3月~4月中旬ごろ、どうも体がだるい、頭が重くてしんどい、気分も落ち込むといった不調を感じることはありませんか。臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美医師によると、「たしかに春先は毎年のように、そういった不調を訴える患者さんが増えます。とくに女性に多い傾向があります。何らかの病気ではない場合は、気圧の変動や寒暖差、乾燥などに影響を受ける気象病が原因と考えられます」ということです。
そこで、春の気象病の特徴、チェックポイント、対策などについて、前後編と2回に分けて尋ねました。
春は、頭重感、睡眠、呼吸器の症状が現れやすい
はじめに正木医師は、春の不調の症状について、
「めまいや立ちくらみ、頭痛など頭の重み、いつもだるい、朝起きにくい、夜は目が覚めやすい、日中に眠気に襲われるなど睡眠の悩み、のどが痛む、鼻水が出やすいなど呼吸器の不調が増えます」と話し、その原因について次のように説明をします。
「春は移動性高気圧が通過するため、『気圧の変動』と『寒暖差』が激しいシーズンです。この変化に対応するために、自律神経が心臓の拍動や血圧などの機能を一定に保とうとがんばって働きます。
しかし、気圧や気温の変化が大きいと、のちに詳しく説明しますが、自律神経に負荷がかかりすぎるようになります。すると、心身に多様な不調が現れます。
これを『気象病』と呼んでいます。気象病は最近ではよく知られてきましたが、天候の急激な変化によって体に不調をもたらす症状の総称です。先ほどお話した症状に加え、低血圧、ぜんそく、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、うつ病などにも影響を受けることがわかっています。
中でも、『天気痛』と呼んで、頭痛、肩こり、腰痛、膝(ひざ)痛、リウマチの痛み、歯痛など、天気の変化で痛みが増す症状の研究が進んでいます」
昔から、「雨が降ると手術の痕の傷が痛む」などとよく言われてきました。その関係が医学的に立証されつつあるということです。
内耳が気圧の変動を感知して自律神経に影響する
気象病は、「耳の機能や気圧の変動に敏感な人がなりやすい」とも言われます。気圧の変動で起こる耳の症状と言えば、高層ビルにエレベーターで昇ったときや、飛行機に乗ったときに耳の奥がつーんとする現象が思い浮かびます。正木医師は、耳の働きと気象病について、こう説明を続けます。
「気圧が急に低くなると、耳の鼓膜の奥にある内耳(ないじ)という器官が、日常とは違うと感知し、脳にその情報を伝えます。すると、先ほどお話ししたように、その状況に合わせようとして自律神経が活性化します。
自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、互いにバランスを取り合って働いています。そして、気圧や気温が低下すると交感神経が優位になって、心拍数が増加し、血管が収縮して血圧が上昇します。めまい、耳の圧迫感、耳鳴りなど、また痛みを感じる神経が興奮して頭痛や肩こり、歯痛などが悪化し、イライラをもたらすようになります。
一方、気圧や気温が上昇すると副交感神経のほうが優位になり、けん怠感や眠気、憂うつ感を覚えます。
気圧や気温の変動が大きい春先は、交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすくなってこうした多様な症状が複雑に現れるのです」
「寒暖差アレルギー」と呼ぶ花粉症のような症状も
また春には、「寒暖差とそれによる冷えが呼吸器に大きな影響を与えます」という正木医師は、次の症状も伝えます。
「春先には、『寒暖差アレルギー』と呼ぶ、花粉症ではないのに鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、涙が止まらないといった症状が続く場合があります。
自律神経が体の機能の安定に対応できるのは、5~6度の気温差までだと言われますが、春先は昼間と夜の気温差がもっと大きいでしょう。そのために自律神経がバランスを崩して、そういった症状が現れるのです。これにも多くの患者さんが悩んでいます」
乾燥と冷えで呼吸器や肌の不調も
さらに、「春の乾燥も呼吸器に不調をもたらす」と正木医師。
「風邪なのかな、口が渇くなあ、からせきがときどき出るなあ、鼻も出るし、手足は冷たいし、肌がガサガサだ、などと感じることがあるでしょう。
実際にはウイルスや細菌による風邪ではなく、空気の乾燥が激しいときは、口内とのどが異様に乾燥して声がかすれる、から咳(せき)が出ることがあります。こういうときは血流も悪化し、頭痛や肩こり、腰痛も起こりやすいのです」
気象病や寒暖差アレルギーに、乾燥と冷えによる不調が合併したような状態でしょうか。
「寒暖差、乾燥、冷えはどれも気象が原因なので、気象病がおおもとの原因と言えます。春になるとコートを脱ぎ、首や足元も薄着になるでしょう。布団も急に薄手に変えていませんか。春先の日の朝と晩の気象は、まだ冬であることが多いのです。春が近づいているからと気を抜かずに、乾燥や冷えの対策をとってください」(正木医師)
春の気象病の特徴は、心身の重さ、だるさ、痛みに加えて、花粉症や風邪のような鼻水やのどの乾燥なども起こるということです。続く後編では、気圧や気温の変化に対応できる心身をつくるための方法についてご紹介します。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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