法をみんなにも伝えられるし、遠い存在に思われがちな「女社長」より、“洋服を作っているカッコいい人”の方が親近感と聞く耳を持ってもらえるなら、「どんどんきれいになっちゃうよぉ〜」という感じです(笑)。
「ありのまま」でいいの?
——自分のための「美」というより、周りのための行動なんですね。でも、柴田さんのような努力家の方がいらっしゃる一方で、今は「ありのまま」信仰も強いですよね。
柴田:「ありのまま」でいいわけがないと私は思います。基本、人は努力するものだし、それでもまだ結果が出ない、伴わないという経過の段階を「そのままでいいんだよ」と言っているのだとは思いますけれど……。それでも私は、『勝者の思考回路』を身につけたいのなら、「まだ頑張れるよ」「やり切れるよ」と言いたい。
車輪の回転は前か後ろしかないわけで、こがないと前に進まないですよね。今は「そのままの自分を受け入れましょう」とか「今のあなたを認めてあげて」みたいな教えも多いですが、ちょっとでも自分にプレッシャーをかけて前に進むことで、切り開ける道もあるはず。
頑張ることはお金も時間もかからないからいいですよ。自分の心の持ちようひとつですから。
——柴田さんの情熱が伝わってくるようです。それも実体験から得た「思考回路」なのでしょうか。
柴田:はい。もともと「お嬢様育ち」だった私は、大学の先生に「その甘ったれた考えを直すためにも留学でもしたらどうですか?」とすすめられて、当時通っていた大学の姉妹校であるアメリカの大学に編入しました。そこでの経験が本当にツラくて(笑)。
初めはよかったのですが、飛び級でレベルの高いクラスに入ってからは、クラスメートから“お荷物”状態。私のいる前で「陽子がいると足を引っ張るから外してくれ」と教授に言われたほどです。どう頑張ったらいいのかわからないし、自信も持てなくて「辞退したい」と申し出たこともありました。
逃げなかったから自信につながった
——ポジティブに変換するのが得意な柴田さんでも……。
柴田:はい。そこで私は自分の価値を認めてもらうために2つのことを決めました。「ほかの人がやりたがらない面倒くさいことを全部やる」ことと「5分ちょうだい!」と言って状況や成果をマメに伝えて信頼を得ることです。
大変なときに逃げるのは簡単ですが、逃げたらいつまでも自分に自信が持てないままではないでしょうか。逆に、「苦しかったけど何とかなった」という経験は人生の支えになる。だから私は「逃げずに頑張って」と言いたいんです。
それは大きな困難でなくても大丈夫です。ほかの人からは小さなことに思えても、自分にとって大変だと感じるなら「価値」があります。自分にとって大変なことから、逃げなかったという事実が大切です。
——柴田さんの不屈の精神がよく現れたエピソードのひとつとして、お嬢さん育ちが一転、家や財産を失ってしまったという波乱万丈な過去が明かされています。
柴田:はい。実家のことははじめて明かしましたが、まず言いたいのは、あの過去がなくても今の私はあると思うということ。「柴田さんみたいに波乱万丈な生き方をしていたら学びも多いでしょうけど、私は普通だから何もない」みたいな考え方は違うと思うんです。
確かにいろんなことが起こったので、その波ごとに鍛えられて学びの機会も多かったのかもしれません。
でも、じゃあ波乱万丈でないと何も得られないのかと考えたらそうじゃないはず。きっと実家が傾かなくても、私は今の自分に辿り着いていると思っています。その中で伝えたかったのは、どんな人にも落ちる可能性はいつでもあるということ。過去を明かすことで、誰にでも「勝者の思考回路」を得るチャンスはあると感じてもらいたかったんです。
「神様は乗り越えられない試練は与えない」といいますが、私自身、実家の件は「あってよかった試練」として消化するのにはとても時間がかかりました。それでもこの一大事を機に、「品格」とは何かを考えるようになったし、プロフィールや外見で人を判断せず、もっと深いところを見ようとするようになりました。
そのような小さなことの積み重ねが、充実感や信頼関係、ひいては仕事の成功につながっていくのだと思います。
*このインタビューは3月2日に行われました。
(取材・文:小泉なつみ、撮影:青木勇太、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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