10歳の頃に母親が「エホバの証人」に入信。2世として25年間エホバの証人の教えを信じてきたものの、ひとり息子が病気になったことで35歳のときに脱会を決意したマンガ家のたもさん(40)。前作の『カルト宗教信じてました。』(彩図社)に引き続き、脱退した“その後”を描いた『カルト宗教やめました。』(同)をこのほど上梓し、シリーズ累計6万5000部と話題になっています。
第二回は、母との関係や子供の育て方について、たもさんに話を聞きました。
【前回】幸せか不幸かは自分が決める。カルト2世だった私が気付いたこと
「親子だから」では割り切れない気持ち
——宗教に入ったのはお母さまがきっかけですよね。お母さまに対して「恨み」のような気持ちはありますか?
たもさん:恨むっていうよりは、「放っておいて」という気持ちのほうが強いかな。私はお母さんを放っておくから、お母さんも私を放っておいてね、みたいな気持ちですかね。
でも、子供はみんなそうあるべきだとは思ってなくて、中には本当に人生を振り回されたり、虐待されて育ったりした子供もいるじゃないですか。そういう人は恨むことで、生きる糧にしてる人もいるから、そういう人にも「親を恨んじゃダメだよ」「感謝しなさい」のようなことは言わないし、言いたくないですね。
——マンガでも描かれていましたが「親子だから分かり合うべき」とか「家族の絆」というのはしんどいですよね。
たもさん:しんどいですよね。親に感謝しなさいと言う人もいるんですけど、「ちょっとそれじゃ片付けられないよ」という割り切れない気持ちもある。
——今はお母さまとの関係はどんな感じなのですか?
たもさん:良くなったり悪くなったりですね。本当に向こうの気持ち次第という感じがします。家の事情で母が遠くに引っ越したのですが、かなり物理的に離れたのもあって、気持ちも離れました。
時々、普通に電話してくることもあるのですが、「あれ? 普通に親子の会話できてる」と思うときもあるし、鬼電がかかってきて、「あなた、そのままじゃ滅ぼされるわよ」と言ってくることもあって、そういうときは「ああ、何か集会でいい話を聞いたんだろうな。影響を受けたんだな。はいはい」という感じになりました。
——たもさんの夫も元信者で、義理のお母さまは信者ということですが義理の家族とはどんな関係なのでしょうか?
たもさん:完全にシャットアウトですね。マンガに描いたようなこともあって、夫は連絡を取ってくれているんですけど、夫に任せています。「自分の母親のことは自分でしてください」「私に押し付けないで」と。子供にとってはおばあちゃんなので、行き来はさせてるんですけど。
——じゃあ今は結構楽というか……。
たもさん:そうですね。今は子供とおばあちゃんがラインでつながっているので、勝手にラインしてますね。そこは勝手に任せてます。
——それは子供も一人の人間だからっていうことですか?
たもさん:そうですね。子供がおばあちゃんをどう思おうと、それはもう勝手なので。
子育ての「正解」は分からないけれど…
——お子さんをこんなふうに育てていきたい、などの考えはありますか?
たもさん:息子は今度小学校5年生になるんです。ちょうど小学校に上がる時に「このままでいいのかな?」と思ってエホバをやめたんです。
もちろん、やめた直接のきっかけは前作にも描いた通り、息子が病気になったことなのですが、小学校に入ったら宗教上の理由でできないことがたくさん出てくるし、私自身もグラグラしていてこのままでいいのかなという状態で子供に教義なんて教えられない。子供を導けないと思い、子供が小学校に入る前にやめました。
息子には好きなことを自由にやってほしいし、人として曲がったことをしなければいいかなと思っています。
——それはたもさん自身が小さい頃に入信して、いろいろ制限されて自分の選択で自由に好きなことをできなかったから、なおさら子供には同じ思いをさせたくないという気持ちなのでしょうか?
たもさん:そうですね、母も当時は私のことを心配してくれて、悪い道に行かないよういろいろ制限をかけたのだとは思いますが、正直「もっと信頼してくれても……」という気持ちはありました。
子育ての正解は分かりませんが、私は「こういうふうに育てられたかったな」という思いで息子と接しています。普通の家庭では当たり前のことなんでしょうけど、一緒にテレビを見てゲラゲラ笑ったり、子供の話を途中で遮らずに最後まで聞いたり、そんな感じです。
※最終回は3月21日(土)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)
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情報元リンク: ウートピ
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