14歳で女優デビューしてから、さまざまな話題作に出演する水川あさみさん。出演する映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(成島出監督)が2月14日(金)に全国公開されました。
太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチ氏が独自の視点で完成させた戯曲をもとに映画化されたこの作品で、水川さんは主人公・田島の愛人のひとりでクールな内科医・大櫛加代を演じています。
「たくさんの可能性を秘めている作品」という水川さんに、作品の魅力やご自身の仕事との向き合い方について聞きました。前後編にわたってお届けします。
どの役も演じてみたくなる魅力的な作品
——原作の「グッド・バイ」は、これまでも様々な人の手を経て、舞台化やテレビドラマ化されてきました。テレビ版*で水川さんはもうひとりの主人公で田島の嘘の手伝いをするキヌ子を演じていらっしゃいます。同じ原作で異なる人物を演じるのは初めての経験なのでは?
*2010年「BUNGO−日本文学シネマ−」のシリーズ
水川あさみさん(以下、水川):そうですね。私はテレビ版でキヌ子を演じていますが、今作で花屋の青木保子を演じた緒川たまきさんも舞台では大櫛加代を演じています。キヌ子だけでなく、加代も保子もそのほかの女性たちもすごく個性的。どの役も演じてみたくなるような魅力のある作品だなと改めて感じましたね。原作が「未完の遺作」というところにもたくさんの可能性を秘めているなと感じます。
——水川さんの演じた、加代はどのような人物だと思いますか?
水川:とても自信がある人だなという印象があります。田島に妻がいることや、相手の状況も知ったうえで自分は愛人だと理解する頭の良さや冷静さもある。けれど、ただクールなだけではなく田島への情を感じさせるところもあって、ズルさとチャーミングな部分、わかりやすい人間っぽさが見え隠れする面白い人だなと感じましたね。
——その加代を実際に演じてみていかがでしたか?
水川:舞台版よりも大人っぽく見せたいという監督の狙いがあって、目線や仕草を細かく演出していただいたのですが、これが案外難しかったですね。自分でイメージするより、ずっと大人っぽくしないとそう見えないんです。どうしたらイメージ通りになるのか、監督とディスカッションしながら加代という人物を作り上げていきました。
それから、加代が作中で登場するのは2シーンなのですが、その2シーンで人物像を表すという難しさもありました。特に特に「偲ぶ会」のシーンでは、のシーンでは、個性の強いキャラクターたちが集まります。その中で監督が細かく指示を出してくれるので、それをみんなが瞬時に判断しながらお芝居をするというのは面白い空気感で、気持ちのいい撮影でした。
堂々と紹介できない人は”ダメな人“かも
——加代は自立した女性ですが、しっかりしている女性ほど“ダメな人”にハマってしまうというのは案外「あるある」なのかもと思います。その気持ち、水川さんは共感できますか?
水川:どこをとって“ダメ”というのか難しいところですが……。ただ、作品で観ると「田島はあそこもダメなのに、ここもダメなのに……」とは思いますが、それ以上に素敵な部分が加代には見えているんでしょうね。他人が「ダメでしょ」と思っても本人は気になっていないということはあると思います。私の基準で言えば自分の家族や友達、大切な人に堂々と紹介できない人はダメですね。
——待機作『喜劇 愛妻物語』では、売れない脚本家の夫と暮らす妻を演じています。愛人と、しっかり者の恐妻、真逆の女性かと思いますが、作品に携わったことで何か夫婦観に変化はありましたか?
水川:とくにはないですね。作品性が全く異なるので。ですが、「この人と生きていく」と覚悟できる人をお互いに見つけるというか、見つけてもらうというか……夫婦って他人が一番身近な存在になるという、すごく不思議で奇妙な形だけど、だからこそ素敵だと感じられるのかなと思います。
——作品を観る人に向けてメッセージをお願いします。
水川:『グッドバイ』はどうしようもない男と個性豊かなたくさんの登場人物がドタバタ騒がしく動き回る映画です。最初から最後までそのドタバタの波に乗っかるように、エネルギーに溢れた登場人物たちを楽しんでいただきたいです。喜劇なので、面白いシーンややりとりが印象に残ると思います。けれど、それぞれの人生を見て、人生ってしょうがないことの連続だけど、全部ひっくるめていつか愛おしく感じられたらいいな、と。自分の人生もそんなふうに認めて生きていけるといいよねと思える作品になっていると思います。
■映画情報
『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』
2020年2月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
出演:大泉 洋 小池栄子
水川あさみ 橋本 愛 緒川たまき 木村多江/濱田 岳/松重 豊
監督:成島出
原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰 治「グッド・バイ」より)
音楽:安川午朗 脚本:奥寺佐渡子
製作:木下グループ 配給:キノフィルムズ
制作プロダクション:キノフィルムズ 松竹撮影所
©2019「グッドバイ」フィルムパートナーズ
(ヘアメイク:岡野瑞恵、スタイリスト:岡部美穂、取材・文:安次富陽子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
「未完の遺作の可能性を感じた」水川あさみ、映画『グッドバイ』に出演