『うまくやる~コミュニケーションが変わる25のレッスン~』(あさ出版)を書いたクリエイティブディレクターの熊野森人さんが、「コミュニケーションをうまくやる」方法を5回にわたり紹介します。(毎週水曜更新)
一般的に、他の人やモノとは違った、特有の性質、性格などが「個性」と言われています。これには持って生まれた個性もありますが、物心ついた後でも、じぶんで意図的に個性をつくり上げることができるとしたらどうでしょう。そしてその「個性」がコミュニケーションのツールとして役立つとしたら……。
今回は、じぶんの個性を自らつくり出し、コミュニケーションに役立ててしまいましょうというお話です。
オンリーワンとナンバーワンの違いってなに?
今回のテーマは個性についてですが、その前に、みなさんは、ナンバーワンとオンリーワンの違いっておわかりになりますか?
ザックリ言うと、ナンバーワンは一番で、オンリーワンはそれしかないもの、となります。もう少し詳しく言うなら、ナンバーワンはいろんなものを押し並べていちばんを判断するもの。対してオンリーワンは、他と比べて評価するものではなく、受け手側がそのもの自体を特別なものとして認識することだと言えるでしょう。他がどうであれ、これが好きなんだという気持ちがオンリーワンを生みます。これは発信者側の演出ではなく、再度繰り返しますが、受け手側がそれをどう見なすかということです。
つまり、ナンバーワンは目指せても、オンリーワンは目指せません。なぜなら、オンリーワンは発信者側の意思とは関係なく、相手に受け入れてもらわないといけないからです。
例えば、じぶん自身が「個性的だ」と思っていても、実際に他と似たものがごまんとあれば、客観的に見た時にそれはオンリーワンにはなり得ないですよね?
これはお店で考えてみるとわかりやすいでしょう。
ナンバーワンのお店はずっとナンバーワンでいることは不可能です。登ったら下るか消えるかが世の常なので、いずれナンバー2となり、ナンバー3となっていきます。
しかしながら、オンリーワンの店は、お店の売り上げが落ちようが、古くなろうがお客さんの中でオンリーワンだと、ずっとオンリーワンです。
若い頃からずっと憧れる美しい佇まいのオンリーワンのお店、幼少期にはじめて体験したオンリーワンのお店、店主のこだわりが半端ない個性が強すぎるオンリーワンのお店など、オンリーワンにはいろいろあるはずです。
この、相手が愛をもって認識してくれるオンリーワンの価値が僕は大事だと思います。これはお店の「愛される個性」ということなのです。つまり、お店の個性をあなた(相手)が愛しているからオンリーワンになっているわけです。
では、そんな個性に対してじぶんからアクションする手は何もないのでしょうか。持って生まれた身体の特徴や才能は脈々と昔から続く祖先からのギフトとして受け取るべきだと考えていますが、ただ、それ以外の演出としての個性はつくれます。しかも、すごく簡単にです。
個性はつくれる?
答えから言ってしまうと個性は、あなたが決めたルールを繰り返すことでつくれます。
例えば、タモリさんの個性はたくさんありますが、外見上の個性はサングラスです。あのサングラスがなければタモリさんと気づかない人もいるくらいです。
他にも外見で言えば、例えは古いですが、林家ペーパー師匠の外見上の個性は、ピンクとカメラです。令和のペーパー夫婦と呼ばれるりゅうちぇるさんとぺこさんの個性溢れるコーディネートもそうですね。
タモリさんからサングラスを、林家ペーパー師匠からピンクとカメラを取り上げると、外見の個性は消滅してしまいます。彼らは、誰に頼まれたのでもなく、自らサングラスをかけ続け、ピンクの服を着続け、カメラで写真を撮りまくります。長い間、ずっとです。ずっと同じことを繰り返しています。すると、他の人はそれを個性として認識します。
つまり、続けることで個性はつくれるのです。
ただこれは外見だけの話ではありません。音楽のアーティストは、シグネーチャーサウンドというものにこだわる人が多く、一聴してそのアーティストの音だ、とわかる音をつくり出し、繰り返しいろんな曲でその音を多用することにより、個性をつくり出しています。
例えば、マイケルジャクソンの「ポゥッ!」、プリンスの布団を叩いたような鈍いドラムの音、日本でいうと北島三郎さんの楽曲で使われている「カーッ!」という効果音(YouTubeで「ヴィブラスラップ」と検索してみてください。あの音の楽器がひっかかります)など、自ら決めたルールを自ら繰り返して個性としています。
その他には、声や喋り方、香りなんかもコントロールできます。
オレンジの個性を得て自信が持てるようになった学生の話
こんな話もあります。昔、僕がもっていたクラスで、学生が「私には何も個性がないので、この先不安です」と相談しにきてくれました。
なんだかんだいろんなことを話している中で、その子がその日、身につけていたオレンジのアクセサリーが目に入ったので、「好きな色は?」と聞くと、案の定「オレンジ」と答えたので、「では、オレンジをまずあなたの個性にしましょう。明日から毎日オレンジのものを少なくともひとつは身につけるようにしてきてくださいね」とリクエストさせてもらいました。それから何年も経ちますが、うれしいことに今でもずっとオレンジのものを身につけてくれています。
その子が言うには、いつもオレンジを身につけ「オレンジの個性」を得たことで、じぶんがオレンジの人として周りから覚えてもらい、自身でもそれが「個性が何もない」と思い込んでいた不安解消につながり、いろんなことに自信を持てるようになったとのこと。
つまり、オレンジの個性がうまいことコミュニケーションを図るための重要なツールとして役に立ったわけですね。
個性をつくるには、じぶんで決めたルールをじぶんで繰り返すだけなので、飽きたり、年齢を重ねるごとにイメージのズレが生じてきた場合は、やめたり変更すればいいだけの話です。そしてまた新しいルーティンを、周りの人が認めてくれるまで続ける。それが個性のつくり方です。簡単ですよね?
- じぶんで決めたルールを繰り返す コミュニケーションツールとしての“個性”をつくる方法
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じぶんで決めたルールを繰り返す コミュニケーションツールとしての“個性”をつくる方法