「月曜日はみんないつもより性格が悪い」
「更衣室のハロゲンヒーターの故障は、私たちにとって命に関わる問題」
「更衣室ではよくコンセントをめぐって揉め事が起こる」
バカリズムさんが銀行に勤める「私」を演じ、銀行で働くOLたちの日常を描いた映画『架空OL日記』(住田崇監督)が2月28日に公開されます。
『架空OL日記』は、バカリズムさんが2006年から約3年間、銀行に勤めるOLになりきり日々のあれこれをこっそりつづっていたブログを書籍化。2017年には連続ドラマとして放送され、淡々としたストーリーの中に仕掛けられたシュールな笑いと毒が多くの人の心を捉え、人気を博しました。
原作・脚本・主演を務めたバカリズムさんと、バカリズムさん演じる「私」の後輩・サエちゃんを演じた佐藤玲(さとう・りょう)さんに話を伺いました。
更衣室の撮影で「帰ってきた」と思った
——映画はドラマ版の2年後という設定でした。久しぶりの現場はいかがでしたか?
バカリズムさん(以下、バカリズム):撮影も3年ぶりだったのですが、最初の何時間かは夏休み明けに会ったクラスメートに会うような感じで照れのようなものがありました。でも、いざ撮影が始まったら勘が戻ったというか、いろいろ思い出していつもの感覚に戻っていました。更衣室の撮影が始まった時に「帰ってきたな」と懐かしい気持ちになりました。
佐藤玲さん(以下、佐藤さん):監督の「用意スタート」の声が掛かったらあの時のままで、本当に2年後のような感じでしたね。
バカリズム:もしかしたら服装がスイッチなのかなと思いました。僕が男性の格好をしているとみんなそわそわした感じなのですが、銀行の制服に着替えるといつも通りの空気になる。それがラインなのかもしれないですね。
台本はカッチリ “特別なレシピ”で作られている『架空OL日記』
——職場の最寄駅から職場までの「私」とマキちゃん(夏帆さん)の会話や更衣室の会話など、OL同士のなんてことない会話がこの作品の魅力の一つですが、台本ってあるんですか?
バカリズム:台本はかっちりあります。みんな台本を守りながらも、それを台本と思わせないように空気をつくりながら演じています。台本は終わっているんだけど、監督がカットをかけなくてそのままの流れでアドリブでしゃべった内容が使われていたこともありますが、基本的には台本がしっかりあってみんなで演技しています。
——なんとなく、台本がないと思っていました。
バカリズム:そう見えるのが理想です。
佐藤:一度、「台本なくていけます?」と言われたことがあったんですが、台本ないのは無理だと思いました(笑)。ただ、ほかのお芝居と違うなと思うのは、作っているはずなのにセリフをしゃべってはいるんだけれど、待っている間とカメラが回っている間の違いがないんですよね。
セリフもすごく多い作品なのですが、口なじみがよくてどんどん覚えやすくなっていく。それは多分、台本もそうだし登場人物のキャラがしっかりしているからだと思います。
バカリズム:撮り方も含めて、このチームでないと『架空OL日記』は無理だと思います。監督の住田さんとは(2017年に日本テレビで放送されたドラマ)『住住』から「どうすれば台本がないような感じで映るんだろう」と話し合いながら作ってきてその進化系が『架空OL日記』なので、この作品を見て手法を真似(まね)してもうまくいかないと思うし、失敗すればいいと思います(笑)。
佐藤:二番煎じは……。
バカリズム:そうね、二番煎じは失敗しちゃうパターンだと思う。“特別なレシピ”というかいろんなバランスがある。監督は住田さんじゃないといけないし、書くのは僕じゃないといけないし……。
佐藤:「できそう」って思われるのはうれしいですね。「できそう」って思わせておいてめちゃくちゃハードルが高い……みたいな。
一番リアルなのは、サエちゃんをめぐる人間関係?
——佐藤さん演じる「サエちゃん」は妹キャラでやや天然。一歩間違えると周囲をイラッとさせる女子だと思うのですが、そうは感じさせない、ギリギリのところで許されている感じがあります。演じるのが難しいキャラだと思うのですが、佐藤さんは演じていていかがでしょうか?
佐藤:私自身、サエちゃんのような役は初めてで、私とは真逆のところにいる子です。だからこそ分かる部分もあって「ここはイラッとするな」とか「ここは許容範囲だな」とか……。なので、その匙(さじ)加減というかバランスはビクビクしながらやっている部分はありますね。イラっとするけど、一応許せるし、かわいいとも思えて後ろからくっついてきても嫌じゃないという感覚は大変ですね。
バカリズム:実は、サエちゃんと周りの女性陣の関係性がこのドラマのすごくリアルなところだと思います。
——というのは?
バカリズム:酒木さん(山田真歩さん)と小峰様(臼田あさ美さん)はサエちゃんとだいぶ年も離れているので「かわいい」で処理できているんですよね。でも、ちょっと上のマキちゃんと「私」は二人よりも許していない部分がある気がします(笑)。
やっぱり二人にとってはサエちゃんは直の後輩だから「先輩たちはかわいいって許してるかもしれないけど、うちらは認めないからな」みたいな、学校の部活の3年2年1年の関係性がすごくきれいにできている。先輩二人がいないときの僕ら二人はサエちゃんに対してちょっと当たりが強いところがある。そこがすごくリアルだなって。
でも、これは台本ではなくて、自然にそうなったんです。臼田さんと山田さんの演技も自然にそうなった。多分、ここで上の先輩たちが厳しいと殺伐としちゃうんですよね。上の二人が優しくて、その間にいる次女の私とマキちゃんは末っ子に厳しい感じ。
人間関係が、それぞれの組み合わせによって空気が変わるのは一番リアルだなと思うし、僕自身も上の先輩には甘えるけれど、一個上の先輩には甘えないでおくというのは経験があったので、自然にその関係性ができた。にじみ出た空気感だと思います。
■映画情報
『架空OL日記』
公開表記:2月28日(金) 全国ロードショー
配給:ポニーキャニオン/読売テレビ
(C)2020『架空OL日記』製作委員会
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
リアルなのはサエちゃんをめぐる人間関係 『架空OL日記』の魅力【バカリズム×佐藤玲】